マネーポストWEBに掲載されていた、「70歳以上の自己破産が急増 2005年は3.05%で2014年は8.63%」という記事によると、高齢者の自己破産が増えているようです。
この記事の中で紹介されている、日弁連が実施した調査(2014年)によると、自己破産者に占める70歳以上の割合は、2005年の3.05%から8.63%に急増しております。
またこの記事の中には、高齢者の自己破産が増えた理由と考えられる、次のような弁護士さんのコメントが紹介されております。
つまり生活費などの赤字を補填するため、消費者金融や銀行のカードローンでお金を借り、その利息が雪だるま式に膨らんでいき、最終的には自己破産せざるを得ない状況になるというわけです。
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目次
自己破産は全体的に増加しており、高齢者だけの問題ではない
このように高齢者の自己破産が増えているだけでなく、自己破産する方は全体的に増えているのです。
例えば最高裁判所が発表しているデータによると、2016年度の自己破産の件数は、前年比で781件増の6万4,637件となりました。
これにより2003年をピークに減り続けていた自己破産の件数は、13年ぶりに増加へ転じたのです。
銀行は企業の資金需要の低下や、日銀のゼロ金利政策による金利低下で、以前のように利ざやが取れなくなっております。
そのため10%以上の高金利が設定できる、利ざやの大きいカードローンに力を入れ始めたことが、自己破産の件数が増加へ転じた理由のひとつだと言われているのです。
実際のところ銀行のカードローンの融資残高は、2016年末で5兆4,377億円となり、2010年3月末比で65%も増加しております。
カードローンを利用する前に、公的な貸付制度の利用を検討する
銀行のカードローンの金利は消費者金融より、低めに設定されている場合が多いのですが、例えば定期預金などの金利と比較すると、どちらもかなりの高金利だと思うのです。
また貸金業者でない銀行は消費者金融と違って、年収の3分の1を超える貸し付けを禁ずる、「総量規制」が適用されません。
ですから銀行のカードローンであっても、使い方を間違えれば危険な状態になるので、生活費などの見直しを実施して、できるかぎり利用しない方が良いと思うのです。
またどうしてもお金を必要とする時は、銀行のカードローンを利用する前に、次のような公的な貸付制度を利用できないかを、検討してみるべきだと思うのです。
老齢年金などを受ける権利を担保にする「年金担保融資」
70歳以上の方であれば、原則65歳から老齢基礎年金や老齢厚生年金などの老齢年金を、受給している場合が多いと思います。
この老齢年金などを受ける権利を担保にして、銀行のカードローンよりも低めの金利で、独立行政法人福祉医療機構からお金を借りることができ、これは「年金担保融資」と呼ばれております。
制度の詳細については、独立行政法人福祉医療機構のウェブサイトの中にある、「年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業」というページを見るとわかります。
これによると「保健・医療、介護・福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需物品の購入」のためでないと、お金は借りられないようになっているので、銀行のカードローンと比較すると、使い道は限定されているのです。
また「一時的に小口の資金が必要な場合」に限られるので、借りられる金額も決して大きくはありません。
ただ融資利率は2.1%(2017年9月1日現在)なので、特に少額しか借りない場合には、銀行のカードローンより利息は低めになると思います。
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無利子や連帯保証人なしでお金が借りられる「生活福祉資金貸付」
その他の公的な貸付制度としては、低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯を対象にして、各都道府県にある社会福祉協議会が実施している、「生活福祉資金貸付」があります。
貸付資金の種類としては、「総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金」の4種類があり、それぞれの貸付資金ごとに、借りたお金の使い道が限定され、また貸付限度額が設けられております。
ただ貸付資金によっては無利子の場合があり、こういった点は銀行のカードローンでは考えられない、メリットではないかと思うのです。
なお上記の年金担保融資については、原則的に連帯保証人が必要ですが、生活福祉資金貸付は連帯保証人がなくても、お金を借りられる場合があります。
消費者金融や銀行のカードローンを第一候補にしない
テレビやウェブサイトを見たり、街中を歩いたりしていると、消費者金融や銀行のカードローンの広告を、頻繁に見かけると思います。
それに対して年金担保融資や生活福祉資金貸付は、誰かがその存在を積極的に教えてくれることは少ないのです。
そのためどうしてもお金が必要になった時に、消費者金融や銀行のカードローンが、第一候補として頭に浮かぶのではないでしょうか?
これを止めてまずは公的な貸付制度を検討してみる、または公的な貸付制度も選択肢に含めて、どこでお金を借りるのかを検討してみることが、自己破産の予防策になると思うのです。
また将来的に借金を返済できる見込みがない時は、お金を借りる前の段階で、生活保護の申請を検討してみることも、自己破産の予防策になると思うのです。(執筆者:木村 公司)