※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

不動産投資の自己責任 「シェアハウス」と「サブリース」から考える

投資 不動産投資
不動産投資の自己責任 「シェアハウス」と「サブリース」から考える

銀行員が気になる2つのニュース

1つ目:シェアハウス、借金帳消し

シェアハウスへの不動産投資で、不正融資の責任を問われたスルガ銀行と、シェアハウスオーナーとのあいだで画期的な解決方法を実施

2つ目:「サブリース」規制

シェアハウス問題の原因でもある「サブリース」を規制する法案が成立する見通し

いずれも不動産投資に関する大きな転機とも言えます。

そこで今回は、不動産投資も含めた「投資」と「自己責任」について銀行員の私が説明したいと思います。

「投資では、どこまでが自己責任なのか?」を考えるきっかけにしてください。

最近の気になるニュース

1つ目:シェアハウス、借金帳消し

シェアハウスの不動産投資に関する大きな動きです。

ニュースに沿ってこれまでの経緯を振り返り、どのような解決が図られているのかを解説していきます。

スルガ銀行がシェアハウスを手放せば借金帳消しにすると発表し、東京地裁に民事調停を申し立てていた257人を対象にしました。

土地と建物の物納を条件に借金を帳消し、一連の不正融資となったシェアハウス問題に区切りをつけようとしています。

参照:日本経済新聞

記事を解説

シェアハウスの不正融資ではスルガ銀行の融資審査や業務運営に問題があるとして、平成30年10月~平成31年4月までの期間、新規の投資用不動産融資を停止するという業務停止命令などの行政処分がくだされました。

その後、「不正融資だから債務を棒引きにしろ」というオーナー側とスルガ銀行の間で争われた焦点が「自己責任」です。

不動産投資も投資だから、投資した側にも自己責任があるという点です。

その後調停がおこなわれ、下記スキームで借金が「帳消し」される、とされました。

シェアハウスの借金を帳消しにするスキーム

1. スルガ銀行がローン債権(シェアハウス融資の残額)を第三者に売却

2. オーナーはシェアハウス現物(土地、建物)を「実勢価格(相場)」で第三者に譲渡

3. シェアハウス現物(2) はローン債権(1) に足りないが、不足額はスルガ銀行が「解決金」といった名目でオーナーに支払い、オーナーは解決金を第三者に支払う

4. (1) ~(3) により、シェアハウス現物を差し出す代わりに借金が帳消しになる

5. 解決金で補填されることで、オーナーには余分な税金は発生しない見通し

例:(1)ローン残高1億円 (2)物件の実勢価格5,000万円

スルガ銀行のローン1億円を肩代わりしてくれた第三者に、その代わりとしてシェアハウスを物納したけど(代物弁済)5,000万円不足しています。

このままだと、1億円の借金を5,000万円の不動産でチャラにしてもらったことになり、自分が5,000万円得するから税金がかかります

なんとか不足する5,000万円を準備しなければと悩んでいたら、自分の非を認めたスルガ銀行が解決金5,000万円を払ってくれたので、そのまま第三者に渡して税金もかからずに済みました

ポイントは「解決金」

名目は微妙ですが、銀行が自分の非を認めたことになり、これが非常に画期的なことです。

スルガ銀行によるシェアハウス不正融資を、時系列で振り返って見ましょう。

1. 株式会社スマートデイズは、敷金・礼金不要の女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」首都圏で約900棟展開していた。

2. 「家賃0円・空室有でも儲かる不動産投資」と宣伝し、個人投資家が購入したシェアハウスを「サブリース(物件を一括で借り上げ、入居状況に関係なく一定の家賃を保証する、いわゆる家賃保証)」(物件を一括で借り上げ、入居状況に関係なく一定の家賃を保証する、いわゆる家賃保証)の形態を取っていた。

3. 投資家は約700名で、大半が多額の購入資金をスルガ銀行から融資を受けた。彼らは長期の賃料収入が保証され、多額なローンも返せると判断して、1棟あたり数千万円から数億円という、実際には割高な価格で物件を購入した。

4. その後ブームによる過剰供給などで入居率が低迷し、契約でオーナーに保証された家賃は2017年10月頃から滞りはじめ、2018年1月支払いがストップ

5. そして2018年4月、スマートデイズは民事再生法の適用を申請し、破綻した

ローン、特に不動産投資向けローンに特化して高収益を稼ぐスルガ銀行は当時の森金融庁長官からも「他行に先駆けてニッチな分野を開拓し、収益を上げている地方銀行の新たなビジネスモデル」と称賛されたように、脚光を浴びる存在でした。

しかし、そうした輝かしい成果も、実は虚飾に満ちたものでした。

スルガ銀行の問題点1:融資に関する不正行為

スルガ銀行の問題点

スルガ銀行は、

家賃収入を基準にシェアハウスを担保評価

していました。

それを知っている不動産関連業者が、新築物件の賃料や入居率をわざと高めに想定した資料を作り、入居済み物件の家賃を実際より多く改ざんすることで、不動産担保の評価を不正につり上げ、結果として多額の融資が実行されました。

また業者だけでなく、複数の銀行員がこうした不正行為を明確に認識していながら、あるいは少なくとも疑いを持ちながら、目をつぶっていました。

なかには業者に不正を指示した銀行員や、自ら資料を改ざんした銀行員もいました。

資料改ざんの具体例

自己資金のない申込者の預金通帳の残高を改ざんした

申込者の口座へ自己資金に見せかける資金を一時的に振り込み「見せ金」とした

審査で年収基準を満たすように、申込者の年収資料を改ざんした

担保評価をつり上げるため、売買契約書や工事請負契約書を二重(銀行提出用と本当の契約書)作成した

スルガ銀行の問題点2:顧客の利益を害する業務運営

スルガ銀行では、シェアハウス向け融資を含めた投資用不動産融資を実行するときに、融資の条件としてカードローンや定期預金、保険商品などさまざまな商品を抱き合わせ販売していました。

抱き合わせは銀行法の違反行為です。

もちろん提案話法も巧妙で、必ずしもあからさまに「契約しなければ融資しない」と言ったわけではありませんが(ズバリそう言った銀行員もいたそうです!)、融資を受けたい申込者からすれば断わることはできないでしょうし、また銀行員もそれを見透かして勧誘した悪質なものです。

参照:金融庁「スルガ銀行株式会社に対する行政処分について

2つ目:「サブリース」規制

「サブリース」とは、マンションなどを業者が借り上げて転貸することで、契約トラブルを防ぐために業者を規制する新法案が6日に閣議決定しました。

・ 業者の国への登録義務化

・ 「絶対に損はしない」「20年間の家賃保証」などといった不当な勧誘を禁じる

という内容で、今の国会で成立したら来年の夏までに施行される予定です。

参照:毎日新聞

記事を解説

サブリースをエサに詐欺まがいの勧誘で不動産投資を持ちかける悪徳業者を取り締まるための法律が制定される見通し、という内容です。

まだ可決前ですが、悪質業者相手なだけに以下のような問題点をはらんでいると考えられます。

・ もともと悪質業者なので、どこまで有効か疑問

・ 摘発されても別の名前で復活されれば「いたちごっこ」

・ まっとうな不動産投資を抑制してしまう弊害も懸念される

シェアハウスと不正融資を発端にした法制定ですが、まだまだ課題が残されているようです。

投資と自己責任の境界線について

投資の自己責任について

不動産投資も「投資」と名の付くように投資の一手段です。

これまで、アパートなどの賃貸不動産は資産家などが、相続税対策として建てるのが主流で「投資」ではありませんでした。

また融資をする銀行も、不動産で投資しても儲からないという先入観から長く不動産投資への融資には消極的でした。

しかし時代も変わり、今ではサラリーマンがマンションに投資するため銀行から融資を受ける、といったように「手軽に」不動産投資をするようになっています。

銀行でも不動産投資に対する考え方が変わり、ローンの大黒柱として営業の主流と位置づけていて、その行き過ぎた結果がスルガ銀行のケースとも言えます。

自己責任はどう考えるべきか

不動産投資も投資なら自己責任はどう考えるべきでしょう?

「不動産投資も投資である以上、成否すべてが自己責任」

「自分の判断が甘く投資に失敗することもあれば、予想以上の良い物件に巡り会えて、想定外に儲かる幸運もある。すべては運と自己責任」

「そうした意味で、だまされるのも判断が甘かった自己責任と甘んじて受けるべき」

投資と銘打つ以上、成否はすべて自己責任だと思います。

それが詐欺まがい、あるいは詐欺だったとしても、やはり自己責任で負うべきリスクだと思います。

たとえば霊感商法やオレオレ詐欺などで、詐欺の被害者を誰かが金銭的に補填してくれたことがあるでしょうか?

犯罪被害は同情すべきでことですが、けっして誰も助けてくれません。それはシェアハウス問題も同じだと考えます。

スルガ銀行の件は難しい

今回のスルガ銀行の件については、自己責任だけで判ずることはむずかしいとも思います。

なぜなら「銀行が詐欺の片棒を担いでい」からです。

不正融資に関する第三者委員会報告などで、一部の銀行員が融資実行の見返りで飲食の供応を受けたり、出張費の業者立替えなどの名目で「キックバック」を受け取ったりしていた事実があります。

一部の人間がしたことですが、銀行という看板を背負っているからこそできた悪事であり、またパワハラなど企業風土が引き起こしたのであれば、銀行自体の非はあると思います。

今回のことをきっかけに、みなさんの中でも

「銀行も悪いことをする場合がある、だから付合い方に注意」

という教訓で、自己防衛が強化されたらよいと感じます。

しかしそれは同業者として悲しいことで、銀行は公共的であり、金融庁の言う「お客様本位の営業」をするべきだと思います。

今回の法が施行され、被害者が減ることを願います。(執筆者:加藤 隆二)

《加藤 隆二》
この記事は役に立ちましたか?
+0

関連タグ

加藤 隆二

執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集