介護が必要になっても住み慣れた自宅で生活していきたいと希望する方は増えています。
そして、家で介護を頑張っていきたいと考える家族がいるからこそ、かなうこともあるでしょう。
しかし、少子高齢化や核家族化が進む日本では、近くに家族がいないというケースも多いのが現状です。
そのため、地域全体で介護をしていく地域包括ケアシステムが始まっています。
この地域包括ケアシステムは住み慣れた自宅で暮らしていくことを可能にしてくれる地域の介護サポートともいえます。
可能な限り自宅で暮らす、在宅で介護を受ける、という風向きです。
もともと制度として存在していながら日陰にいた「家族介護慰労金」についても、市町村によって該当する幅が拡充しているところも見受けられます。
介護職の足りない時代にさしかかり家族や地域の介護力が必要になってきました。
もっと目を向けてほしい、この「家族介護慰労金」についてみていきたいと思います。

目次
家族介護慰労金制度とは
家族介護慰労金制度は、簡単にいえば要介護度の高い家族を一定期間以上在宅で介護をしている家族に対して給付されるお金です。
自治体によって該当となる要介護度や給付金の額が異なりますが、おおむね
・ 年額10万円程度
という場合が多く見られます。
また、どの自治体でも世帯の全員が市民税非課税であることが要件の1つになっていると思われがちですが、所得制限がないという自治体もあります。
一定期間以上の在宅介護という意味合いも自治体によって異なる場合がありますが、1年のうちに
・「通算90日以上の入院をしていない」
などが条件となります。
また、介護保険制度が始まる前は「介護手当制度」や「寝たきり高齢者介護慰労金」等の名称で存在していました。
申請に必要な書類、手順などは自治体市で異なる点があるので、詳細は居住地の自治体に確認することになりますが、申請自体は任意申請で大まかな流れは以下のようになります。
ケアマネージャーが代行してくれることもあります。
(2) 申請後に職員が実態調査を実施する自治体もあります。
(3) 家族介護慰労金支給決定通知書が送られてきます。

家族介護慰労金制度の具体的な内容
自治体によって重視するポイントが違うことも特徴です。
・ 軽介護度でも状態に応じてより多くの在宅介護をしている方に門戸を開いている場合
・ 寝たきり状態であるかなどを重視する場合
など、条件が異なっています。
これは、財源、年代別の人口構成、要介護認定者数など地域の特性からさまざまな要因で自治体によって該当する条件が異なっていると考えられます。
このように、対象条件について特色がある自治体を3つ紹介します。
(1) 秋田県五城目町 介護度の重さと認知度を重視している場合
【対象】在宅で月15日以上介護し、五城目町に住所を有する家族の方で、介護を受けている方が次の場合、対象とします。
・ 65歳以上で要介護4または5と認定されている。
・ 65歳以上で「認知症高齢者の日常生活自立度基準」のランクⅢa以上の状態である。
参考元:五城目町
(2) 東京都世田谷区 軽介護度でも認知症の程度を加味している場合
【対象】従来の要介護4、5の方に加え、新たに平成31年4月1日から支給要件が一部変わります。
変更内容
要介護2(認知症高齢者の日常生活自立支援度が2以上の状態に限る。)または要介護3の認定を受けた方も対象となります。
参考元:世田谷区 平成31年度〈pdf〉
(3) 岡山県岡山市 要件がやや厳しいが介護度3から支給対象としている場合
【対象】次の要件すべてに該当する介護者・高齢者と同居していること。
・ 高齢者が要介護3以上と認定され、当該要介護の状態が1年以上継続していること
・ 要介護3以上の介護を必要とする高齢者を家庭で介護した期間が、年度内(4月から翌年3月)において通算6月以上あること。
・ 高齢者、介護者および高齢者または介護者と同居する親族が属する世帯の全員が市民税非課税であること。
・ 高齢者が過去1年間介護保険サービスを受けていないこと。
参考元:岡山市〈pdf〉
お住まいの自治体に確認してみましょう
家族介護慰労金制度は、自宅で介護をしている人をねぎらう役割を持っています。
遠慮しがちなご家族も多いのですが、在宅で介護を担っていることでもらえる権利だと一歩踏み出してみてください。
以前に申請して「我が家は該当しない」、「以前、申請する条件を満たしていなかったからもうしない」と思われている方もぜひ、現行の家族介護慰労金制度を再確認してみましょう。
申請においてはケアマネージャーが代行してくれることもあるので相談してみるのも良いでしょう。
制度をうまく活用していくことは金銭面だけでなく心身の負担を軽減してくれるものになります。
お住まいの自治体が用意している家族介護医療金制度をチェックしてみましょう(執筆者:佐々木 政子)