お金の話題は、親族間でさえもデリケートな話しです。
特に親が高齢になったり持病があったりすると、必要性が高まるにもかかわらず、死ぬのを待っているかのように思われるのが嫌で、つい話すのをためらってしまいます。
どのように切り出すのが良いのでしょうか。

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相続裁判の1/3は「1,000万以下の財産」をめぐって起きる
親からすると、
と気楽に構えているのかもしれません。
しかし、平成30年度司法統計によると、
紛争は額の問題ではありません。

認知症で口座凍結、子供は引き出せない
死後のことは自分に無関係だとしても、老後については考えておかないと自分に降りかかってきます。
認知症などで判断能力が低下すると、預貯金の口座は凍結され、生活費すらおろせなくなります。
家族であっても代理人になれません。
子が親のために施設入所を考えたとしても、費用を捻出するために親名義の家を勝手に売ることはできません。
他にまとまったお金がないと、万事休すとなるおそれがあります。
そうなると法定後見人をつけるしかないのですが、制度の運用が多少変わってもまだ親族が後見人に選任されることは難しく、第三者がなればそこに報酬が必ず発生し、それらは原則被後見人(親)の負担となるのです。
については、むしろ親が子と話し合っておかなければならないことです。
遺言や信託について親子一緒に学ぶ姿勢
日頃から親子、家族でのコミュニケーションが取れている家庭であれば、
・ 一緒に相続セミナーなどに出かける
などして、親に自然と興味を持ってもらえ、かつそれこそが最も有効な方法でもあります。
あらかじめ正しい知識を子が把握しておくことは必要ですが、それをひけらかしたり押し付けたりするのでなく、あくまでも一緒に学ぶという姿勢が大切です。
親の方から遺言や信託について助言を求められた時に頼れる「子」となりましょう。
親だけではなく、兄弟姉妹がいれば、必ず話を通します。
遺言は親の最後の意思表示です。
親が遺言書を書く決心をしたら、決して内容に口を出さないようにしましょう。
「親のために」であることを忘れず
一方、親と離れていてなかなか会えない、あるいはよく話す間柄ではない場合は、いきなり前述のような方法をとると金目当てかと疑われるかもしれません。
次にいつ話す機会があるか分からないからと、直球で攻めるのは禁物です。
なぜ遺言や信託の話をしたいのか、それはとりもなおさず
親のために話をする気持ちを常に持ち、
「調子はどうか」
と、こまめに連絡を入れましょう。
何も用事がなくても連絡が取り合える関係になれれば、前述のような話題が会話の中に自然に取り込めるようになるでしょう。

まずは信託の話から
信託(任意後見)は、遺言に比べると「死」と直接結びつかず、親自身の生活に関わってくるので切り出しやすいです。
「何か心配なことはない?」
と親に寄り添いつつ、提案できます。
信託に興味を持ってもらえれば、その後自分が亡き後その財産がどうなるか、すなわち相続についても自然と思いが巡るようになります。
そして信託や遺言はあくまでも解決方法の1つであり、それらに囚われ過ぎないことが大切です。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)