少子高齢化社会である今、親の介護のために帰省をしたり、職場を一定期間休んで介護にあたらなければならないという人が多くなっています。
働きながら親の介護をするという状況は時間的、身体的、そして金銭的になかなか過酷なものです。
介護を理由に退職するというケースは最終手段であり、ほとんどの場合は有給休暇や介護休暇を活用することになるでしょう。
介護離職ゼロに向けた対策は、今後も強化されていくと予想されます。
今回は、介護するために長い休暇が必要になった時に役立つ情報として、「介護休業給付金制度」についてお知らせします。
目次
介護休業給付金取得の条件

介護休業給付金は、労働者が家族介護をする際に、金銭的負担を軽減し休業しやすくするということを目的としている給付金制度です。
介護休業は、介護休暇とは異なり、家族介護のために93日まで仕事を休める制度です。
ただし、その間は無給ですので、介護休業給付金の利用をおすすめします。
介護休業給付金の取得条件は以下の通りです。
・ 介護の対象家族は「配偶者・父母・子・配偶者の父母や同居しかつ扶養している祖父母や兄弟姉妹、孫」であること
・ 職場復帰を前提として家族を介護するために介護休業を取得する場合
・ 介護休業開始日の前、1年以上同事業主の下で勤務している方
・ 介護休業開始前2年間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12か月あること
支給額算出方法
介護休業給付金の支給額は、次の計算式で算出されます。
※1:介護休業開始前の6ヵ月間の総支給額 ÷ 180
※2:支給日数は原則30日
介護休業開始前の給与の平均月額が20万円の場合の、計算例を見てみましょう。
この場合、約13.4万円が支給されます。
申請方法

申請は、事業主を通じて行います。
本人が希望する場合は、本人自身が申請手続きを行うことも可能です。
いずれの場合も、在職中の事業所を管轄するハローワークが提出先です。
必要な申請書類は以下の通りです。
・ 本人が事業主に提出した介護休業に関する届け出書
・ 住民票など、介護対象者との続柄などが証明できる書類
・ タイムカード・出勤簿など、介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類
申請と支給のタイミング
申請は、介護休業が終わった後に行います。
支給が決定すれば約1週間で振り込まれます。
「介護休暇」とは何が違うのか
最後に、今回紹介した「介護休業」と、混乱しやすい「介護休暇」について押さえておきましょう。
似ていますが2つは異なる制度です。
介護休暇は、要介護状態にある家族の介護をする労働者に対して与えられる休暇で、1年間で5日間取得可能です。
要介護状態にあるか家族が2人以上の場合は、10日を上限として取得できます。
・ 介護休業:通算93日の休暇取得が可能
という違いがあり、取得日数では介護休業が有利と言えます。
ただし、介護休業中は介護休暇とは異なり無給状態なので、後に介護休業給付金を申請しないと、収入面での問題をクリアできません。
ここが覚えておきたいポイントです。
介護休業給付金を活用しよう
介護休業は、対象となる家族の介護のために93日まで休める便利な制度です。
しかし、93日も仕事を休んでしまうと金銭的な不安が生じてしまいます。
今回紹介した介護休業給付金を利用すると、休業前の給与の約70%が支給されます。
介護休業給付金は、会社を休んでも給与の一部を受け取れるので、介護休業を取得しやすいというメリットがあると言えます。
給付を得るには制度の理解と手続きの手間が生じますが、介護休業給付金は事業所を通じて手続きができるので、活用しない手はありませんね。(執筆者:老人ホーム施設長 佐々木 政子)