会社の転勤や転職に伴って、自宅を買い替えるケースは少なくありません。
旧自宅を手放した後に新自宅を購入できればベストですが、現実には旧住宅を売却するよりも先に新住宅を購入することもあります。
そのような時に気になってしまうのは、買い替えタイミングが逆転したことによる税金への影響です。
不動産を売却・購入の両方で税金は関係してきますので、その際の注意点についてまとめました。

目次
売却益が発生していなければ、住宅の売却が後になっても問題ない
不動産を売却した金額は、譲渡所得の対象です。
譲渡所得は、所得税の種類の1つで、不動産売却で発生した利益に対して所得税を支払うことになります。
しかし、譲渡所得は給与所得などと違い、売却不動産の利益部分のみに課税されます。
そのため、
売却金額 -(取得費 – 減価償却費 + 譲渡費用)- 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
建物を売却する場合には、所有期間に応じて減価償却費を取得費から差し引く必要があるため、住宅の売却金額と当時の購入金額が同じの場合には、減価償却費分だけ利益が発生します。
また、譲渡費用には不動産仲介手数料などが該当するため、領収書は必ず保管しておきましょう。
住宅売却益が発生しても、利益3,000万円までなら譲渡所得は無税
自宅を売却して利益が発生した場合、利益部分に対して譲渡所得の税金を支払うことになります。
しかし、
を利用可能です。
そのため、譲渡益が発生しても確定申告時に適用申請をすれば、譲渡所得税を支払わずに済みます。
「3,000万円控除」の制度の適用要件は比較的が緩いので、利益が発生した場合には積極的に活用してください。
【「自宅売却時の3,000万円控除特例」の主な要件】
・ 住んでいた自宅を売却。
・ 売却先が家族以外。
・ 住まなくなってから3年以内に売却。
「自宅売却の3,000万円控除の特例」を適用すると「住宅ローン控除」が適用できなくなる

自宅の売却益に対しての「3,000万円控除」の特例は非常に魅力的ですが、ローンを組んで住宅の買い替えをする場合には要注意です。
なぜなら、「3,000万円控除」と「住宅ローン控除」を両方適用することは認められていないため、どちらか一方の特例適用を諦める必要があるからです。
控除額の限度額で考えますと「3,000万円控除」の方がお得に見えますが、「住宅ローン控除」は最大10年間税金の控除できるのが特徴です。
そのため、自宅を売却したタイミングだけではなく「住宅ローン控除」が適用できる合計金額もシミュレーションし、
ことも選択しなければなりません。
住宅の売却損の特例は、新たに住宅ローンを組んで自宅を購入することが条件
不動産売却損は給与所得など、他の所得との損益通算ができません。
しかし、
があります。
特例制度の事例
「住宅買い替えの特例制度」を利用した場合、例えば
となります。
所得税は所得金額に対して税率を乗じますので、課税金額がゼロ(または小さく)になれば支払う税金がゼロ(または少なく)になります。
通常の不動産売却と買い替え特例を適用する場合を比較すると次の通りです。
不動産売却損:
△500万円 → 他の所得と損益通算不可
給与所得:
500万円 → 所得税が課税
不動産売却損:
△500万円
給与所得:
500万円
△500万円-500万円 = 0円 → 所得税が発生しない
「住宅買い替えの特例制度」の適用要件は少し厳しめですが、「3,000万円控除」の特例と違い、「住宅ローン控除」との併用が認められています。
そのため、住宅を買い替える場合には特例が適用できるか1度は確認すべき制度です。
【「住宅買い替えの特例制度」の主な要件】
・旧住宅を5年以上所有していた。
・住まなくなってから3年以内に売却。
・旧住宅の売却前後1年以内に新住宅を購入。
・新住宅は10年以上のローンを組んでいる。
自宅を売却した金額でローンを返済できない場合には「損益通算」を適用できる

新しい住宅をローンで購入していない(賃貸物件に転居した)場合でも、他の所得と損益通算できるケースがあります。
そのケースとは、
場合です。
損益通算可能な事例
3,000万円
旧住宅の売却金額:
2,000万円
3,000万円 – 2,000万円 = 1,000万円 → 損益通算可能金額
【住宅売却損でローンが残っている場合の特例の主な要件】
・ 旧住宅を5年以上所有していた。
・ 住まなくなってから3年以内に売却。
・ 売却時に住宅ローンが残っていた。
・ 売却金額よりも住宅ローンの方が少ない。
税務署に相談する前に整理しておきたいポイント
最後に税務署に相談する前に整理しておきたいポイントをまとめましたので、ご参考にしてください。
税務署に相談する前に整理するべきポイント
・ 旧住宅はいつ・いくらで購入したか。
・ 旧住宅はいつ・いくらで売却するか。
・ 旧住宅を売却する際の経費をいくら支払ったか。
・ 新住宅はいつ・いくらで購入するか。
・ 新住宅のローンの有無(返済期間は10年以上か)。
特例適用の可否は事前に税理士などに判断を仰ぐ
税金関係の特例は、1つでも要件に該当しないと適用できなくなります。
そのため、特例適用をする場合には、税理士や税務署職員に自分が適用できる特例の要件の可否判断をしてもらうことをおすすめします。(執筆者:平井 拓)