自分や家族に介護が必要になったときに頼れるのが、「介護保険サービス」です。
要介護度別に限度額が決まっており、その範囲内であれば実際の金額の1~3割という少ない負担で介護サービスを利用できます。
とはいえ、介護に関わるすべてを介護保険サービスだけでまかなえるわけではなく、利用料のほかにも、意外なところにお金がかかります。
今回は、介護保険サービスでカバーしきれない部分について、どのような出費に備えておけばよいのか、詳しくまとめます。
目次
介護保険が使えない出費とは?

介護保険が適用されない出費には、どんなものがあるのでしょうか。
利用限度額を超えてしまった分
介護サービスを利用する場合、自己負担は1割か、一定以上の収入のある人は2割、あるいは3割となりますが、介護保険の利用限度額を超えてしまうと超過分は保険適用外となり、自分で全額負担しなければなりません。
超過する場合は、サービスの利用時間を減らしたり、内容を変更したりして、限度額以内に抑えるのが一般的ですが、なかにはあえて自己負担で超過分のサービスを受ける人もいます。
ケアマネージャーとよく相談し、自分にとってよりよいプランを組み立てましょう。
デイサービスやショートステイでの諸費用
見落としやすいのが、デイサービスやショートステイなどのサービスを利用したときに生じる食事代、おやつ代、紙オムツ代などです。
これらは施設が前もって用意してくれるものなので、つい介護サービスに含まれていると思いますが、基本的には全額自己負担なので注意しましょう。
それでは、実際の介護現場に照らし合わせて、もう少し詳しく説明していきます。
施設介護で自己負担となる項目

利用者が施設へ入居している場合も、介護保険サービスを利用できますが、保険の適用になるのは受けた介護サービスのみです。
入居費や日常生活にかかる費用は、基本的にすべて自己負担となります。
自己負担になる主な出費は、以下のようなものです。
・ 食費(管理費を含む場合もあり)
・ 医療費
・ ティッシュペーパー、石けん、歯ブラシなどの日用品の購入費
・ お菓子や飲み物などの嗜好品の購入費
・ 衣類の購入費
・ 理美容費
・ 紙オムツ、パッドの購入費
ただし、特養では紙オムツ類は施設側で負担するので、費用がかからないことが一般的です。
在宅介護で自己負担となる項目
在宅介護では、利用者の多い訪問介護、デイサービス、ショートステイなどのサービスや、自宅で介護をするために必要な費用の中で、介護保険が適用されるものと、自己負担のものがあります。
訪問介護
訪問介護の場合、身体介護で扱う備品は基本的にヘルパーさんに自宅のものを使用してもらいます。
そのため、通常の利用であれば利用料金以外に費用を請求されることはほとんどないといえるでしょう。
ただ、サービスに必要な紙オムツ、パッド、ウェットティッシュなどは絶えず切らさないように準備しておく必要があります。
家事援助の場合、たとえば買い物代行でかかるスーパーの駐車場料金、有料レジ袋などの費用は、利用者側の負担です。
また、訪問介護は原則として利用者本人の日常生活の援助なので、ヘルパーさんに家族分の調理や洗濯、家族の部屋の掃除をしてもらうことはできません。
草むしりや床のワックスがけといった日常の家事の範囲を超える作業に対しても、介護保険の利用は不可です。
もしそれらが必要な場合は、個別に民間の業者に頼むことになるため、その分の費用が発生します。
デイサービス、ショートステイ

デイサービスやショートステイを利用する場合は、食事代、おやつ代、紙オムツ代のほか、レクリエーションで使う材料費、連絡ノート代なども基本的には自己負担になります。
もし、レクリエーション活動の一環でレストランでの外食やお花見などの外出がある場合は、飲食代や入場料などの費用も利用者が負担します。
住宅改修費、福祉用品購入費
要介護度が上がるにつれて、部屋やトイレに手すりを付けたり、玄関に車いす用のスロープを設置したりといった住宅改修が必要になってくる可能性があります。
また、ポータブルトイレや入浴用チェアといったレンタル不可の福祉用品は、自分で購入しなければなりません。
在宅介護の場合は、こういった費用も頭に入れておく必要があるでしょう。
タクシーなどの移動費
介護が必要な高齢者の場合、公共の交通機関を利用するのが難しい人も少なくありません。
もし通院などのたびにタクシーを利用することになれば、距離によっては往復でかなりの出費になってしまいます。
月に1度や2度ならまだしも、毎週の通院とでもなれば、かなり家計を圧迫する可能性もあります。
保険適用外の出費を把握して、適切な介護計画を
介護サービスを利用すれば、介護にかかるお金を大幅に節約できます。
ただし、介護保険が適用されない部分は自分で負担するしかありません。
「介護保険があるから安心」と過信していると、思わぬ出費に困惑してしまうこともあるでしょう。
まずは保険適用外の出費をしっかりと把握し、前もってそれらの予算を組み入れた上で介護計画を立てていくことが大切です。(執筆者:渡辺 有美)