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地銀の与信関連収支が悪化
時事通信は、全国の地方銀行87社の2019年3月期決算で、
と伝えた。
与信関連費用とは、平たくいえば融資先からの返済が滞ることに対して計上する費用だ。
「借金が返せない」という状況に絡むものであり、借り手の企業からすれば債務不履行は倒産(法律用語としては破産)へとつながる。

費用拡大の背景は不透明
これがどれほど深刻な問題であるかは、今のところ判断しにくい。
なぜなら、現状この与信関連費用の増加が「地方経済の縮小に伴うローン事業の悪化に向けた準備」なのか「リスク管理方針の単なる調整」なのか、わかりづらいからだ。
低金利により資金運用収益を稼ぎにくい状況とはいいつつも、統計データである企業倒産件数は年々減少しつつあり、その観点でいえば銀行は貸し倒れ損失を計上しにくい状況にあるといえる。
こうした状況下で、地銀は比較的強気な見通しを想定することで与信関連費用を抑えてきた。
今後もし倒産件数が増加に転じ、その後も増え続ければ、地銀の与信関連費用の積み増しは地方経済の悪化を見込んだ準備ということになる。
だが、低水準な倒産件数が継続すれば、今回の費用積み増しは融資事業におけるリスクに対し強気寄りの評価をしてきたことに関して、多少微調整したに過ぎないということになる。
地方経済悪化ならバリュエーションはさらに低下へ
地方銀行の株価評価は低い。
多くの地銀株のPBRは0.5倍前後、中には0.1倍の銀行もある。
倒産する企業が減ってくるというポジティブな要素があるにもかかわらず、マイナス金利政策が導入されるなど、資金運用収益が稼ぎづらいというネガティブ要素が目立つことでバリュエーションは改善してこなかった。
こうした中、もし万が一倒産件数が増加トレンドに転じれば、バリュエーションはさらに悪化すると思われる。
倒産件数の推移を追って判断につなげよう

日銀は金融政策における金融機関の保護として施策を変更しつつある。
地方銀行も、コスト削減に向けて経営統合を広く進めている。
厳しい資金運用環境がどの程度継続するのか、経営統合によりどの程度利益率が高まるのかといった点は以前から注目されてきた。
だが、今回の与信関連費用の増加という材料が新たに出てきたことで、バリュー株投資ということで地方銀行に投資していた投資家の中には今後の判断に悩んでいる人もいると思われる。
前述したような理由から、ひとまずは「企業倒産件数」の長期的推移を追って確認するのが重要と考える。(執筆者:高橋 清志)