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今期想定為替レート110円の企業が多数
2019年3月期銘柄の決算ラッシュは終わった。
しかし、海外市場含めて株式市場では米中貿易摩擦の懸念が再燃しており、相場全体の見通しは不透明だ。
リスク回避の空気が漂う中、為替については1ドル109円台前半まで円が買われる場面もみられた。
今回の決算ラッシュにおいては、今期業績計画での想定為替レートを1ドル110円と設定した企業が多くあった。
想定為替レートを決めたとみられる4月は1ドル111円台の水準で値動きしていたことから、1ドル110円が収まりのいい水準と判断した企業が多かったのだろう。

105円という逆張りな想定
円安で恩恵を受ける企業ならば、想定為替レートが1ドル115円ならば強気、1ドル105円ならば弱気のように思われる。
そして、こうした想定をしたのであればその理屈を投資家に説明する必要がある。
どうして高い、または低い水準で想定しているのか、という点だ。
5月下旬現在から見れば、弱気なレートにする理由を探すのは難しくないだろう。
足元の貿易摩擦や日米の通商交渉など、海外が絡んだリスク要因が数多かったからと説明すれば市場に受け入れられそうな気はする。
だが、4月は貿易交渉の先行きについてポジティブな期待が広がっていたので、このリスクを円高要因とするのは市場のムードとは逆の思考だったということになる。
コマツ、ローム、シャープが105円に
今回の決算において、想定為替レートを1ドル105円と設定した企業には、コマツやローム、シャープなどが見られた。
シャープに関しては、2019年3月期通期の営業利益が従来計画を下振れて減益になったこともあり、レートも控えめとした可能性はある。
2020年3月期通期の営業利益見通しは前期比19%増の1,000億円、想定為替レートは1ドル105円とした。
波乱相場の中で控えめ見通しの優良銘柄を探すのも有効

5月下旬現在、実際の為替レートは1ドル110円に戻してきた。
円高の流れが一服したことで、一息つけるといった状況だ。
しかし、中国が米国との協議を打ち切るという観測も広がっており、貿易摩擦の見通しは依然として不鮮明なままだ。
こういった状態では、海外売上の多い企業には投資しづらい。
だが、こうした機会はチャンスでもある。
想定為替レートだけでなく、事業見通しについても控えめとしている企業は少なくない。
大多数の投資家が海外材料に気を取られて目を向けていない時に、コマツやシャープなどの控えめな見通しを示している企業の平常な水準の利益を見いだすことができれば、高いパフォーマンスを得られる可能性は高まる。
決算ラッシュを終えて一息ついている投資家は多いが、ここであらためて振り返ってみて想定為替レートが控えめな企業を洗い出し、その中で安定して業績が成長している企業を探してみるのも効果的だろう。(執筆者:高橋 清志)