「百舌鳥・古市古墳群」の世界文化遺産への国内推薦決定、おめでとうございます。
これで大阪にも世界遺産が誕生すれば、近畿二府四県すべてが世界遺産を持つことになります。いやいや、めでたいですね。
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目次
地の利は関西にあり
古代から太閤殿下の時代まで、ずっと日本の首都は関西にありました。
なぜ古代人が関西を選んだのか。
その最も大きな理由は、何と言っても交通の便でしょう。
交通といっても、古代に鉄道や高速道路はありません。船です。
滋賀県は琵琶湖に発する淀川と、奈良県から流れる大和川。その河口である大阪府から兵庫県と和歌山県へは、大阪湾でアクセスします。
そしてその大阪湾は、太平洋へも瀬戸内海を通って日本海へも開けているのです!
いや、学校の地理の授業で習ったそのままですが、こんなふうに書くとスゴイとなりませんか?
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古代のテッパン水上交通は今も現役
そう。今回は、古代の交通を思い起こすことからお話を始めたいのです。
水上交通、コレ安いんですよ。
そういえば昔学校で、「ICのような軽くて高価なものは航空機で、原油のような重くて安価なものは船舶で」なんて習ったように思います。船は安い。
そして、ここが盲点になっていないでしょうか。
水上交通って現代でも現役なんですよね。物流だけじゃありません。旅客だって運んでいます。
代表的なものをご紹介しましょう。
フェリーさんふらわあ
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大阪-別府と神戸-大分、大阪-志布志(鹿児島)の3航路。瀬戸内海を通るんですね。
それでは大阪-別府航路の運賃と、新幹線の大阪-大分の運賃を比較してみましょう。
当然、新幹線は早割を使います。
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フェリーにはこれ意外にも多くのお部屋の設定があります。
個室になってしまうと新幹線に軍配が上がりますが、大部屋で良いのならフェリーは新幹線の3分の2以下の運賃になりますね。
所要時間は考え方次第
そんなに安くないって? いや実は、もっと安いプランがあるんですよ。
それを紹介する前に、船旅の最大のデメリットについて話しておかねばなりません。
それは…、船ってすごく遅いんです。
新幹線が新大阪-博多間(大分には新幹線が通っていません)を約2時間半で結ぶのに対して、フェリーは大阪-大分間を結ぶのに12時間近くかかってしまうんですね。残念です。
でも、ここが考えよう。その12時間、眠ってしまえばいいんです。
フェリーにはレストランや大浴場だって付いているんですから。(先ほどの料金には食事代は含まれていませんが、寝具使用料や入浴料は含まれています。)
実際、「フェリーさんふらわあ」は上り下りとも夜19時ごろに出発して、朝7時ごろに到着するプランです。
新幹線には深夜運行がありませんから、移動に日中の半日を費やすことを考えると、フェリーの方が時間に余裕があると考えることだってできますよ。
新幹線片道以下の料金で往復できる超安プラン
それではいよいよ、超安プランを紹介します。
「フェリーさんふらわあ」の目玉商品、その名も「弾丸フェリー」です。往復1万円ポッキリ。新幹線の片道料金よりも安いですね。
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この料金で前述の3航路を往復できちゃいます。
弾丸ですから、船中2泊の0泊3日。それでも12時間近く九州に滞在できるのです。
事前予約しておけばニコニコレンタカーが港で待機(&返却)してくれているので、プラス2,525円でキティラーの聖地、ハーモニーランドまで弾丸巡礼できてしまいますね。
もちろん、それ以外の観光や商用にも使えます。
意外に航路は多い
紹介した航路はほんの一例にすぎません。日本は島国ですから。もうちょっとだけ紹介します。
和歌山-徳島
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南海フェリーが運航しています。片道2,000円で、本州から徳島まで到達できるのです!
所要時間は約2時間ですので、出発地と目的地によっては、兵庫から淡路島を通って香川をめぐる(垂水-鳴門がETC普通車休日で2,520円)よりも早い。
遊園地などとセットの各種割引切符がありますが、南海電鉄片道切符とセットでもお値段据え置き2,000円の「好きっぷ」がおすすめです。
神戸空港-関西国際空港
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「ベイ・シャトル」と呼ばれています。
片道1,850円という運賃もさることながら、約30分という所要時間には驚愕するほかありません。
定期券が売られているということは、通勤利用する方がおられるんでしょうね。
USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)-天保山
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天保山には「海遊館」という水族館や観覧車、美術館などがあります。
大阪湾の2大観光地を結ぶのは「キャプテン・ライン」という船です。
運賃は片道700円と、鉄道料金を考えればやや割高なのは否めません。
ですが所要時間はたった10分ですので、観光地をハシゴしたい人にはもってこいではないでしょうか。
航路は他にもあります
もちろん、他にもたくさん航路はあるのです。
関西で言うと敦賀(福井)-新潟-秋田-苫小牧や舞鶴-小樽(北海道)とかね。
だけど日中を移動に費やしてしまうので、電車や自動車と比べて、所要時間のデメリットを補えるほどのメリットは感じません…。
関西以外だと仙台-苫小牧で、上り下りとも「寝ている間に到着」が実現しているようです。
関東には、東京を夕食時に出発して翌日の昼食後に徳島に到着する、というのがありますね。
さいごに
飛行機に乗るよりは格安なのでしょうが、所要時間と天秤にかけてどちらに傾くかはケースバイケースではないでしょうか。
いかがでしょうか? 「船旅」というと豪華客船を使ったクルーズだけではありません。
けっこう実用的なのもあるので、旅行を計画される際には、検討案の1つにぜひ挙げてください。(執筆者:徳田 仁美)