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換金手数料とは違うの? 「信託財産留保額」とは
投資信託を換金する際に、「信託財産留保額」が発生する場合があります。
例えば、投資信託の目論見書に以下のように記載されているとします。
信託財産留保額とは「換金申込受付日の翌々営業日の基準価額に1%の率を乗じた額」のことです。
この場合、投資信託の換金時に1%の信託財産留保額が発生するので、100万円分の投資信託を換金すると1万円の信託財産留保額が差し引かれる計算となります。
信託財産留保額は、換金時に徴収されるという点で、換金手数料と同じだと感じ、信託財産留保額が無い投資信託の方が投資家にとって有利だと思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは言えません。
信託財産留保額は、運用側、投資家の双方にメリットがある仕組みでもあります。

手数料とは性質が異なる
信託財産留保額は、投資家の間での公平を保つために、換金を申し込んだ投資家から一種のペナルティ料として差し引くものです。
信託財産留保額として徴収された金額は、販売窓口の金融機関や運用会社が受け取るものではなく、その投資信託の信託財産として残ります。
つまり、引き続き投資信託を保有し続ける他の投資家のために、少し残していくお金なのです。
投資家からみたメリット
投資家の側から考えてみても、信託財産留保額はメリットがあります。
信託財産留保額として残された金額は、残った投資家のものとなるので、引き続きその投資信託を保有し続ける投資家の持ち分が増えることになります。
ですから、長期に投資信託を保有し続ける投資家にとっては、信託財産留保額は有利な制度といえるでしょう。
けれども、短期間で投資信託の売買を繰り返す投資家にとっては、信託財産留保額が換金の都度差し引かれるので不利となるかもしれません。
運用側から見たメリット

また、信託財産を運用する側から見てもメリットがあります。
信託財産留保額には、投資信託の短期での解約を防止し、運用を安定させる効果があります。
投資信託の換金があると、運用側は投資資産(株式、債券など)を売却などして、資金を用意する必要があります。
頻繁に換金されると、投資資産を売却するための手数料もかかりますし、運用パフォーマンスに悪影響を与える可能性もあります。
信託財産留保額は、短期間しか保有しない投資家からペナルティ料を徴収し、それは長期間保有する投資家に分けられます。
こうなると、投資家は長期間保有するほうが有利であるため、投資信託の短期での解約が抑制され、安定した運用が可能となります。
一見すると手数料に見える信託財産留保金ですが、投資家にとってメリットも多い仕組みということができるでしょう。(執筆者:潮見 孝幸)