税務署は行政機関ですので、法律に従って申告指導や税務調査をしています。
ただ、法律は原則的な内容しか記載していないので、税務署職員でも解釈に迷うケースは少なくありません。
そんな法律のFAQとなっているのが「国税庁長官通達」、通称「法令解釈通達」です。
税務署の現場では、この法令解釈通達に基づいて申告指導や相談対応をしています。
そこで今回は、法律と法令解釈通達の違いについてご説明します。

目次
法律は日本の全ての人が守るべき約束事
法律は、日本の全ての人が守るべき規定です。
確定申告の申告期限や税金の税率も法律に規定されていますし、申告書に提出する添付書類の種類についても法律に記載があります。
また、脱税事件で脱税した人が逮捕されるケースがありますが、これは法律で罰則規定があるから逮捕が可能となっています。
【国税通則法第百二十六条】
納税者がすべき国税の課税標準の申告(その修正申告を含む。以下この条において「申告」という。)をしないこと、虚偽の申告をすること又は国税の徴収若しくは納付をしないことを煽せん動した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
国税庁長官通達は法律解釈を示した国税組織の約束事
民法や刑法、所得税法などの法律は聞いたことがあると思いますが、「国税庁長官通達」についてはほとんど人が知らないかと思います。
国税庁長官通達とは、国税庁長官が発する指示文書であり、法律の条文に記載事項の実用例(法令解釈)が示されています。
通達は法律ではありませんが、税務署職員は必ず国税庁長官通達に従って申告指導をします。
なぜなら、国税庁は税務署の上級機関であり、公務員を上司の命令に従う義務が法律で定められているからです。
【国家公務員法第九十八条】
(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
なので、税務署の指摘を理解するためには、法令解釈通達を理解して申告をする必要があります。
なお、法令解釈通達は国税庁ホームページで確認できます。
税務署に相談する際は、回答の根拠となる法律や通達を確認すること

税務署の相談で遭遇したくないのが、税務署職員の誤回答です。
ただ、法律知識がない状態で、税務署の回答が間違っているのを見抜くのは難しいです。
そんな時に確認してほしいのが、回答した内容の根拠となる法律や通達を示してもらうこと。
税務署職員は法律や法令解釈通達に基づき回答するので、回答する内容には必ず根拠が存在し、根拠がない回答は職員の憶測にしか過ぎません。
特にローン控除など、特例適用をする場合には要件1つで適用の可否が反転します。
面倒な部分と思われるかもしれませんが、一言確認するだけで、税務署の回答の精度は格段に上昇します。(執筆者:平井 拓)