先日、9月15日はちょうど10年前に起きた、いわゆる「リーマンショック」の日でした。
「リーマンショック」とは、言わずもがな、2008年9月15日アメリカの証券会社「リーマン・ブラザーズ」の経営破綻に端を発し、株価などマーケットが大暴落、その後の世界経済大混乱のことです。
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当初は「蚊に刺された程度」などと、日本の政治家が言っていたのを思い出しますが、とんでもない話で、その後に続く世界経済の連鎖的危機状況…。
NYダウ平均株価は約1万3,000ドルから約7,000ドルまで50%近く暴落したように、日経平均株価も約1万3,000円から約7,000円まで暴落しました。
為替相場は1ドル約105円から、90円、そして76円台と歴史的な円高になったのです。
筆者の記憶では、過去の一日の日本の株価急落率ベスト10のうち、2008年10月の相場が4つも入っていることからも、いかに厳しい急落劇だったかが伺えます。
このリーマンショックで危機に陥った金融システムに対し、アメリカ政府は緊急で70兆円もの公的資金を投入し、救済を図りました。
それでも未だに尾を引いていると言われる「リーマンショック」とはいったい何だったのでしょうか?
目次
リーマン・ブラザーズ
リーマン・ブラザーズは、アメリカ・ニューヨークに拠点を構えていた証券会社です。
当時アメリカ内で4位のシェアを持ち、名門とも呼ばれた証券会社「リーマン・ブラザーズ」でしたが、「サブプライム問題」などをきっかけに破綻への道を余儀なくされ、大規模な倒産に至りました。
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ちなみに、倒産するまでリーマン・ブラザーズはAAAの格付けを受けており、それがいきなり倒産ですから、まさに「ショッキング」な出来事だったということです。
では、その大規模倒産のきっかけである「サブプライム問題」についてご説明しましょう。
サブプライム問題とは?
当時アメリカは住宅バブルに沸いており、サブ層(下の層という意味)、つまり破産歴のある人や低所得者など信用度の低い人でも住宅ローンを組める「サブプライムローン」が組まれていました。
通常であれば、返済能力の低い人はローンを組めませんが、当該ローンは住宅を担保として高い金利を支払うことで、このような信用度の低い方でもローンを組むことが出来たというわけです。
そして、なんと言っても当初は住宅価格が上昇を続けていましたので、購入時よりも高い価格で住宅を売却し、その代金で「ローンも返済できる」ということがまかり通っていたわけです。
おそらく当時は「その循環がずっと続く」というムードが蔓延していたのではないでしょうか。
住宅バブル崩壊!
そんなムードのところに、バブルを懸念したFRBが徐々に金利を引き上げたものですから、少しずつかげりを見せ始めていた住宅バブルも、ついに2007年に大きく下落します。
一度大きく下落すると、住宅を持っている人は少しでも売却しようとして住宅の価格を下げ、ますます住宅の価格は下がります。
売却しても投資した分の資金を回収できないという負のスパイラルに陥り、住宅バブルが「崩壊」してしまったわけです。
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先述した「サブプライムローン」は、住宅価格の上昇を前提にうまく回っていた(回ると思われていた)ローンでした。
しかし、住宅価格が下落したことで、「サブプライムローン」を組んで住宅を購入した負債者は
という事態に陥りました。
もともと「リーマン・ブラザース」をはじめ、ローン貸主の証券会社は「サブプライムローン」の債権が焦げ付いた場合、自身が債券未回収のリスクを負うことを避けるため、その債券を「証券」として商品化していました。
その「サブプライム証券」を投資家や銀行・ヘッジファンドへ売却することで、「サブプライムローン」の負債者が破綻した際のリスクを減らしていました。
しかし、「サブプライムローン」の不良債権が急激に増加したことで、そんなリスク転嫁もむなしく、「サブプライムローン」を多く取り扱っていた「リーマン・ブラザーズ」は、倒産を余儀なくされます。
負の連鎖
「サブプライム証券」は、当初は高い利子を受け取ることが出来、格付け会社からも高い評価を与えられた商品でした。
そのため、世界中の個人投資家や銀行・ヘッジファンドが飛びつくように巨額投資を行っていましたが、結果として、この「サブプライム証券」を買っていた人たちも、巨額の損失を被り、負の連鎖が起こりました。
そして先述した通り、10月に入ると世界中のマーケットが大混乱、暴落。
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その後の世界経済にも多大なる影響を与え、急激な円高と世界的な需要縮小の影響で、日本の輸出製造業も壊滅的な打撃を受け、急激に経営が悪化しました。
結果として、販売減に対応するため、工場の生産ラインを停止する必要に迫られ、多くの雇用が相次いで打ち切られたのです。
リーマンショックから10年
このようなことが次々と起こった「リーマンショック」。
あれから10年…
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今、日本の株価は「27年ぶりの高値!」と声高に報じられていますが、果たして、この10年間は我々に何を示唆しているのでしょうか?
その答えはいずれ歴史が教えてくれるものと思いますが、少なくてもリーマンショックが教えてくれたものは、
「慢心している時こそ要注意!」
だと思っています。
怯え恐れることとは一線を引いた「危機感」を持つことは、何年経っても忘れないようにしたいものです。(執筆者:阿部 重利)