外貨を保有することは、選択肢の幅を広げることにつながります。
例えば米ドルを保有していれば、米ドル建債券、米国株式、米ドル建て投資信託、米ドル建て保険などに投資できるばかりか、金額によっては海外不動産に投資を行えます。
外貨は将来の子どもの留学資金として利用できますし、老後に海外生活を満喫される際にも役立ちます。
外貨は、もし日本が激しいインフレに見舞われた際に資産を守る効果もあると言われています。
インフレで円の価値が暴落した際、相対的に外貨が円に対して値上がりするためです。
しかし、円安の時に外貨を購入してしまい、円高になり含み損を抱えてしまったという方も少なくないのではないでしょうか。
このコラムでは、外貨を購入する際の合理的な方法を注意点も合わせてご紹介します。

目次
外貨を買う前に、20~30年チャートを見ること
外貨を買う前には、できれば30年以上、少なくとも2000年頃からの20年程度のチャートを見ることが大切です。
これは5年や10年程度のチャートでは十分に過去のリスクを把握できないからです。
例えば米ドル/円の為替チャート見ると、30年間の中で5回程度、大きな円高のトレンドが起きています。
そのうち3回は100円前後の価格を底に円安トレンドに戻ったものの、2回(1995年と2011年)は80円を一時的に割れる程の円高になりました。
高値圏は
1998年の140円台
2002年の130円台
2007年と2015年の120円台
と徐々にピークが下がってきています。
比較的投資先として人気が高い豪ドルは、30年のチャートを見ると、1990年に122円をつけた後は、60円前後までの円高が4回(1995年、2000年、2009年、2020年)100円前後までの円安が4回(1997年、2007年、2013年、2014年)生じています。
新興国の通貨に関しては、トルコリラ、ブラジルレアル、アフリカランドなどは、10年程度のチャートを見るだけでも円高のトレンドであることが確認できます。
このことから、外貨に関しては、長期で見ると円安トレンドとは言えません。
NYダウやナスダック総合指数のような長期的に高値を更新している株価指数への投資などとは異なり、高値圏で購入をすると含み損を抱える期間が長くなる可能性が高いと言えます。
ちなみに、証券会社などのウェブサイトで閲覧できる為替チャートは10年程度 が限界のケースが多いです。
現状Trading View等のチャート分析のサービスは米ドル/円は30年チャート、豪ドル/円は20年程度の期間までのチャートは閲覧可能となっているようです。
2020年5月25日時点
割高な価格を避けて外貨を購入する方法 回数を分ける
では、外貨を割高な価格を避けて買うにはどうしたら良いのでしょうか。
1つの方法が「回数を分ける」という方法です。
例えば、米ドルの1990年5月5日~2020年5月5日までの平均値は約107円になります(筆者調査データによる計算、小数点以下切り上げ)。
毎日同じ額ずつの米ドルを購入していれば、平均購入単価は30年間で107円程度になる、という計算になります。
金利分を含めれば、十分に運用益になっています。
例えば「毎日1,000円分ずつ米ドルを買う」のように、円の金額を固定すれば、円安の時には少ない数量しか買えず、円高の時には、多くの数量が買えるので、平均購入単価は、期間の単純平均よりも安くなる傾向があります。
回数を分けて買う例
米ドル100円の時に1,000円分の米ドルを購入すると10ドル買える。
米ドル80円の時に1,000円分の米ドルを購入すると、12.5ドル買える。
2回の平均購入単価は2,000円 ÷ 22.5ドルで88.89円となります。
100円と80円の平均値である90円より少し平均単価を抑えられます。
もし、留学資金のようにまとまった金額の外貨が必要な場合でも慌てずに何回かに分けて購入することで、不利な価格で購入することを避けられます。
ターゲットの価格をじっくり待つ
先述した20年~30年のチャートを見てじっくりとチャンスを待つのも1つの戦略です。
しかし、「米ドルを80円で購入したい」と希望してもその時がいつ来るかわかりません。
そのような場合は、105円、100円、90円、80円のようにターゲットとする価格を今に近い数値から順に定めておいて、回数を分けて購入することが有効です。
「米ドル80円で一本釣り」といきたいところですが、現実感のない価格を待ちながら為替のマーケットの観察を続けるのは大変退屈な作業になります。
だんだんと為替チャートを見る習慣がなくなり、別の投資に資金を使ってしまう、もしくは絶好のタイミングを見逃してしまうということも有り得ます。
タイミングを待つ場合は、現実的な数字をターゲットにしながら緊張感を継続できるようにすることがお勧めです。

仕組み預金の活用
「外貨を買おうと思っているが、せめて今より2、3円程度円高になったら外貨を購入したい」という希望の方は多いと思います。
しかし、円高を待っている間に数か月の期間が過ぎてしまうことは良くあります。
まとまった金額で円資金を低金利で寝かしておくことを嫌う方にとっては「仕組み預金」は有効です。
運用商品について調べたことがある方は「仕組み系商品は危ない」と聞かれたことがあるかもしれません。
しかし、仕組み預金は、うまく使えば外貨を指定の価格で購入したいという希望をかなえてくれる場合があります。
*仕組み債とは異なります。
仕組み預金の多くは、
という条件になっているものが一般的です。
外貨の購入希望がない人が、金利を求めるために取り組むのはお勧めできませんが、「円高の時に外貨を購入したい」という人にとっては、1つの選択肢となります。
ただ、仕組み預金にも種類があり、私が推奨している仕組み預金は
という条件を満たしているものになります。
仕組み預金の中には、「外貨を購入する場合の為替レートが、仕組み預金スタート時の為替レートと同値」となっているものも見受けます。
これでは、「今よりも円高の時に外貨を購入したい。」という希望はかなえられないため、金利以外のメリットはほとんどありません。
ほとんどの仕組み預金が「中途解約不可」となっているため、金額を大きくしすぎると、他の投資対象へのチャンス逸することにもなります。
仕組み預金は、外貨の購入方法を分散する際の1つの選択肢程度に考えておくと良いでしょう。
仕組み預金は、現在インターネット銀行でも取り扱いがありますが、仕組みが複雑であるため対面型の銀行での取引がお勧めです。
現状だとSMBC信託銀行(元シティバンク)、オーストラリア・ニュージーランド銀行、新生銀行では取り扱いがあるようです。
過去、香港上海銀行でも取り扱っていましたが、日本のサービスを終了してしまいました。
目的を見据えて購入を検討しよう
ほどんどの外貨は長期の為替チャートをご覧いただければ分かる通り、決して円安トレンドが続いているとは言えません。
短期の為替の変動だけでリターンを望むならFX取引も有効ですが、タイミングを間違えると途方もない塩漬け期間が生じる可能性があります。
外貨を保有する場合、海外資産の購入や、留学、移住、インフレ対策など、外貨購入の先にある目的を見据えて購入を検討しましょう。(執筆者:遠藤 功二)