日頃からホームヘルパーやデイサービスなどを利用していると、時間がたつにつれて介護スタッフと親しくなることがありますよね。
と暑い時にはジュースなどを出すこともあるかもしれません。
特に親しい間柄になってしまうと、品物を渡したり、現金を渡してしまう可能性もあります。
私も介護スタッフとして勤務していた頃、とある家庭の人から現金を渡されたこともありましたが、丁重にお断りした経験があります。

今回は、親しい介護スタッフにお金や物を渡すことについて、介護スタッフからの視点でお伝えしていきます。
目次
遠い身内より、近くの他人?
「いつも良くしてくれるから…」と言われても、介護スタッフもボランティアで仕事をしているわけではありません。
普段から一人で過ごすことの多い利用者さんの場合、介護スタッフと仲良くなれることがとてもうれしいという心理が働くようです。
しかし、介護スタッフも仕事で介助しているわけですから、品物や現金を受け取ることはできません。
「品物や現金を受け取ってはいけない」というのが介護スタッフからの視点なのです。
いくら善意を持ってそうされてもお断りして、「気持ちだけ」受け取る姿勢でいます。
特別扱いを受けたいというケースもある
品物や現金を渡す家族や利用者さんの中には「自分だけ特別扱いをしてほしい」という考えの人もいます。
一般的に介護施設や事業所では「利用者さんや家族からの現金は当然のこと、品物も絶対に受け取ってはいけない」という徹底したルールがあります。
飴玉やジュースなどの食べ物も絶対に受け取ってはいけないという内容です。
きっかけになったのは、こんな事例でした。
介護業界のルールとなった事例
Aさん(女性、80歳)は、デイサービスを利用している方でしたが、来所の度に持っているお菓子を他の利用者さんに配ったり、送迎の際に介護スタッフにジュースを渡すなどの行為がみられました。
介護スタッフもその時「ジュースぐらいならいいか」という気持ちで受け取っていたそうです。
その後、Aさんは近所に「私は品物を渡さないとちゃんと介護してもらえない」と言いふらしたり、遠方の家族にも同様に愚痴を伝えていたとのことでした。
それを聞いた家族からはクレームが入り、事情を説明しても不信感が残る状態となり、最終的にAさんはデイサービスの利用を終了してしまいました。
このような事態を防ぐため、徹底した「金品を受け取ってはいけない」というルールが介護の業界では広まるようになりました。

善意のつもりでも…介護スタッフにとっては酷な場合も
金品の受け渡しは基本的にNGですが、お菓子やジュースなら…と思う人もいるかもしれません。
しかし、いったん受け取ってしまうとその後はどのように言われてしまうかもわかりませんし、社内に戻ったスタッフは厳重注意を受ける可能性があるということになります。
「いつもお世話になっている…」という気持ちはとてもうれしいものですが、金品や食べ物など、形に拘ることは必要ないでしょう。
まとめ
品物よりも気持ちを大事にしたいというが介護スタッフの本音です。
感謝の気持ちが芽生えたとき、お金や品物として相手に渡すことは大切なことかもしれませんが、介護の中では気持ちそのものが一番大切であると考えます。
大切な介護費用の一部を介護スタッフや事業所に使う必要はありません。
身近で介護のお世話を受けている人がいましたら、ぜひこの内容を伝えていただきたいと思います。
「いつもありがとう」という言葉こそが、介護スタッフにとって一番の励みであり、うれしくもあるのです。(執筆者:佐々木 政子)