前回コラムでは、「デジタル遺品とは何か?」そして「デジタル遺品において問題になるものは、主に『お金関係』のものと『趣味趣向』のものの2つである」ことを説明した。
そして『お金関係』のものの中で特に問題となり易い、家族が知らない金融取引と多額の損失発生の事例についても挙げた。
目次
画像・動画データにも注意が必要!
さて、デジタル遺品でトラブルになりうるもので、もう一つの『趣味趣向』に関するデジタルデータには別の注意が必要である。
多くの男性なら思い当たるフシがあるのではないだろうか?
あえて婉曲的にいえば、PCやスマートフォンの中に保存されている、妻や家族には見られたくない画像や動画データのことである。
若い独身男性であれば、彼女はもちろんのこと両親にも見らたくないだろうし、所帯を持っている男性であれば、妻はもちろんのこと子にみられることも憚れる類のデジタルデータのはずだ。
まあ健全な成人男性である限り、軽度な内容のものであれば自分自身の死後家族にみられたとしても「個人的な趣味・嗜好の範囲内の卑猥な画像」ということで許されることだろう。
でも、これがもし過去に交際した異性との写真であったり、不倫相手と一緒に写っている写真や男女間の生々しい表現を含んだメールやLINEのやり取りだったりすると大きな問題となるだろう。
死後に自分自身の名誉を大きく傷つけるだけでなく、家族を苦しめることにもなりかねない。
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誰しも突然亡くなる可能性がる…だから今から準備をしておこう
現在どれだけ健康的に暮らしている人でも、「突然亡くなる可能性」が常に考えておきたい。不慮の交通事故や突然死などは、まったく予期することはできず、年齢や環境、健康状態にかかわらず誰にでも起こり得る。
デジタル技術が普及した現代社会だからこそ、そうした突然の死が、デジタル遺品の問題を引き起こすことになるのだ。
特に、現役バリバリで働いている30歳~50歳代の人が、死への準備がまったく整っていない状態で突然亡くなることになれば、あらたな予期せぬ問題が遺族を困らせることになることを知っておこう。
自分自身の死後、SNSのアカウントを閉鎖することや他人に見られたくないデジタルデータを消去する方法はいくつか考えられる。
今すぐにできる準備と対策を以下に挙げてみたので参考にしてもらいたい。
エンディングノートに記載した内容のみで、遺族がデジタル遺品を容易かつ適切に把握でき、それら処分できる場合もあるだろうが、たいていの人であれば、以下の対策方法をいくつか組み合わせることが有効だと思われる。
保有しているデジタルデータの内容・種類に応じて、今すぐできることから早速準備を始めて対処されることをお勧めする。
1. エンディングノートの活用
エンディングノート(※1)の中に、インターネット上の持ち物リスト(※2)を記載しておき、必要に応じて内容を随時更新する。当然、家族にはエンディングノートの存在と保管場所を知らせておく。
※1 エンディングノートとは…人生の終盤に起こりうる万一の事態に備えて、治療や介護、葬儀などについての自分の希望や、家族への伝言、連絡すべき知人のリストなどを記しておくノートのことを指す。遺言状と異なり、法的な拘束力はないので気楽にいつでも書き直しや追加記入ができる。
※2 インターネット上の持ち物リストには…ブログ・SNS・メール等のアカウントや、ネット取引をしている金融機関の口座と取引用IDとパスワードといった全ての情報を纏めて記載しておく。それらの情報をPC内に保存しているだけだと、万一の際、遺族がID・パスワード等を確認することが難しくなる。
2. 信頼できる友人に依頼
信頼できる友人に、自分の死後にSNSアカウントの削除やデジタル遺品の管理・処分を生前に依頼する。
3. 専門家に依頼
行政書士等の専門家と「死後事務委任契約」を締結して、SNSやメール等のアカウントの削除とともに友人らに死亡を知らせる通知の送信を依頼する。当然費用はかかるが、IT関連のサービスだけなら、数万円程度で済む場合が多い。
4. webサービスを利用
ヤフーのサービス利用者なら「Yahoo!エンディング」、グーグルアカウントの保有者なら「無効化管理ツール」をあらかじめ設定しておけば、自分の死後のアカウントの管理方法について削除を含めて事前に設定ができる。
フェイスブックの利用者が亡くなった場合は、アカウントが「追悼アカウント」に変更され、生前に追悼アカウント管理人を指定することができる。
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5. 無料アプリを利用
「僕が死んだら…」という無料のソフトウェア・ツールを活用する。
このツールを利用することで、不慮の事故などで自分自身が亡くなったとき、PCに保存されている他人に絶対見られたくない情報(画像や動画を含むあらゆるファイル)が、誰にも気づかれないうちに完全削除される。
削除したいフォルダやファイルを指定することで、死後に遺族が自分のPCのデスクトップに作成された「僕が死んだら…」ショートカットアイコンをクリックするだけで、指定したすべてのフォルダとファイルが完全に消去される。
尚、このソフトウェアをインストールして必要な設定をした際、自分自身が誤ってショートカットアイコンをクリックした場合でも、削除されたデジタルデータは復元できない。
また自分の死後、遺族にこのショートカットをクリックさせることを促すため、ショートカットに「家族へ、○○○より」などと必ずクリックして開きたくなるような名前をつけておくことが効果的である。
自分の死後にデジタルデータがどうなるかをイメージする
私たちは誰もが突然亡くなってしまう可能性を背負って生きており、もし自分自信がその悲劇に見舞われたら、身の回りにあるデジタルデータがどうなるかをイメージしてみて欲しい。
そして「家族に伝えなければならない情報」と「家族に見てもらいたくはない情報」をしっかり区別して、それらの管理と処分方法について普段から注意深く考え、今から適切な対応をとっておくことが大切なのである。(執筆者:完山 芳男)