先日2019年6月28日の朝刊では、「国債保有 日銀43%」という見出しが踊りました。
この記事の中身を見ますと、要は
というものです。
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目次
日銀の日本国債「爆買い」の結果
もともと日銀は、2013年4月のバズーカ緩和以降、日本国債の「爆買い」を続けてきました。
その結果、2016年には長期金利がマイナス0.3%と過去最低水準まで下がり(価格は上昇)償還までの期間が10年を超す超長期債の利回りも急低下するほどとなりました。
このように長期金利が下がり、国債の利回り曲線がフラット化してくると、
・ 保険会社、年金基金などの長期投資家の運用難
という「副作用」が強まることになります。
そこで日銀は、2016年9月に長短金利操作(イールドカーブコントロール)を導入し、当初10年物国債利回り誘導範囲を0%程度とし、後にプラスマイナス0.2%程度と若干誘導幅を広げました。
その後、日銀は新たに「政策金利のフォワードガイダンス(中央銀行が声明等を通じて政策金利の据え置き期間や政策変更の条件などを明言し、市場参加者の予想や期待に働きかけることで、金融政策効果の浸透を目指すこと)」の導入を決定し、その中で
と明記しました。
要は、
と語ったようなものだと思います。
そうなってくると、この政策の「副作用」が気になってくるのは筆者だけではないでしょう。
金融緩和政策の副作用
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副作用1. 金融機関の収益圧迫
その「副作用」の1つが、「金融機関の収益を大きく圧迫する」ということだと思います。
それは、
・ 長短金利操作(イールドカーブコントロール)を行っていることから、国債の値動きもほとんどないため「債券運用」もままならない状況が続いている
からです。
そこへ、全国的な人口・企業数の減少という構造的な問題を背景とした金融機関間の競争激化が続けば、特に地域金融機関の収益への悪影響は避けられないと思います。
現実に、今年4月の報道では、
との試算も示されました。
さらに筆者が懸念しているのは、各行が注力してきた不動産融資がバブル期の1990年末以来となる「過熱サイン」を示していることです。
つまり、今回の金融政策で、これまでの伝統的収益源に頼れなくなった金融機関が「過剰融資に走っているのでは」という懸念です。
仮に景気減速などでこれらの過剰融資が焦げ付いてくると、まさに負の連鎖になるリスクもはらんでいます。
副作用2. 年金への影響
もう1つの大きな「副作用」が年金への影響でしょう。
長期投資家である年金基金が運用難に陥り、また、年金の再評価率(過去の低い標準報酬をそのまま平均すると、年金の実質価値が低くなってしまうことがあるため、過去の標準報酬を現役世代の手取り賃金の上昇率に応じて見直したうえで平均化すること)の指標を10年国債の利回りとしている場合、再評価率が低下して、想定する給付を下回る可能性もあります。
などと言われれば、それでなくても最近やたら話題の「老後資金が2,000万円不足すると指摘した報告書」を巡って年金不安も再燃しているところですから、日銀としても今回の金利の下げ過ぎをなんとかコントロールしたいところではないでしょうか。
「副作用」の懸念が現実味を帯びてきた
このように、さまざまな「副作用」の懸念がある金融政策ですが、最近の債券市場(6月21日)において、一時マイナス0.195%と、上記の日銀の誘導範囲の下限に迫ったことで、にわかに緊張感が増してきたものと思います
「副作用」とは、一般的には「薬や処理法などの目的とする作用(効果)に伴って起こる別の(有害な)作用」のことです。
マネ達で、「日銀の追加金融緩和で ”一気通貫” ? カンフル剤の副作用に注意」という記事を書いたのがかれこれ5年前でした。
当時は、日銀の金融緩和政策に関する「副作用」という言葉は、最近ほど使われていなかったと思いますが、最近よくこの言葉を見聞きするようになってきました。(執筆者:阿部 重利)