目次
はじめに
FPとして「老後のお金について」をお話させていただいている中で老後の暮らし方やホームへの入居費用について等のご相談が多いです。
ご両親が健康なうちでしたらプランニングがスムーズに行えるのですが、急なご病気やアクシデント(事故など)の場合には資金準備や手続きに苦労される方も多くいらっしゃいます。
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株の売却ができない!?
介護付きホームへの入居に関するご相談の中で入居費用にあてる資産を所有していたにも関わらずお手続きがスムーズに行えなかった事例をご紹介します。
ご主人(80歳)が認知症になってしまったため、介護付きホームへの入居を検討。
ご主人が所有する株を売却し費用にあてたい。
証券会社に株の売却を申し出たところ主人でないと手続きができないと言われてしまったそうです。
詐欺などから資産を守るため、また個人情報保護のために株などの金融商品は契約者ご本人でないと手続きができないようになっています。
では、上記の方の場合はどのようにすれば株の売却手続きができるのでしょうか?
この場合、成年後見人制度を利用して認知症のご主人に代わって財産を管理できます。
【成年後見制度(せいねんこうけんせいど)】
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。
また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。
このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。(法務省HPより)
手続きの流れは以下となります。
2) 医師の診断により、成年後見人の必要性を判断
3) 成年後見人として証券会社で株の売却手続きを行う
ご家族が家庭裁判所に申立てをするだけでは成年後見人にはなれません。
ご主人の判断能力について医師が診断し、後見人が必要と判断されてからとなりますので、2~3か月程の時間を要することになります。
その間の介護費用やケアをする家族の時間や労力などを考えると何か対策しておけば良かった…と思う方も少なくないはずです。
事前に備えることはできないのでしょうか?
事前にできる対策
大きな病気になってから、認知症や介護状態になってからでは対策が遅れてしまいます。
個人差はありますが、いわゆる大きな病気(三大疾病)は男女ともに60歳代から増え始め70歳代・80歳代がピークとなります。
病気のリスクから考えますと、できれば60歳代のうちに事前にできる対策を取られておくと安心かと思います。
事前にできること
今回の事例の場合、本人に代わって株の手続きができる「代理人登録」を事前に実施しておくことがあげられます。
代理人登録をしておくことで、いざという時に株の管理や売却等を行うことができます。
証券会社や取り扱い機関により手続き方法等が異なりますので事前に情報収集を行うこともお勧めしています。
【例】 大和証券の「ダイワのファミリーサポートサービス」
ご高齢のお客様が、ご家族の方に資産管理や資産運用を任せたいという場合や、ご両親の資産管理や資産運用が心配という場合に、ご子息等が「口座管理人」となり、ご高齢のお客様(口座名義人)に代わって、残高・取引内容の確認、注文の発注、各種書類の代筆等を行うことができるサービスです。(参考元:大和証券「ダイワのファミリーサポートサービス」)
今回は株についての事例をお伝えしてきましたが、不動産や保険などその他の資産においても同様のことが言えます。
所有する資産の確認や、手続き方法など、事前に把握しておくことで急な場合に備えることができると思います。
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おわりに
株の投資は資産の運用だけでなく、社会とつながる楽しみの1つでもあります。
代理人登録の話をすると嫌がる方も多いのが事実です。
しかし、事前の対策をしないことでのリスクもあります。
最近、ニュースや新聞でも話題に出ておりますので「心配になって」とご相談してみるのも良いでしょう。
まずはご家族の大切な資産を守る、必要な時に使えるようにしておくための策としてご参考頂ければ幸いです。(執筆者:藤井 亜也)