2020年2月25日、野村アセットマネジメントは「信託報酬率0%」という投資信託を新規設定すると発表しました。
投資信託は、ここ数年低コスト化が進んでいましたが、信託報酬率0%というのは本記事執筆時点で業界最低の水準です。
今回はこの新しい投資信託「野村スリーゼロ先進国株式投信」について解説します。

目次
投資信託にかかる手数料とは
投資信託とは、投資家から集めたお金を運用の専門家に託し、株式や債券などに投資をして、その利益を分配するという仕組みの金融商品です。
商品の性質上、投資信託には主に次の3つの手数料(コスト)がかかります。
1. 購入手数料
投資信託の購入時にかかる手数料です。
ネット証券で販売されているものを中心に、この購入時手数料がかからないノーロード投信が増えてきています。
2. 信託財産留保額
解約時にかかる手数料です。
「基準価額に対して〇%」という形で、換金時に差し引かれます。
信託財産留保額がかからない投資信託も多くあります。
3. 信託報酬(運用管理費用)
投資信託を運用・管理するために必要な費用のことです。
信託報酬は、投資信託の財産の中から日々引かれていて、運用会社・販売会社・信託銀行にそれぞれ支払われます。
投資信託を保有する限り払い続けるお金ですから、この額の大小によって投資で得られるリターンは大きく変化します。
【野村スリーゼロ先進国株式投信は3つの手数料が0円】

野村スリーゼロ先進国株式投信の最大の特徴は、何と言っても上述した3つの手数料が「0円」という点です。
購入時手数料・信託財産留保額はかかりません。
信託報酬率は2020年3月16日~2030年12月31日まで0%です。
なぜ個人投資家が注目するのか
これまでも、購入時手数料や信託財産留保額がかからない投資信託は数多くありました。
しかし、信託報酬率0%というのは破格の設定です。
信託報酬は、一般的に年0.5~2%ほどのものが多く、これだけ見ると大きな額には見えないかもしれません。
しかし、例えば投資金額が100万円で信託報酬が年1%だった場合、単純計算で年間1万円が信託報酬として差し引かれる計算になります。
思いのほか侮れない額ではないでしょうか。
これが長期投資になれば、さらにお金がかかります。
運用成績に多大な影響を及ぼす信託報酬率が0%というのは、個人投資家にとって非常に大きなメリットなのです。
野村スリーゼロ先進国株式投信の注意点

インパクトの強い野村スリーゼロ先進国株式投信ですが、いくつか注意しておきたい点もあります。
1. 野村證券で購入する必要がある
野村スリーゼロ先進国株式投信は、野村證券から主につみたて投資向けの商品として販売されます。
野村證券のオンラインサービスからの申し込み限定となるため、購入にあたっては、野村證券に口座を開く必要があります。
2. 信託報酬率0%は10年間の限定措置
信託報酬率が0%となるのは、2020年3月16日~2030年12月31日までの10年間です。
その後の信託報酬率は0.1%以内の率となる予定ですが、例えばeMAXIS Slim 先進国株式インデックスの信託報酬率は0.093%以内と、これを下回ります。
10年後の信託報酬率がどうなるかは、注視しておく必要があるでしょう。
3. 実質コストは不明
購入時手数料・信託財産留保額・信託報酬は0円ですが、投資信託にはそれ以外にもコストがかかります。
その他の費用とは、以下のようなものです。
・ 外貨建資産の保管等に要する費用
・ 監査法人等に支払うファンドの監査にかかわる費用
・ ファンドに関する租税 等
第1期の販売ではこのコストが不明なため、「信託報酬率は0%だけれど、実質コストが意外とかかった」ということも、あり得ないとは言い切れません。
「信託報酬率0%」はつみたてNISAの強い味方
注意点はあるものの、「信託報酬率0%」の価値は高く、積立投資を行う方にとっては、十分に検討に値する商品ではないかと思います。
投資信託の手数料をできるだけ安くおさえたいと思っている方は、ぜひパンフレットなどで商品内容を確認してみてください。(執筆者:AFP、2級FP技能士 青海 光)