すべての国民に1人10万円が支給される特別定額給付金の申請・支給が多くの自治体で始まっています。
既に10万円を受け取った方も少なくないでしょう。
しかし、この10万円給付金は世帯主の口座に家族全員の分がまとめて振り込まれるという仕組みになっています。
そのため、家族分の給付金を世帯主が一人占めしてしまい、家族が受け取れないというトラブルが発生しています。
国民1人1人が10万円ずつ受け取れると思っていたのに世帯主が一人占めしようとする場合、家族はどうすればいいのでしょうか。

目次
受給権は全額、世帯主にある
家族としては、世帯主が自分の10万円をどのように使おうが文句は言えないとしても、家族の分はそれぞれ渡してほしいところです。
全額が自分のものだという世帯主と、家族は1人1人が10万円ずつもらえるはずだといいます。
法律的にはどちらの言い分が正しいのでしょうか。
実は、総務省のホームページを見ると、家族の分も含めて全額の受給権は世帯主にあるとされています。
参照:総務省
さらに、10万円給付金の目的として「家計への支援」とうたわれています。
ということは、家族の人数に応じた給付金を世帯主が受け取り、家計のために使うというのが10万円給付金の性質ということになります。
結論として、家族から世帯主に対して、1人1人に10万円ずつを分配するように請求する権利はなく、世帯主の言い分の方が正しいということになります。
裁判で世帯主に返還を請求することは可能か
形式的には世帯主に受給権があるとはいっても、それは支給を迅速に行うための手続きな理由に過ぎないと考えれば、実質的には1人1人に受給権があるという解釈も成り立ちます。
では、家族が裁判を起こして世帯主から給付金の返還を請求することは可能でしょうか。
この点については裁判例もないので私見になりますが、難しいであろうと考えます。
制度の目的が「1人1人に分配する」ものではなく、「家計への支援」とされているからです。
世帯主が給付金を家計のために適切に使ったかどうかが問われはしても、家族1人1人に民事上の返還請求権を認めることは難しいと考えられます。
結局は家族で話し合うしかない

では、家族としてはどうすればいいのかというと、残念ながら世帯主と話し合うしか方法はないでしょう。
制度の目的が「家計への支援」なのですから、給付金を家計のためにどう使うのがベストなのかを家族で話し合うしかないのです。
世帯主が家計のために作った借金の返済に全額を充てるというのであれば、それがベストなのかもしれません。
全額を貯金すると世帯主が言えば、それがベストだと言えないこともないでしょう。
世帯主が家族の要望に耳を貸さずに給付金を浪費した場合は、状況によっては妻は離婚の請求ができるかもしれません。
家族で十分に話し合うことこそが重要
この問題は、政府が世帯主の口座への振り込みが手続きとしてベストであると判断したことから発生したものです。
これが、国民1人1人に宛てて小切手を郵送する形であったら事情も異なりますが、その場合はまた別のトラブルが発生していたことでしょう。
コロナ禍で家計が苦しいときは、給付金の問題に限らず、家族で家計について十分に話し合うことこそが重要だという他ありません。(執筆者:川端 克成)