今は元気に働いているあなた、今後もこの状況が続くと思っていますか?
勤めている会社がどうなるのかということの他に、あなた自身の生活環境の変化でこれからの生活が一変してしまうかもしれません。
その大きな変化のひとつとして考えられるのが介護です。
少子高齢化の現代、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)になります。
つまり、その子供達が親の介護をする可能性が高いのです。
今回は、父母の介護をすることになった場合、その後の生活がどのようになっていくのかについて統計情報をもとにご紹介していきます。
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目次
自己破産者の推移
まずは、バブル崩壊前から現在に至るまでの自己破産者の推移についてご紹介します。
破産件数は増加傾向
裁判所の司法統計によれば、1991年のバブル崩壊前の自己破産者は年間約1万1千件程度でした。
しかし、バブル崩壊後から2003年までほぼ一直線に増加し続け、ピーク時の2003年には約25万2千件になりました。
2003年から2015年までは破産件数は減少し続けましたが、2016年には前年比0.32%とわずかながらですが増加に転じています。
2017年は、前年比6.09%とさらに増加が続いています。
銀行のカードローンが自己破産の原因のひとつ
2010年に貸金業法が改正されグレーゾーン金利の撤廃や総量規制が導入されました。
しかし、貸金業法は消費者金融やクレジット会社に関わるもので銀行には適用されません。
銀行は銀行法の適用を受けるからです。つまり、銀行は総量規制の対象とはならないわけです。
2016年から破産者数が増加に転じていますが、その原因のひとつとが銀行のカードローンと考えられます。
銀行が自らの利益を確保するため、消費者向けに消費者金融と同程度の高金利でカードローンの取扱いに力を入れ始めた時期と重なります。
では、なぜ自己破産者はカードローンを借りる必要があるのでしょうか?
その要因のひとつとして考えられるのが、離職による年収の低下です。
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介護を理由とした離職の状況
離職理由については、会社の倒産や自己の都合などさまざまありますが、介護が理由による離職も少なくありません。
総務省の平成24年「就業構造基本調査」をもとにご紹介していきます。
介護をしているのは55歳から59歳が最多
働きながら介護をしている人は実際どのぐらいいるのでしょうか。
就業者で介護をしている人は全体で239万9千人、そのうち女性は137万2千人で男性は102万7千人となっています。
全雇用者数に占める割合では、女性が5.5%、男性が3.3%になります。
また、年齢別では男女ともに最も多いのが「55~59歳」となっています。
介護による離職の8割が女性
それでは、介護による離職の状況についてはどうなっているでしょうか。
家族の介護や看護を理由とした転職、離職者数は2011年10月から2012年9月の 1年間で10万1,100人でした。
そのうち女性は8万1,200人で全体の80.3%になります。
各年ごとにやや差はあるもの、おおむね8~10万人が介護・看護を理由に退職し、そのうち8割が女性ということになります。
「仕事と介護の両立が難しい」が離職理由の第1位
介護のため離職した人はどんな理由で離職したのでしょう。
【2位】 自分の心身の健康状態が悪化したため(25.3%、32.8%)
【3位】 自身の希望として「手助・介護」に専念したかったため(20.2%、22.8%)
【4位】 施設へ入所できず「手助・介護」の負担が増えたため(16.6%、8.5%)
【5位】 自分自身で「手助・介護」するとサービスなどの利用料を軽減できるため(11.0%、8.1%)
*( )内の割合は左が男性、右が女性
仕事と介護の両立が難しいということが大きな理由です。
つまり、介護している間は仕事ができないということになります。
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介護者の就労状況
介護を理由とした離職が少なくないことはご紹介しました。
それでは、離職せずに介護している人の就労状況はどうなっているのでしょう。
就労者と離職前は正社員だった介護者となる年代(40歳代から50歳代)の男女について、平成24年度に厚生労働省が委託調査を行っています。
その結果から介護者の就労状況を見ていきましょう。
なお、ここでいう介護とは、排泄や入浴等の「身体介助」、施設や遠距離での「介護」に加え、
食事のしたくや掃除
洗濯などの家事
ちょっとした買い物やゴミ出し
通院の送迎や外出の手助け
入退院の手続きや金銭の管理などの「手助け」
も含みます。
介護離職が多いのは女性
介護を担っている男女の割合は、男性14.4%、女性10.7%と男性が多いですが、介護が必要な親がいるかどうかの割合は、男性が55.6%、女性が64.2%と女性が多くなっています。
先ほど、介護・看護を理由に退職した人のうち8割が女性であることをご紹介しましたが、こちらの結果を見ても、介護が必要な親がいる場合は女性の方が介護離職していることがわかります。
配偶者のいない男性は介護する割合が高い
配偶者の有無による介護の割合に、男性と女性とでは違いがあるのでしょうか。
配偶者無し:男性20.6%、女性9.3%
女性の場合は、配偶者の有無による介護の割合にはあまり違いがありません。
しかし、男性の場合は、配偶者がいない場合に介護する割合が高くなっています。
就業形態で男女の違いはない
就業形態(正規または非正規)での介護の割合に違いはあるのでしょうか。
女性:正規12.3%、非正規:10.3%、非就労:12.0%
男性・女性ともに就業形態による違いはないようです。
介護される人の状況
これまで、介護する人の就労状況についてご紹介してきました。
それでは、介護される人はどのような人なのでしょうか。
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介護しているのは自分の母が6割
介護する人はいったい誰を介護しているのでしょう。
介護しているのは、男女ともに自分の「母」が6割以上であり、次いで自分の「父」が3割から4割となっています。
つまり、自分の父母を介護する割合が高く、配偶者の父母を介護している割合は低いという結果です。
介護される人は75歳以上が8割
介護を必要とする父母の年齢分布をみると、75歳以上の割合が「父」で83%、「母」で79.9%と8割前後を占めます。
介護される人は同居または30分以内の近所に居住
介護する人と介護される人との居住状況についてはどうなっているでしょう。
「介護を必要とする父母」と同居しているのは34.0%、そして「介護している父母」と同居しているのは48.7%となっています。
このことから、父母と同居している場合に自身で介護する割合が高くなるか、あるいは、別居していた父母と介護のために同居しているということがわかります。
また、同居していない父母について、介護する人の自宅からの距離をみると片道30分未満の割合が7割を超えています。
離職と要介護認定度は関係しない
介護する人の離職と介護される人の要介護度は何か関係があるのでしょうか。
就労者が介護している父母の要介護認定状況と、離職者(介護を機に離職した人)が離職前に介護していた父母の要介護認定状況とを比較してみます。
すると、離職者は「申請していない・非該当」といった要介護度の低い父母の割合が高い一方で、要介護3以上の要介護度の高い父母の割合もやや高い状況にあります。
このことから、離職者が介護している父母が必ずしも要介護度が高いという訳ではないことがわかります。
非正規の職員・従業員割合の推移
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平成25年の総務省統計局の就業構造基本調査の結果によれば、「雇用者(役員を除く)」に占める「非正規の職員・従業員」の割合は38.2%で、男性は22.1%、女性は57.5%となっており男女共に上昇が続いています。
つまり正規から非正規への異動割合が上昇しているのです。
就業者では、55歳から59歳が介護をしている人が多いことはご紹介しましたが、実際に介護をしている人では約5割が60歳以上となっています。
介護をしている人の有業率(仕事をしている割合)は、男女共に介護をしていない人に比べ低いという結果が出ています。
なお、「非正規の職員・従業員」の割合は全ての都道府県で上昇しています。
就業形態と収入
就業状況と年収の関係を見てみましょう。
総務省「就業構造基本調査」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、国税庁「民間給与実態統計調査」から正規・非正規に関する統計データを集計したのでご紹介します。
就業形態は正規が6割、非正規が4割
まずは、就業形態(正規・非正規)について見てみましょう。
非正規:男性22.2%、女性57.5%、全体38.1%
正規が6割、非正規が4割となっています。
特に女性の非正規が多いことがわかります。
就業状況による年収
就業形態での年収について見てみます。
【非正規】 男性222.0万円、女性147.5万円
差 男性173万円、女性74.5万円
非正規では、正規の約4割しか年収がないことがわかります。
つまり、正規から離職して非正規となった場合、年収は約6割ダウンすることになるわけです。
今から今後の人生設計をしておきましょう
これまで、
・ 自己破産の大きな理由のひとつに離職による年収の低下があること
・ 介護による離職が少なくないこと
・ 介護離職者の8割が女性であること
・ 就業者で介護をする人の年代は55歳から59歳が多いこと
・ 離職と要介護認定度は関係しないこと
・ 非正規雇用では正規雇用に比べて4割の年収しか得られないこと
などをご紹介してきました。
介護は、事故や災害とは違いあらかじめ想定できるものです。
また、要介護度が低いからといって介護する必要がないということでもありません。
年齢を重ねてからの再就職は思い通りにならないことも多いです。
介護することになった時に、「あの時こうしておけばよかった」と後悔することのないよう、元気な今のうちから、父母を介護することになった場合を想定した人生設計をしておいてください。(執筆者:遠藤氏)