フリーランスの救済策にあたる持続化給付金の申請が、2020年5月1日に始まりました。
申請が開始する前には、添付書類である確定申告関係書類で申請を考えていた方たちに混乱が生じていたため、添付書類について解説いたしました。
【関連記事】:【コロナ支援】「持続化給付金」申請に必要な確定申告書類の注意点:電子申告(e-tax)のケースも解説します
持続化給付金は、簡単に言うと月収ベースでの減収を確認して補償しようというものです。
月別売上証明として信頼性ある書類に記載できるよう、今後でもいいので青色申告を行うことをお勧めします。
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目次
収支内訳書になく青色申告決算書にはある月別売上額欄
確定申告書の控は令和元年分の年間総収入金額を確認するために提出を求めるのですが、令和元年分の月別売上記載については、青色申告と白色申告で変わります。
いわゆる白色申告の事業所得者が確定申告書に添付する収支内訳書には、月別売上高の記載は求められません。
一方で青色申告決算書には、現金主義用でなければ月別売上額の記載欄があります。
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10万円の青色申告特別控除を受けるために必ずしも月別売上額の記載を必要としませんが、持続化給付金のように月額の売上高減少を確認するにあたっては、信頼性のある記載と言えます。
月別売上の記載で変わる「50%以上減」の判定
個人事業主の場合、青色申告を行っているか、また青色申告を行っていても月別売上高を決算書に記載しているかで、給付要件にあたる「前年同月比50%以上減」の判定方法が変わります。
提出する青色申告決算書に記載あり
この場合、2020年の任意の月と2019年の同月売上(青色申告決算書に記載したもの)を比較します。
記載なし・青色申告決算書添付なし・白色申告
月別売上が提出した確定申告書類から不明な場合は、2020年の任意の月と2019年の月平均売上を比較します。
青色申告者が利用できる季節性収入特例
売上の季節変動が大きい事業主に対しては、特定の3か月間の2020年売上と2019年売上(ただし、この期間が年間売上の50%以上を占める)を比較して50%減になった場合に給付が受けられます。
青色申告者で月別売上の記載がある決算書を提出した場合のみ、この特例を利用できます。
青色申告は減税にも給付にも役立つ
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青色申告は、特別控除その他で減税(所得税だけでなく、住民税や国民健康保険も含む)のメリットがとかく言われます。
特別控除額が大きくなるほど、青色申告決算書に詳しく書かないといけません。また2020年からの変更点もあります。
【関連記事】:自分の源泉徴収票や確定申告書を見て「2020年からの税制改正」を理解しよう(2)フリーランス編
月別売上のように記載しておいたものが、持続化給付金のような月収減の救済策で役立つことになります。
月別売上の記載が青色申告決算書に無いと、前年の月平均売上という実態と離れたものと比較するしかなくなり、困っていても救済されないことがありえます。
なお青色申告決算書の提出は、あくまでも任意です。また月別売上の記載が無いと、季節性収入特例が利用できません。
イギリスでは過去の確定申告結果に基づき、当面3カ月間所得の8割を給付することになりました。
【関連記事】:過去3年度の事業所得から支給額を決める英国のフリーランス救済策を日本の「日額4100円」と比較します
このイギリスの方式であればさほど手間のかかる申告をする必要がありませんが、残念ながら日本は煩雑な申請を必要とする方式になりました。
であれば申告書などに詳細を記録しておくことが、救済策を得るのに重要と考えられます。
白色でも事業所得者は記帳義務がある
平成26年分より、白色申告でも記帳が義務化されています。
持続化給付金は当初事業所得者でないと受けられなかったため、雑所得で申告したフリーランスから悲鳴があがっていました。
事業所得と雑所得の判定は一口には言えないところがあるのですが、記帳義務を果たしていないがために雑所得申告を促されたケースもあると推測しています(あくまでも推測です)。
雑所得で申告してしまうと、持続化給付金は6月中旬より対象となるものの、コロナの影響による国民健康保険や国民年金の保険料減免は受けられません。
【関連記事】:【コロナ支援】活用したい国民年金保険料免除の所得制限(1):令和2年所得見込みに基づく臨時特例
フリーランスとしてまず記帳する習慣を身につけ、青色申告で特典を受けると良いのです。
個別期限延長による青色申告承認申請書の提出可能
白色申告者が青色申告を行う場合は、受けたい年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。
ただし2020年(令和2年)から青色申告を行いたいのであれば、申請期限が延長されました。
新型コロナの影響でやむをえない事由により4月17日以降に白色の確定申告を行う場合、もしくは4月16日以前に白色の確定申告を行って、その後やむをえない事由により何も税務手続きを行っていない場合は、個別で申請期限延長が可能です。
余白に「新型コロナウィルスによる申告・納付期限延長申請」と記載することで、これからでも青色申告承認申請書を提出することが可能です。(執筆者:石谷 彰彦)