iDeCoの掛金拠出は毎月払いに限らず、年1回や2回なども選べます。支払う回数を減らすと手数料を減らすことも可能です。
ただ年払いをしたために、加入時期によっては初年度に所得から差し引かれる額がわかりにくくなったり、書類が年末調整に間に合わず確定申告の対応を迫られたりすることもあります。
そこで下記のようなケースを念頭に、iDeCoの年払を行った給与所得者が、初めての確定申告をどのように進めたらいいか、翌年以降の年末調整も含めて解説します。
・令和元年10月に加入し、令和元年分は10月・11月分が12月に引落
・所得は、給与所得以外はない
・確定申告のみで申告できる控除(医療費控除・寄附金控除)はない
目次
確定申告の必要書類
小規模企業共済等掛金払込証明書(要提出)
iDeCoを掛けている給与所得者が年末調整で必要な書類ですが、確定申告することになっても必要です。
なお年末調整で証明書を提出した後に、医療費控除があるなどの理由で確定申告を行う段階では不要です。

証明書を見ればわかるのですが、「払い込まれた」、「払い込まれる」という表現がされています。
12月分を翌年で払った場合は、本年分には入らず翌年分に含まれます。初年度は4.6万円、翌年度以降は27.6万円が所得から差し引かれます。
マイナンバー関連書類(コピー要提出)
少なくとも1回は勤務先にマイナンバー関連書類を提出しているはずですが、確定申告では税務署に改めて提出します。

マイナンバーカードを発行している場合は、カードの表面・裏面のコピーが必要です

発行していない場合は、通知カードでマイナンバーが記載された部分のコピーと、本人確認書類(運転免許証・健康保険証)のコピーの両方が必要です。あるいは、マイナンバーが記載された住民票の写しでも可能です。
給与所得の源泉徴収票(提出は任意)
年末調整が終わった後に、会社から渡される(渡される時期は12月の給与支払い時が代表的ですが、会社により異なります)「給与所得の源泉徴収票」が確定申告に必要です。

平成31年3月までは提出義務がありましたが、4月以降提出義務は無くなりました。
とはいえ、源泉徴収票が無いと確定申告の手続きに大きな支障は出ます。
詳しくは上記関連記事で説明していますが、年末調整で給与所得のみを対象とした所得税の計算を、確定申告ではもう1度再計算する必要があるからです。
年末調整で申告した扶養控除・保険料控除などの情報が無ければ、年収だけがわかっていても年末調整と確定申告で計算結果の食い違いが生じます。これをなくすために源泉徴収票は必要です。
オンライン確定申告の手続
それでは確定申告書を作成し提出するまでの手続きを説明します。
手書きの申告書は手間がかかるので、所得税の自動計算を行い確定申告書が作成できる「確定申告書作成コーナー」のパソコンにおける操作方法を説明します。
スマホ版は、下記関連記事の「共通事項」と「年末調整の修正」で解説しています。
税務署の申告会場まで出向いて申告する方法もありますが、原則は手書きで行わないのでこの方法をとる場合にも参考になるはずです。
スタート部分
まずe-tax(電子申告)と書面提出があるのですが、e-taxはアカウントを準備するか、マイナンバーカード+読み取りのセットアップを行うかのどちらかが必要です。


確定申告を今回1回しか行わないのであれば、書面提出を選んだ方が1番手間はかかりませんので、「印刷して提出」を選択します。

次の画面では「令和元年分の申告書等の作成」の▼をクリックし、「所得税」を選択します。


入力方法選択では、例年年末調整で終わる方であれば、青の「給与・年金の方」を選択し、所得の種類選択は「給与のみ」を選択します。

給与所得の内容等選択ですが、今回のように年末調整で申告できなかったものを追加する場合は、どれを選択しても問題はありません。
「給与の支払者(勤務先)は1か所のみである」「年末調整済みである」を選択すると、もう1つ画面が現れます。

適用を受ける控除の選択では、左下の「上記以外の控除の追加・変更」を選択します。
源泉徴収票をもとに給与所得を入力
収入・所得金額の入力では、給与の「入力する」を選択します。

この入力のために、源泉徴収票が必要です。

源泉徴収票の入力が「年末調整済み」と「年末調整済みでない」に分かれていますが、通常は「年末調整済み」のほうを選択します。
ただ今回の事例のように、社会保険料控除以外の所得控除を申告していない場合は、「年末調整済みでない」ほうが入力項目は少ないです。

画面に従って給与年収額・源泉徴収税額・社会保険料控除額・勤務先情報・その他の情報を入力します。
PC版は画面の右側に源泉徴収票の見本があるため、こちらに従って数値を転記すれば大丈夫です。
iDeCoの情報を入力
続いて重要なiDeCo掛金情報の入力です。

所得控除の入力画面では、「小規模企業共済等掛金控除」の「入力する」を選択します。

小規模企業共済等掛金払込証明書の「合計金額」[46,000]を中央の段に入力します。
還付額確認・口座入力
この確定申告の手続きにより、毎月の給与から徴収された所得税の一部が還付されます。

年末調整の手続きにより12月分の手取りが増えるはずだったものが、ここで還付されるので還付額は確認しておきましょう。
手書きの申告書を使うなら所得税の仕組みを知る必要もありますが、確定申告書等作成コーナーでは、上記の手続きが終われば還付額は自動計算されます。
この事例ではiDeCo掛金4万6,000円のおよそ10%強である4,695円が還付されます。
10%はこの事例での所得税率ですが、課税所得により税率は異なります。


下記の画面では、還付金の振込口座を入力します。

なお、国庫金の取り扱いをしていないネットバンキングは利用できませんので注意してください。
マイナンバー入力

マイナンバーは扶養親族等がいる場合は、本人以外の分も記載が必要です。
申告書に手書きでも構いませんが、正しく入力しているかのチェックも行われるため、この段階で入力しておいた方がいいでしょう。
確定申告書の提出手続

PDFで、確定申告書の提出用・控用が出力されます。

PDFを印刷し、第一表右上の押印欄に捺印(実印や銀行印以外の認印でも可能)をして、税務署に提出します。

添付書類のチェックリストも表示されるため、漏れが無いよう添付しましょう。
他人のマイナンバーを記載していないかの確認のため、本人確認書類の添付も必要です。
窓口提出のほか、郵送でも可能です。還付金をもらう確定申告であれば、3月15日の申告期限(令和2年は土曜日のため、17日月曜が期限)にこだわらず、5年間提出できます。
ただし令和元年分の確定申告に基づいて令和2年5月には、令和2年6月~令和3年5月に給与から天引きされる住民税が決定されるため、なるべく4月中盤までには出した方が良いでしょう。
また万が一勤務先が年末調整で所得税を過少に計算していた場合は、還付でなく納税になる可能性もわずかながらあるため、計算結果の確認画面までは期限内に行うのが望ましいです。
年末調整の手続
以前は年1回12月払いのケースですと年末調整で対応できなかったのですが、平成30年からは小規模企業共済等掛金払込証明書を10月に送ってくれるようになり、年末調整に間に合うようになりました。
令和2年以降には可能な、年末調整の手続きを説明します。令和2年分から年末調整用のソフトウェアが国税庁から提供される予定ですが、勤務先が対応してないと従業員は使えないので、従来型の手書き申告書について説明します。


小規模企業共済等掛金払込証明書を添付するとともに、保険料控除申告書に1か所記入すればよいだけです。
確定申告で入力対象とした合計金額を「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」欄に記載します。
年末調整での申告により、掛金年額27.6万円の10%にあたる2.8万円程度が年末調整の還付金となります。
給与明細の「過不足税額」は通常還付金を意味するので、令和元年以前より2.8万円程度増えているかを確認するとよいでしょう。(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)