昨年3月に発表された公示地価によると、9年ぶりに全国の住宅地の地価が上昇に転じたことが話題となりました。
また、7月には路線価が発表され、東京・銀座5丁目の鳩居堂前の路線価は1坪当たり1億3,300万円。
バブル期直後に付けたそれまでの最高値である1億2,000万円を上回ったことでも、大きく取り上げられました。
不動産市場の活況は東京オリンピックまで続くであろう。東京オリンピックの開幕まで3年を切った今、そのような楽観的な考え方が支配的のように思えます。果たして本当でしょうか。
目次
オフィス不足とマンション価格高騰の実態
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空室率4%程度で貸し手優位と言われる賃貸オフィス市場。そのオフィスの空室率が、都心部では3%程度にまで下がってきていると言われています。
新しく入居するオフィスを探しても、すぐには見つけることができない。空室率3%というのは、そのような状況を表しています。
しかし、本当にオフィス不足に陥っているのでしょうか。
現在都心部では、巨大なオフィスビルの建設ラッシュが続いています。これらのビルの多くは、単に老朽化したビルを建て替えているにすぎません。
老朽化して建替えが必要になったビルに入居していたテナントは、オフィスの移転を強いられることになります。
その結果、オフィスビルの空室率が改善しているに過ぎないと考えるのが、むしろ自然でしょう。
2018年後半から2019年前半には、現在工事中のビルが続々と竣工し始めます。そして競争が激しくなると、賃料の値下げや空室率が上昇することが予想されます。
マンション価格について
マンション価格についても考えてみましょう。
2017年に首都圏(1都3県)で供給された新築マンションの平均価格は5,908万円。5年前から約30%も値上がりしています。
中古物件でも同様の傾向が見られ、5年前と比べて29%の値上がりとなっています。
しかし、どの不動産もおしなべて値上がりしているのかというと、そうでもないようです。
一部の人気エリアで供給されるマンション相場の高騰が、首都圏全体でのマンション価格の上昇に大きく寄与していると考えられます。
都心部でよりマンション価格の上昇率が高いことが、そのことを裏付けています。利便性の高いエリアに人が集まった結果、そのエリアの不動産の価値が高められているわけです。
そうなると、相対的に価格の高騰が緩やかなエリアも存在することになります。
不動産にまだ値上がりの余地はあるのか?
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日本のGDP(国内総生産)と比べた、株式、債券、土地の総残高を見てみましょう。
株式はGDPの約1.3倍、債権は約1.6倍であるのに対し、土地は約0.9倍にとどまっています。
バブル期に株式が1.5倍、債権が0.4倍、土地が1.6倍だったことを考えると、土地につぎ込まれているマネーは、まだまだ少ないと捉えることができます。
一方、資金流入が続く株式市場と債券市場はバブルに近づきつつあるのかもしれません。
このデータをもとに考えると、土地(不動産)の値上がりは今後も続くように思えます。
とはいえ、東京オリンピックを前に利益を確定すべく不動産を売却する投資家も多いでしょう。
また、オリンピック後には2022年問題も控えています。これらのリスクも考慮しておく必要があります。(執筆者:内田陽一)
2022年問題については、以下のコラムをご参照ください。
【2022年問題】不動産購入は2022年以降がチャンス? 大量の都市農地が市場に放出され、収益物件の価格が下がるのか