4月19日付日本経済新聞の記事に、今年の日本株投資に影響するであろう興味深い内容が掲載されていました。
という記事です。
確定給付年金などの企業年金は、株式相場に年間2兆円規模の投資資金を供給し、日銀に次ぐ日本株の買い手となっています。
企業年金基金は、従業員による掛金の運用を大手信託銀行経由で運用しており、その年金マネーが日本株への投資を減らすことの影響はとても大きいです。
大きな相場転換を現すこの変化を、個人投資家はどう捉えたら良いのでしょうか?
景気停滞時の対処法も、合わせてご紹介します。
目次
年金マネーが考える資産構成(ポートフォリオ)とは?

企業年金の運用資産は、ざっと60兆円規模です。
主な運用方針はハイリスク・ハイリターンではなく、絶対収益(マイナスにならない)を追求するため分散投資に徹することが知られています。
そのため年金マネーの運用は、あらかじめ分散する資産構成を決めています。
今回の記事はその投資比率のうち日本株式が引き下げられたということなのですが、その影響を1つずつ見てみましょう。
日本株投資比率が下がる影響

記事によると、年金マネーが参考にする信託銀行4行の投資比率平均が27%となり、前年度比0.5%低下する計画です。
これは2013年度以来の低水準で、アベノミクス開始前の水準に戻ってしまうことを現わしています。
理由は世界経済の停滞、それに伴う日本企業の利益横ばい、人件費の上昇、消費税増税の影響など、一般的に知られている要因を加味したものです。
まず日本株が上昇して保有株式の時価が上がり、投資比率上限に達すると売却します。
まだ上昇する予想でも、比率上限に達した場合は買うのを控えるということも言えます。
逆に日本株が下落して相対的な投資比率が下がると買い増すのですが、投資資金が減少するので買い支えられず下落幅が大きくなる可能性があります。
そもそもの投資資金が減少するので、供給面では日本株相場が盛り上がらなくなります。
日本株以外の資産が増加する影響

年金マネーは日本株への投資比率を下げ、外国債券への投資比率を引き上げます。
投資比率の平均は12.8%と2.5%もアップ、さかのぼれる2007年以降で最大です。
株式が下落する時には債券が上昇することが知られていますが、その中でもマイナス金利で金利が取れない国内債券ではなく、為替変動があっても外国債券に投資する方が有利だとプロは見ているということです。
そのため外国債券へ投資するのに伴い円を売るので、景気停滞によるドル安円高に対抗する円安圧力が増え、為替相場が例年より動かない予想も出ています。
年金マネーの影響力が低下する影響
2018年度に日本株を買い越したのは、日銀のETF買いと年金マネー、自己株買いする日本企業に限られます。
海外投資家は売り越しであったので、年金マネーの供給が減ると相対的に海外投資家の行動によって左右される展開が予想されます。
国内景気より海外景気の動向に左右されると乱高下の幅が大きくなり、投資のチャンスも生まれるのですが、不安定な相場が予想されています。
景気停滞時の対処法とは

年金マネーの動きは相場全体の大きな動きだと捉え、個人投資家の皆様には景気停滞時の対処法をご紹介しましょう。
株式から債券運用の比率を上げる
年金マネーと同じく、株式を売り債券を買いましょう。
債券は株式ほど値上がり益を期待できませんが、世界経済が完全に回復するまでに数年はかかります。
その間の「つなぎ」としての債券、「負けない」投資手法として特に外国債券がお勧めです。
なお外国債券投資には為替リスクがつきものなのですが、為替ヘッジ付の投資信託であれば、ヘッジコストが別途かかるもののリスクを低減しながら効率よく、外国債券に投資できます。
株式でもディフェンシブ銘柄に投資する
日本株へ投資する場合も、対象銘柄を変更することをお勧めします。
景気停滞時には、業歴の浅い成長株(グロース)よりも老舗の割安株(バリュー)が注目されます。
特に景気に左右されない、日常生活に密着した企業に資金が集まってきます。
さらに10年以上連続配当している、安定的に利益を上げている企業であればさらに良いでしょう。
創立100年を超え、実質無借金経営
自動車部品を取扱う商社で、増配は20年連続
PBR0.75、PER8.4、配当利回り2.74%で、売上高も成長し続けている
2019年は株式相場の乱高下が予想
2019年は株式相場の乱高下が予想されているので、下がり切ったタイミングで買い、そこそこの利益が出れば売って利益を確保する投資スタイルがお勧めです。
下がり切ったタイミングの見つけ方は、こちらの記事を参考にしてください。(執筆者:中野 徹)