在宅介護を続けていく中で、大きな問題点として「介護疲れ」があります。
特に仕事と介護を両立させながらというのは非常に難易度が高く、常に同じ状況が最期まで続くとは限りません。
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目次
ショートステイを嫌がる本当の理由を聞き出す
まず初めに出てくる理由は他人には介護されたくないという方が多いです。
介護サービスを拒否するという行為は決して珍しいことではありませんし、徐々に馴染みが深くなり、警戒心を解くところから介護サービスは始まります。
ショートステイを強く拒否するケースも多く、中には施設に到着してから「無理やり連れてこられた」と職員に愚痴をいう方もいます。
ショートステイを拒否していることは悪いことではありませんが、ご家族に対して倒れるまで介護してもらいたいと希望しているのでしょうか。
近くに信頼できる身内がいることに依存している可能性もあります。
理由を聞きだすには第三者の立場が有効
ショートステイを嫌がる理由を聞き出すためには身内よりも第三者の介入がおすすめです。
認知症などの症状にもよりますが、会話がきっちりと成立する状態なのであれば、第三者の方(ケアマネージャーや相談員)などに、「なぜショートステイを嫌がるのか」をヒアリングしてもらいましょう。
身内であるあなたには甘えや依存がでてしまい、本音を聞き出すことは難しくなります。本当の理由が分かれば、次のステップに進むことも可能です。
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あなたの在宅介護の着地点を考える
在宅介護は常に同じ状態がずっと続くとは限りません。あなたの考える在宅介護の着地点はどこでしょうか。
少し難しい言い方になってしまいましたが、キーパーソンであるあなた自身が最後まで健全な状態でないと、在宅介護は成立しません。
今の状態が続けば、あなたは本当にボロボロになって倒れてしまうでしょう。
「たら、れば」という言葉がありますが、介護にはなかなか適用が難しいです。
もし夜中だけでもしっかりと眠ってくれたら…もしショートステイを嫌がらずに利用してくれれば…などです。
その前にあなたが体調を崩して入院してしまうなどの事態になることがあれば、ご本人は緊急的に入所施設に入ることになるでしょう。
時には少し強気に説得する時があってもよいかと考えます。あなたが倒れてしまったら在宅介護自体できなくなってしまいます。
ショートステイのお試し利用は上手に
本人がかたくなに拒否しているケースの場合です。
一度ショートステイを利用して、慣れてもらえれば土日をあなたの休養に充てることも可能ですが、ショートステイを利用した上で完全に嫌になってしまえば、あとは入所施設を利用するしかありません。
ケアマネージャーはショートステイの介護スタッフに本人は拒否しているうえでの利用という事を、必ず相談しています。
介護スタッフは、自ら好んで利用する人はいないことを心得ていますので、上手く対応してくれます。
ショートステイの窓口になっている相談員もいます。
初回利用の際には利用者の希望、不安などに寄り添ってご本人が抱えている思いを聞きだしたり、安心して話ができるように対応してくれるものです。
お試しをして再度利用したくないと言われてしまえば、ご家族の介護負担が軽減できないことも十分に承知しています。
ショートステイの介護スタッフも全力で対応してくれます。介護スタッフの中に気の合う人がいるかもしれません。
ショートステイは短い宿泊の利用ですが、すぐに介護スタッフが親しみを持って迎えてくれます。
あまりご自分のことをお話しされない方の場合には事前にご家族から好きな物や趣味、お仕事のことなどを伺っておくこともあります。
仲良しの介護スタッフができると、ショートステイが楽しみになります。話相手だけではなく相談や思いなどのはけ口になることでしょう。
ご家族には言えない感謝の気持ちなど介護職員にこぼされる方も少なくありません。
自分の話を聞いてくれる相手がいると分かれば、次回も利用してもいいかなと思ってもらえるものです。
ショートステイは老人ホームではない
ショートステイも介護施設という事で老人ホームと同じ施設を利用することが多いです。
なんとなく気が引けるという方も多いのですが、介護スタッフもショートステイで泊まられる方に対しては、入居者の方に対する対応と少々違います。
やはりご自宅があり少しの間過ごしていただく、といった思いがありますので、食事のテーブルなどもショートステイの方々と分けている施設がほとんどです。
しかし、入居者の方と仲良くなる方も多いため、その場合には仲良しの方と一緒に食事がとれるような配慮などもしています。
老人ホームは暗いというイメージがあるかもしれませんが、最近の老人ホームは働いている介護スタッフも多趣味で話が面白いことも多いです。
遠慮がちな方の希望を察して声をかける優しい介護スタッフ、入居者の方を飽きさせないように考え入居者の方が好きそうな映画や落語などを持参して楽しんでいただくといった場面も多くみられています。
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介護者の緊急事態には、早い時期に強引な行動も必要
介護者が疲労困憊している場合にはケアマネージャーと連携を取り、すぐに半ば強引にでも、ショートステイ(1日~2日)を体験してもらうことをおすすめします。
介護者の負担増大による緊急対応は決して珍しいケースではありません。
そしてあなた自身が一人で落ち着ける時間を作り、今後の在宅介護について考えてみましょう。
あなたの在宅介護に対する着地点が決まれば、自信を持つことにもつながります。
介護者が具合が悪いので、今だけ少しショートステイの部屋で過ごしてほしいことを訴えればとりあえずは移動してくれるでしょう。
ご本人が納得した上で、とりあえず移動してもらえるだけで大成功なのです。
もし「一人でも大丈夫だから」といわれたら、それでは心配で具合がもっと悪化すると伝えましょう。
自分が少し我慢すれば大切な家族が救われると分かれば、しぶしぶでも重い腰を浮かしてくれるものです。
ショートステイの施設まで到着すれば、ご心配は要りません。介護スタッフがご本人の気持ちを聞いたり、気持ちに寄り添って話相手にもなります。
初回の場合、利用者の不安をお解消していただくためにまずは、介護スタッフがしばらく付き添います。
窓口となっている相談員もなるべく顔を出して声を掛けに行きますので、ご家族は気負いすることなく安心して体を休めていただきたいと思います。
介護には正解がない
在宅介護を最期まで続けていきたいと考えた時、誰しもが自分の力で介護を続けることが正解だと考えてしまいます。
しかし、在宅介護は人それぞれ生活背景が異なっており、一概に正解というものも存在しません。
介護サービスを併用しながら在宅介護を続けるケースもあれば、入所施設で頻繁に面会しながら顔を合わせる方も大勢います。
一番つらいことは、在宅で介護者が共倒れしてしまうことです。
私の考える正解は、常に介護者、被介護者ともにベストの状態であることです。その状態から逸れていくにつれ、どちらかに必ず負担がかかってきます。
どのような環境になってもお互いを思いやる気持ち、行動は必ず相手にも伝わります。
仮にショートステイを利用することに慣れてくれば、またあなたの環境も変わるかもしれません。
逆にショートステイを利用できずに入所施設に入ることになっても、仕事を終えた後や休日の日に頻繁に面会に訪れるなど、違う角度から援助することもできるでしょう。
あなた自身をまずは健全な状態に戻すことで、判断力にも気持ちにも余裕が生まれます。
まとめ
在宅で介護するということは並大抵のことではありません。それを現在まで続けてきたあなたは意思の強い方です。
今までの自分を認めてあげた上で、これからのよりよい介護につなげていただくことを切に願います。(執筆者:佐々木 政子)