有料老人ホームへの支払いができなくなった時、どうなるのでしょうか。
筆者は有料老人ホームの運営会社で10年以上働いており、このようなケースに立ち会うこともありました。
その経験から、支払いが滞った時の対応や、事前に行うべきことをお伝えします。
目次
有料老人ホームへの支払いが滞った時

有料老人ホーム(以下、ホーム)へ費用の支払いができなくなった時は、契約に基づいて退去を求める流れになります。
ただし既に入居中の高齢者を追い出すわけにもいかないため、しっかりと手順を踏む必要はあります。
支払いが滞った時の流れ
2. 未払いが続く場合は契約解除となる。
3. 話し合いで退去時期や保証人がやることを決める。
4. 決まらない場合は弁護士の介入や裁判になる。
契約書の中に「〇か月の未払いで契約解除とする」という文言が入っているため、確認したほうがよいでしょう。
多くの場合、話し合いで転居先や支払い方法の取り決めを行います。
裁判まで行くのは極少数です。
契約解除の場合、入居者はどうなるのか
先ほども述べたように、滞納で契約解除になったとしても、行先のない入居者を追い出せません。
ただその際、サービスに関してはある程度制限を受ける可能性はあります。
一般的には、食事の提供、日常生活の支援はそのまま継続して受けられます。
命に関わるような処遇に追いやられることはないでしょう。
その一方で、参加費や利用料が発生するものは制限されます。
例えば、ホームで行うアクティビティや散髪といった、オプション的なサービスは受けられません。
有料老人ホームによって、「何をやって何をしないか」という判断は違ってくる可能性はあります。
しかし、最も不憫(ふびん)なのは入居している高齢者です。
1人だけアクティビティに参加出来ないなど、肩身の狭い立場にならざるを得ません。
当事者にとって不幸な状況になるのは変わらないので、支払いは滞る前に相談すべきです。
支払いができなくなる前に相談

筆者が「滞納による退去」を対応してきた印象は、関係者全員がとても大変という感想です。
契約解除の場合、
・ 保証人との連絡
・ 退去日や退去先の調整
・ 未払い金の支払い方法の確約
など、やることがたくさんあります。
そして退去日が遅くなるほど、未払いの利用料が増えることになり、保証人へ請求する金額もさらに増えていくのです。
短い期間でこれらのことを行うには、保証人や入居者にとって精神的に大きな負担です。
そうならないために、支払いが難しいと感じた時は、早めにホームへ相談することをお勧めします。
事前に相談して時間の余裕を作る
支払いが出来なくなってからホームに伝えるのではなく、事前に支払いが厳しいことを相談しておけば「準備する時間」を持てます。
貯金・年金状態をホームに相談することで、期限を決めて逆にスケジュールを立てられるのです。
体験談「2年程度で資金が底をつく」
筆者の経験談ですが、あと2年程度で資金がなくなるという相談を受けました。
この方は身寄りがなく、親族からの支援を受けられません。
しかし、事前に相談を受けたことで役所や地域包括にも相談し、転居先の選定・生活保護の申請を良いタイミングで行えました。
本人には必要最低限だけ動いてもらいましたが、周囲のサポートによって今後も安心して生活できる状況を作れました。
お金の問題を相談しておくメリット

・ 特別養護老人ホームや老人健康保険施設への転居などさまざまな計画を立てられる。
・ 世帯分離や生活保護のタイミングを検討する時間がある。
とにかく、時間に余裕を持てるという点が1番大きなメリットです。
保証人にとっても、契約の解除や退去手続きは何かと労力を使います。
しっかりと計画立てて行った方が良いでしょう。
お金の心配は隠さずホームと相談しよう
最後に、お金のことをホームに相談するのは悪い事ではありません。
恥ずかしいと思うかもしれませんが、後になって発覚するよりも、先に伝えておいたほうが断然良い結果につながります。
また介護に関わる人間で、ご入居者に不幸になってほしいと考える人はいません。
たとえ住む環境が変わっても、高齢者がより良い生活になることを祈っています。
そのためにも、お金の心配はホームとしっかり相談しておくことをお勧めします。(執筆者:小原 しろう)