在宅介護を続けるうえで、なくてはならないのがショートステイ(短期入所生活介護)の介護サービスです。
ショートステイは泊まりで利用することできるので、ご家族の負担軽減にはとても有効なのですが、介護費用のほかに実費にて食事代、日用品費代、部屋代などの介護費用がかさむので、頻繁に利用しずらいという点があります。
しかし、ショートステイの利用料金を抑える方法があります。
今回は、ショートステイなどの食費と居住費が減額される制度である「介護保険負担減限度額認定」と「世帯分離」の関係について紹介します。

目次
介護費用を節約 「介護保険負担限度額認定」とは
介護保険負担限度額認定を受けるには申請が必要です。
申請によって該当すると世帯の所得に応じて、介護施設利用料のうち食費と居住費の一定額以上が保険給付される制度です。
対象となる方は以下の(1)~(3)のいずれにも該当する方です。
対象となる人
(2) 本人の配偶者(別世帯も含む)が住民税非課税であること。
(3) 預貯金等合計金額が、単身者は1,000万円以下、配偶者がいる場合は2,000万円以下であること。
介護保険負担限度額認定に該当するポイントは世帯分離
世帯分離とは、住民票に登録されている世帯を同一住所のままで世帯を2つ以上に分けることです。
例えば、年金受給者である両親と独身の就労している息子が同一世帯で暮らしているとします。
この場合、世帯収入は両親の年金と独身の息子の給与が合計されてしまいます。
しかし、息子が世帯分離すると息子の給与分は合計されないことになります。
そのため、両親の年金収入のみが介護保険負担限度額認定の審査対象になりますので、該当となる可能性が高くなるのです。
世帯分離の手続き自体は、市町村役場の窓口で即日できるケースがほとんどです。
印鑑と身分証明書、誰が窓口に行くのかによって委任状が必要になります。
世帯分離がスムーズにできるように、窓口でのやり取りの際に以下のポイントを押さえておきましょう。

世帯分離をするときのやり取りのポイント「世帯分離をする理由」
もしも、窓口で世帯分離をする理由を聞かれた場合、あくまでも「生計を別々にすることにしたので」と簡潔に答えることです。
「関係者に教えてもらった」
というような理由の場合には、本来の世帯分離の趣旨にそぐわないと判断される場合があり、スムーズに受け付けられないこともあります。
介護保険負担限度額認定に該当した場合の費用の試算例
介護保険負担限度額認定は世帯の収入によって限度額の割合が1~3段階に分けられています。
※段階によってどのくらい食費と居室料が安くなるのかが違います。
例えば、介護保険負担限度額認定を申請し第2段階に該当した人がショートステイの多床室(2人部屋や4人部屋)を30日間利用する場合はどうなるのでしょう。
結論から言うと、食費(3食)だけでも1日あたり990円お得になります。
計算は以下のようになります。
居住費では以下の計算になり、1日当たり470円お得になります。
以上のことからまとめてみましょう。
・ 1か月の場合、1,830円 × 30日=5万4,900円もお得です。
・ 1年に換算すると、65万8,800円お得という大きな金額になるのです。
単純計算ではあるのですが、やはり世帯分離して介護保険負担限度額認定を申請する方が良いということがわかりますね。

申請するかどうかで負担が大きく変わる
介護保険負担限度額認定と世帯分離について知っているか否か、申請するか否かでかかる費用が相当違ってくる可能性があります。
介護保険負担限度額認定に限らず公的な制度では、自らが気づき申請しなければ利用することができないという制度が多数あります。
「〇〇さんと同じ介護度で同じように介護施設に泊まっているのにどうしてうちだけ高い請求がくるのかしら?」と疑問に感じている人は、今一度確認してみましょう。
介護を続けていくためには、労力と合わせて家計を維持できるかも重要です。
積極的に行動を起こし利用していくようにしましょう。
ケアマネージャーに「何か利用できる制度はないか?」と声をかけてみるのも1つの行動です。
ちゅうちょされる方も多いのですが、利用するために減免制度があるということをお忘れなく。
目にしたものや聞いたものなど利用できる制度をコツコツと利用していくことも、介護費用を抑えるコツになります。(執筆者:佐々木 政子)