老後破産とは、実際に破産の申し立てをするかどうかにかかわらず、高齢者が貧困のために破産状態と同様の生活を余儀なくされることをいうのが一般的です。
そんな老後破産に陥ってしまった高齢者の中には、借金を抱えている方も多くいらっしゃいます。
借金がなければ年金で何とか生活できるのに、返済の負担で生活がままならないという方も多いです。
本記事では、高齢者が借金を放置するといったいどうなるのかを説明します。

目次
自己破産は容易でない
借金さえなくなれば生活できるというのであれば、自己破産することによって解決できます。
自己破産をするのに年齢制限はありません。
ただし、自己破産を申し立てる際には借り入れた経緯を具体的に説明しなければなりません。
高齢の方なら長年の複雑な事情を説明しなければならない場合も多いでしょうし、人によっては記憶が曖昧で説明できないこともあるでしょう。
それに、自己破産をするにも費用がかかります。
高齢の方が自分で自己破産を申し立てるのは大変でしょうから、通常は弁護士に依頼することになるでしょう。
弁護士費用は法テラスの民事扶助制度を利用しても、実費を含めると15万円以上はかかります。
年金暮らしの方にとっては小さな負担ではありません。
借金を放置しても問題ない
結論として高齢者の場合は、借金を放置しても問題ない場合が多いです。
持ち家がなく賃貸住まいで、預金も少なく、めぼしい財産がない方に限りますが、払いたくても払えない、差し押さえるものもない人に対しては債権者もどうしようもないのです。
数十年前なら債権者が自宅に取り立てに来て少額でも回収していくことがありましたが、今ではそのような取り立ては行われていません。
家具や家電などは換金価値がほとんどないため、差押えは行われません。
年金も、税金を滞納した場合を除いて差押えが禁止されています。
債権者からの電話や手紙は来ますが、放置しておけばやがてあまり来なくなります。
そして、5年間支払わなければ、借金は時効で消滅します。
借金を踏み倒すことをおすすめするわけでは決してありませんが、最低限必要な生活費を削ってまで借金を返済するのも良いことではありません。
あくまでも、財産のない高齢者が借金を放置した場合の顛末としてご理解ください。

借金の相続には要注意
本来は自己破産をして借金を解決しておくべきですが、実際には払えない借金を抱えたまま老後を過ごす方も多いはずです。
その場合、借金は相続人に相続されることには注意が必要です。
5年の消滅時効にかかっている場合も、時効を援用しなければ返済義務は消滅しないため、時効によって引き継がれてしまいます。
借金を相続させないためには、相続開始後3か月以内に相続人から相続放棄の手続きをする必要があります。
被相続人としては、早めに借金のことを身内の方に話しておくか、エンディングノートに書いて相続人にわかるようにしておくことが大切です。
自己破産を申し立てる方が安心して暮らせます
本記事では、高齢者が借金を放置した場合のいきさつをお話ししました。
やがて借金を消滅させることが可能だとはいえ、しばらくの間は債権者からの電話による催促が続きます。
それが精神的な負担となることは避けられないでしょう。
頼れる身内がいる方は、弁護士費用を用立ててもらって自己破産を申し立てる方が安心して暮らせるでしょう。(執筆者:川端 克成)