不動産業界が繁忙期を迎えるこの季節に、今住んでいる部屋に引っ越してきた人も多いのではないでしょうか。
となると、この時期に更新を迎える人も多いはず。
新しい環境で心機一転、引越しをするか、お気に入りの部屋に住み続けるか、更新が迫ってくると悩む人も多いことでしょう。
それはなぜか? 多くの場合、日本の賃貸借契約には「更新料」というものが謳われています。
「更新料を払うくらいなら引っ越してしまおうか」。そのような心理が働くと考えられます。
今回は、この更新料について考えてみることにしましょう。
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更新料とは?
一般的な賃貸借契約には、2年という期間の定めがあります。
そして、2年が経過するとその効力が失われるため、契約期間満了のタイミングで契約を更新するかどうかを決めなければなりません。
今住んでいる部屋に引き続き住み続けたいのであれば、賃貸人と賃借人で契約を更新する必要があります。
この際に発生する費用、それが更新料ということになります。
一般的には新賃料の1か月分というのが、更新料の相場ではないでしょうか。
賃借人が支払った更新料は、不動産会社と大家で折半というケースもあれば、「更新事務手数料」という名目で全額を不動産会社が受け取るケースもあり、まちまちです。
実は、この更新料に関する法的な規定はありません。
昔から続く不動産業界の慣習に過ぎないということ知って驚く人も多いかもしれません。
また更新料の慣習の有無は、地域によってもさまざまです。
西日本では更新料というルールに馴染がない地域も多いと言われています。
法的拘束力がないのであれば、更新料の支払い義務はないのでしょうか?
次の章で検討してみましょう。
契約内容を確認
2011年7月に、最高裁判所は次のような判決を下しました。
「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法第10条により無効ということはできないとされる」
つまり、賃貸借契約書に記載されている内容によって、更新料の支払い義務の有無が変わってくるということになります。
通常は、更新に関する事項に「更新料として、新賃料の1か月を支払うものとする」などの記載があります。
その場合は、更新料を支払わなければなりません。
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とはいえ、賃貸借契約書に記載があったとしても、あまりに高額な更新料は認められない(無効)ということになります。
他方、賃貸借契約書に更新料に関する記載がなければ、支払い義務はないと考えるのが一般的でしょう。
礼金や権利金がそうであったように、更新料を求められることも今後少なくなっていくことでしょう。
その過渡期であると考えられる今、賃貸借契約締結に先立って更新料に関する交渉をしてみることを検討してみてはいかがでしょう。
契約書に更新料に関する記載がある場合は、その内容を削除してもらえないか確認だけでもしてみることをおすすめします。(執筆者:内田 陽一)