介護保険の仕組みはとても複雑です。
介護保険サービスを利用するといくらかかるのかをケアマネージャーが試算して説明してくれるものの、いまひとつ分からないという方も多いのではないでしょうか。
特に、何が介護保険の対象で何が自費負担になっているのかが、実はわからないという人もいるでしょう。
例えば、病院に入院すした場合には、その診療費は健康保険によって私たちが実際に負担するのは1割~3割、寝具や食費、病衣は医療費ではないので自分で全額負担というのは何となくわかります。
同様に介護保険でも保険対象となるものとそうでないものがあります。
ごく基本的なことかもしれませんが、複数の介護サービスを利用しているうちに分からなくなってしまうこともあります。
今回は、介護保険対象になるものと自費負担のものをあらためて整理していきます。

目次
介護保険対象サービスと自費負担
ここではよく利用されているサービスであるデイサービスを例に介護保険対象のものとそうでないものを仕分けします。
デイサービス
デイサービスとは、介護施設に日帰りで通い、入浴、食事、レクリエーション、機能訓練などが利用できる介護サービスです。
介護保険対象となる項目(本人負担が1割 ※収入によっては2割)
(1) 通所介護費:介護度によっての基本料金
(2) 入浴介助加算:デイサービスで入浴した時の料金
(3) その他の各種加算:主なものは次の通りです。
「個別機能訓練加算」 機能訓練を計画的に行う場合の料金
「認知症加算」 認知症介護にかかる専門的なケアを行う場合の料金
「栄養改善加算」 栄養に関するケアを計画的に行う場合の加算
介護保険対象外となる項目(事業所によって料金が異なり、利用者が全額自己負担)
(4) 昼食代
(5) おやつ代
(6) レクリエーションや行事に関わる参加費(徴収しない場合もある)
実例にあてはめて介護費用負担額を算出

Aさんを例に見てみましょう。
介護度:要介護1
介護保険負担割合:1割
入浴をデイサービスで行っているAさんがデイサービスを利用した時の1回あたりの料金
このAさんを上記に項目に当てはめて金額を出すと次の通りです。
介護保険対象となる項目(本人負担が1割 ※収入によっては2割)
(1) 通所介護費:介護度によっての基本料金 → 要介護1(645単位)6,450円
(2) 入浴介助加算:介護度に関係なく → (50単位)500円
(3) その他の各種加算:今回は加算なし → 0円
介護保険対象外となる項目(事業所によって料金が異なり、利用者が全額自己負担)
(4) 昼食代 → 500円
(5) おやつ代 → 50円
(6) レクリエーションや行事に関わる参加費:徴収なし → 0円
基本は1単位 = 10円の換算
ですので645単位は円換算で6,450円ということになります。
しかし、
ということです。
すなわち、この例のAさんの場合は1割負担の方なので、かかる料金の合計は以下の通りです。
Aさんの自己負担額合計
(1) 通所介護費:645円
(2) 入浴介助加算:50円
(4) 昼食代:500円
(5) おやつ代:50円
合計:1,245円
※(1)、(2)は、介護保険適用で1割負担になっている。

デイサービス利用料金の詳細
今回のAさんの場合はあくまでも1例です。
実際のデイサービスを行っている事業所の形態はさまざまです。
事業所の体制によって「体制加算」や「介護職員処遇改善加算」などが加算されることもあります。
そのほかに、
「航空機能向上加算」
「認知症加算」
「若年性認知症利用者受け入れ加算」
「サービス提供体制強化加算」
などもあります。
加算の支払い体制は、通所した回数分必要な場合と、通所した月に2回程度付くものなどがあります。
加算については、利用する側が選べるものもありますが、ほとんどはそのデイサービスがそれだけの役割を果たしているという加算になるので、選ぶことはできません。
ので、希望のデイサービスを決めたら、事前にいくらかかるのか、詳しく確認することが必要です。

オムツ代がかかるのはデイサービス
オムツやリハビリパンツ、尿取りパットについては、デイサービスの場合は自分持ちなので基本的には自宅から自分の物を持参します。
持参したもの以上にデイサービスのオムツ類を使用した場合には、その分が請求されます。
一方、ショートステイや介護施設(宿泊をする)ではオムツ代は事業所が負担するので利用者に自己負担は発生しません。
介護保険サービスの料金の仕組みを理解し自己負担額を把握
介護に関わる費用は、最初のうちは関心があっても次第に関心が薄れていくものです。
仕組みが複雑なのでよく分からないままになっていることもあります。
しかし、今年は消費増税もあり毎日の生活に関わるお金に関して、私たちが興味を持つよい機会でもあります。
ここでいま一度、介護保険サービスにかかる料金の仕組みを理解し整理しておくのもよいでしょう。
毎月届く請求書に目を通し、自分はどの部分が介護保険対象でどのくらい負担しているのか、どこが全額自己負担なのかを把握しておきましょう。
不安や疑問をクリアにし理解できることで、今後の制度改定時に感じる曖昧さや不安感が軽減されることでしょう。(執筆者:佐々木 政子)