令和元年10月1日より、消費税が10%に増税され、私たちの生活にさまざまな影響が及んでいます。
目に見えて実感するのはやはり、買い物をしたときや高額な商品を購入した時でしょう。
では、物理的なもの以外ではどうでしょう。
私たちの生きている社会は超高齢化社会です。
介護保険サービスを利用している方も多くいます。
今回は消費税が10%に増税したことで生じる介護保険サービスへの影響についてみていきます。
目次
社会保障と消費税10%へ増税の意義

今回の増税において増収した分の使い道が、介護保険を含む社会保障に充てられる意義について理解しましょう。
消費税は、世代に関係なく中立的であることから、
という考えに適しています。
介護保険に関する増収分の使い道
介護保険に関する増収分の使い道について、ここでは3つ紹介していきましょう。
1.低所得者の介護保険料の軽減!
消費税が上がることで得られる増収分の使い道の1つが、所得の低い高齢者の介護保険料の軽減です。
対象:65歳以上の住民税非課税世帯
現在、65歳以上の3割が住民税非課税世帯だと言われています。
国は、対象となる所得の低い高齢者を収入によって更に段階に分けて、介護保険料の軽減を図るとしています。
2.介護保険の区分支給限度額と基本報酬が引き上げられる!
介護保険は、要介護度別に利用できる単位(金額)が定められています。
今回の増税に伴い介護保険サービスの基本報酬が引き上げられました。
基本報酬が引き上げられたことで利用できる単位も多くなります。
それが「区分支給限度額の引き上げ」です。
要介護1の方の場合
区分支給限度額
【増税前】1万6,692単位 (円に換算すると16万6,920円)
【増税後】1万6,765単位 (円に換算すると16万7,650円)
これまでよりも730円分、多く介護保険のサービスを利用できます。

要介護5の方が、通常規模のデイサービスを7~8時間利用した場合の(1回利用あたり)基本単位
【増税前】1,124単位(円に換算すると1割負担の場合1,124円)
【増税後】1,130単位(円に換算すると1割負担の場合1,130円)
このようになっています。
基本単位の他に、自費負担である昼食代やおやつ代もサービス提供事業所によっては増税に伴って値上げしている場合もあります。
詳しい改正の単位数は下記でも確認ができます。
参考元:厚生労働省 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(pdf)
3.介護職員の処遇改善のための費用を利用者が負担
今回の増税に伴って介護保険の分野で新たに設けられた加算は、介護職員の報酬に直結する加算です。
加算の名称は「介護職員等特定処遇改善加算」です。
内容としては
ということになっており、これまで国が介護職員の待遇向上のために設定してきた「介護職員等処遇改善加算」とは別に新設した追加の加算です。
介護サービスを利用される方にもこの加算分を負担してもらうもので、利用したサービスの単位の合計にサービス種類ごとに定められた加算率を乗じてその負担額を算出します。
参考元:厚生労働省 介護人材の処遇改善について(pdf)
介護職員不足が深刻な今、国も民も一体となって介護職員の処遇を改善させようようという強い意志が感じられる加算です。
以上の3つが主に介護保険サービスを実際に利用している方が増税による影響を実感する変更点となります。
所得が一定以下の老齢基礎年金受給者に給付金が支給される

介護保険サービス以外の社会保障という点で身近な変更点を1つ紹介します。
増収分では年金を含めても得られる所得が一定以下の老齢基礎年金の受給者には、月額5,000円が支給されます。
但し、保険料を納めた期間によって支給額は異なるとされています。
支給要件
1. 65歳以上の老齢年金受給者
2. 前年の公的年金等の収入とそのほかの所得額の合計が約87万9,300万円以下であること
3. 世帯を同一とする全員が市町村民税非課税だということ
また、この給付金は障害基礎年金や遺族基礎年金の受給者でも一定の要件を満たす方は支給の対象となります。
参考元:政府広報 年金生活者支援給付金制度について
本当に必要な制度を確認
介護保険サービス利用において、実際に増税がどのように影響するということが分かりました。
増税では、制度の変化や給付の拡充などの変化が起きます。
つい、毎日の買い物や大きな買い物における影響にばかり目が行きがちです。
軽減税率やプレミアム商品券、キャッスレス決済、NISA(非課税の投資)など耳慣れない言葉が飛び交っていますが、良く調べると期間限定であるのが多いというのも特徴です。
増税分を取り戻したいという気持ちですぐに飛びつく前に、よく調べるようにしましょう。
そして、本当に必要な手続きの取りこぼしがないかを確認しましょう。
介護保険に関しては、
と、介護に携わる立場の人にとっては大変ありがたいといえます。(執筆者:佐々木 政子)