今回は、円高で推移する為替市場の動向と注目点について解説していきたいと思います。
目次
金融緩和が円高に影響

現在の為替市場では円高が定着しており、今年の7月31日は「1ドル = 104円台」と4か月ぶりの高値水準まで円高が進行しました。
米国が発表した4~6月GDPの値が記録的水準にまで悪化したことが原因と言われています。
その後は、予想を上回る米雇用統計値が発表されたことなどが原因で為替は106円台で推移していますが、依然として高い水準です。
米国の超金融緩和政策が原因であり、米国10年物国債利回りは現在ゼロ誘導されていることから、日米の金利差が縮小しました。
これにより、株などのリスク資産に資金がシフトする流れとなりましたが、日米では金融緩和の金額に大きな差があるため、市場の中心である米国資産が買われる展開となっています。
これにより、円が売られるのではなくドルが買われて円高が定着してしまっているのです。
新興国通貨にも影響を及ぼしており、コロナショックの影響により新興国は過去最低水準にまで金利を引き下げています。
この状態では金利が高いという新興国通貨が今まで買われてきたメリットが打ち消されてしまいます。
そのため、金利上昇局面もしくはコロナショックからの経済回復が望めない限りは厳しい状況となってしまっています。
ドル円の変動幅が縮小傾向にある
日米の金利差が縮小してしまったことにより円高が定着していますが、さらに重要なのが為替の変動幅が大幅に縮小してしまっていることです。
現状のドル円の為替変動幅は、コロナ感染者数増加や米中関係悪化の報道を受けてもそこまで大きくはブレなくなっています。
しかし、ここで注意しておかなければいけないのが、変動幅が縮小したからといって株式市場に全く影響がないわけではないということです。
変動幅が縮小したことにより、少ない変化により市場に与える影響(為替感応度)が拡大しているのです。
数か月間の状況から見ると、ドル円が50銭ほど円安に進むと米国株高、50銭円高になると米国株安となる傾向が何度も見受けられます。
通常であれば、数円の値動きで起こるはずの株価の変動がわずかな為替の振れ幅で起こっているのです。
株式市場にとって金利の低下は追い風となることから、相対的に緩和規模が巨大な米国株もしくはそれに準ずる金融資産が買われているため、
という構図になっているのです。
意識しておかなければ見逃してしまうような変化なので必ず押さえておきましょう
実際に、私が米国株を売買している時も、
ので、参考にしてください。
米国利上げのタイミングに注意

前述の通り、現在のドル円は日米金利差の縮小により狭いレンジ内での値動きを繰り広げています。
このことから、今後極端な円安には進みにくい可能性が高いのですが、米国の利上げのタイミングにだけは注意しなければなりません。
金融緩和の終了に伴う金利の上昇局面では、通常は米国の安全資産である国債が買われる傾向にありました。
しかし、今回はITバブル時のような急落局面も十分に想定できるため、全ての金融資産が暴落するリスクがあるのです。
ITバブル当時は、e-コマースの急速な普及により革新的なサービスが次々と誕生するとの期待からIT関連株が買われ、米NASDAQ指数は4年間で5倍の5,000ポイントまで急上昇しました。
それにより、その名にドットコムと付く会社が一方的に買われる展開となり、その他の銘柄は全く上がらないという相場が形成されました。
その後、米NASDAQ総合指数は、アメリカの金融緩和終了を合図に5,000ポイントから1,000ポイントまで急落しました。
今回の金融緩和の額が過去最高額である米国だけではなく、その他各国もコロナウイルス感染拡大に伴い超金融緩和政策を実施している点が重要です。
仮に、今後
可能性があります。
ドル円は100円を割り込む可能性も想定できるため、米国の利上げサインには十分に注意しておかなければなりません。
米国株と為替の値動きを注視
現状は米国株高に連動する形で円高・円安に振れる相場環境であり、「ドル高 = 米国株高」となるように相場は形成されています。
従来の「円安 = 日本株高」という連動制は薄れていることは押さえておく必要があります。
また、現在ドル円は200移動平均線の下での値動きを継続しており、米国が低金利状態を維持している限りはこれを上回るのにある程度の時間を要する可能性があります。
その動向を把握するためには、米国株の値動きとセットで為替の値動きを見極める必要があります。
また、米国の利上げ再開を契機に急速な株価下落、円高が進む可能性があるので、その動向には注意しておく必要があります。(執筆者:現役証券マン 白鳥 翔一)