介護の現場では、金銭面に不安を抱えている利用者とその家族に出会うことが多くあります。
一括りに金銭面の不安といっても理由や背景はさまざまですが、今回は、介護費用に大きく関係があるリハビリに注目していきたいと思います。
先日、訪問リハビリテーションの現場で働く理学療法士とリハビリが介護費用に及ぼす影響について考えたので、ご紹介したいと思います。

目次
長寿大国日本での介護問題
まずは、日本が抱えている介護問題に触れておきたいと思います。
人生100年時代という言葉がささやかれている昨今、自分の老後資金や親の介護に伴う金銭的負担に対して不安を抱えている人は多いでしょう。
厚生労働省の人生100年時代構想会議中間報告によれば、2007年に生まれた子供の半数は107歳より長く生きると推計されてます。
2018年生まれの子はいったい何歳まで生きるのか、ある意味恐ろしくも感じますが、長生きするという事は必然的にお金が必要になります。
老後資金は一般的に3,000~4,000万円、なかには1億円ほど必要だと言われています。
最近では老後2,000万円問題として議論されています。
訪問リハビリはゴールがある! 卒業を目標に
例えば、転倒して大腿骨骨折で入院していたが退院後にもリハビリをすすめらるケースがあります。
リハビリに関して言えば、この先ずっと継続していくものと捉えられ、金銭的負担を心配される方が多くいらっしゃいます。
また、リハビリなんてやってもやらなくて同じ、辛いだけだというイメージをお持ちの方も多いものです。
このように、リハビリが必要な方に限ってサービス利用を渋られることがありますが、訪問リハビリに関しては、いずれ卒業することを目標にしてサービスを開始するべき点を契約の際に説明を行っています。
進行性疾患の場合は別ですが、退院後に行うリハビリには、自宅で安全に生活を送る為のフォローや運動習慣を身につけてもらう目的があります。
繰り返しリハビリを行うことでリハビリの術を身につけてもらい、理学療法士がいなくとも継続して運動、セルフケアができることを目指しています。

在宅介護においてなぜリハビリが重要なの?
リハビリの重要性を見たときに注目してほしい点は、リハビリ卒業までの料金負担と、今のまま活動性が低下した生活を続けていった結果の将来を比較することが、重要だと考えることです。
本人にとっても家族にとっても負担が少ない選択を選ぶとしたら、今、必要な時に必要な介護、リハビリを頑張ることです。
リハビリを必要な時期に行うことで、少しでもできることを増やしておくことは今後の介護費用に大きな影響を与えるからです。
介護保険の要介護認定で重い要介護度が認定されれば、介護サービスをたくさん利用できると思いがちですが、その分介護費用の額も多くなります。
単に利用できる時間が増えるわけではありません。
介護保険では、同じ時間、同じ介護サービスを受けても要介護度が重いとその分介護者の負担が大きくなるということで、利用料金は高く設定されています。
介護は長い目でとらえることが重要なのですが、この先の介護を分けるのはこのリハビリの成果にかかっているといっても過言ではありません。
もちろん、人によって、リハビリにうまくのることができなければなかなか結果も出ませんので、見極めは必要です。
訪問看護では、全て看護師に頼るのではなく、手技を看護師から指導を受けた上で、いずれは、家族ができる事はサービスから外していくこともできます。
こうすることで介護費用は徐々に削減することができます。
また、家族の協力は、家族に負担をかけたくないという思いから本人のリハビリに対するモチベーションも保たれるため、良い要素にもなります。
料金負担だけでなくサービスの利用についてのメリットとデメリット、本質をよく見極めた上でケアマネージャーと相談して判断していきましょう。
無理のないプランを立てることが大切です

介護には気力が必要です。
人間同士なので意見が衝突することもあります。
リハビリは地道なコツコツ努力の積み重ねになりますので、家族だからこそ、やるせない気持ちをぶつけたくなり苛立つこともあります。
しかし、家族だから、大切に想うからこそ「こうしてあげたい」と理想も強くあります。
介護される本人と家族の理想と現実的なサービスをよくすり合わせ、無理のないプランを立てることがリハビリを続けるコツになります。
リハビリは必要だけれどお金がかかるからこのままで良いと思っている方も、まずは少しずつリハビリを頑張ってみませんか。
リハビリの必要がなくなってくると、徐々に金銭的にも精神的にも身体的にも負担が少なくなります。(執筆者:佐々木 政子)