
相続登記が義務になり、実家の名義をどうするかを考え始めた人は多いはずです。まず頭に浮かぶのは、専門家に頼むといくらかかるのかという心配でしょう。相続登記は、相続人が自分で申請することもできます。重荷になりがちな戸籍集めを軽くする無料の仕組みもあります。自分で進めるときの道筋を紹介します。
父名義のままの家を前に立ち止まった40代
「司法書士さんにお願いすると、いくらかかるんでしょうか。」父親を見送って半年、実家の名義が父のままだと気づいた40代の会社員は、そこで手が止まりました。兄弟は2人、揉めごとはなく、分け方の話もついています。それでも登記と聞いた途端、自分には無理だという気持ちが先に立ちました。
法務局は、相続による所有権移転登記の申請書様式と記載例を公開しています。法定相続、遺産分割、公正証書遺言、自筆証書遺言といったケース別に分かれており、申請書の作成にあたっての注意事項も添えられています。
出す先は、不動産のある場所の登記所
登記の事務は、不動産の所在地を管轄する法務局や地方法務局、その支局や出張所がつかさどると定められています(不動産登記法6条1項)。実家の登記を出す先は、住んでいる場所ではなく建物や土地のある場所です。
方法は書面申請とオンライン申請の2つです。ただし、相続登記では戸籍全部事項証明書等が電子文書では発行されていないため、現時点ではオンラインだけで完結することはできません。オンライン申請は登記・供託オンライン申請システムから行います。どちらを選んでも、申請書に添える書類は、遺産の分け方が決まっているか、遺言があるかによって変わります。様式がケース別に分かれているのは、そのためです。
戸籍の束は一覧図の写しにまとめられる。写しの交付は無料
手続きで重いのは戸籍集めです。ここで使えるのが法定相続情報証明制度です。相続関係を一覧に表した図とともに戸除籍謄本等の束を登記所に提出すると、その一覧図に認証文を付した写しが無料で交付されます。
この写しが効くのは登記だけではありません。法務局は、使える手続きとして相続登記の申請手続のほか、被相続人名義の預金の払戻し手続、相続税の申告、被相続人の死亡に起因する年金等手続などを挙げています。戸籍の束を何度も出し直す場面が減り、金融機関を回る手間も軽くなります。
自分で進めないほうがよい場合もある
一方で、相続人が極めて多数にのぼる、遺言の有効性や遺産の範囲について相続人のあいだで争いがある、相続が重なって関係者が広がっているといった事情があるときは、書類集めも話し合いも個人の手には余ります。法務省も、相続人が極めて多数にのぼる場合や、遺言の有効性・遺産の範囲等が争われている場合などを、期限を守れないことに正当な理由が認められる例として挙げています。
無理に一人で抱えず、弁護士や司法書士などの専門家に相談する判断も必要です。名義変更だけが目的なのか、争いの解決も含むのかで、頼む相手は変わります。
最初の一歩は、登記事項証明書を取り寄せること
自分で申請できるかどうかは、置かれた状況によって変わります。分け方が決まっていて相続人も限られているなら、様式と記載例をたどって進められます。まずは実家の登記事項証明書を取り寄せ、名義が誰のままかと、相続人が何人になるかを確かめてください。そのうえで、自分で出すか誰かに頼むかを決めれば十分です。


