販売預託商法を悪用した、ジャパンライフによる巨額詐欺事件が、世間を騒がせております。
高齢者を中心に約1万人から、総額で約2,100億円を集めていたという話なので、全容が解明されるまでには、かなりの期間がかかると思いますが、詐欺の手口は明らかになっております。
その手口とは顧客に対して、ネックレスなどの磁気商品を販売するのですが、商品は顧客に渡さないで、ジャパンライフが預かります。
そしてジャパンライフが別の顧客に、預かった商品をレンタルし、そのレンタル料を元にして年6%の配当金を、磁気商品の購入者に支払います。
実際の磁気商品はほとんど存在しておらず、新規の契約金を顧客への配当金に回すという、自転車操業を続けてきたようです。
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目次
販売預託商法が改正予定
過去に世間を騒がせた、豊田商事、ケフィア事業振興会、安愚楽牧場などの巨額詐欺事件でも、同じような手口が利用されてきました。
そのため消費者庁は有識者による検討会で議論を行ったうえで、販売預託商法を原則禁止にする改正案を、来年の通常国会に提出するようです。
これが可決されれば、販売預託商法を悪用するのは難しくなりますが、老後資金を守るための対策は、これからも続けていく必要があります。
このように考える理由として、日本郵政グループによる保険や投資信託の不適切販売からわかるように、老後資金を必要以上に減少させるのは、販売預託商法を悪用した詐欺集団だけではないからです。
また所得税や住民税などの税金の負担は、老後資金をじわりじわりと減少させます。
iDeCoは加入資格の拡大が続いている
老後資金を増やすための有力な選択肢として、iDeCo(個人型の確定拠出年金)があります。
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2017年1月から加入資格が拡大されたため、従来は加入できなかった公務員や専業主婦も、iDeCoを利用できるようになりました。
これにより20歳以上60歳未満の、公的年金の加入者であれば、国民年金の保険料の免除者など一部を除いて、誰でもiDeCoに加入できるようになりました。
さらに2022年5月からは、iDeCoに加入できる年齢の上限が、65歳に引き上げされます。
企業型の確定拠出年金に加入している会社員は、規約の中に同時加入を認める定めがないと、iDeCoに加入できません。
しかし2022年10月からは、規約に定めがなくても、iDeCoに加入できるようになります。
税金がかからなければ手元に残せる金額が多くなる
加入資格の拡大が続いているため、以前より老後資金を増やしやすくなりましたが、iDeCoは老後資金を減らさないためにも、活用できると思います。
例えば60歳以降になると受給できる老齢給付金は、「一時金」、「年金」、「一時金と年金の併用」の中から、受給方法を選択できます。
もし一時金を選択した場合には、受給した金額から、「退職所得控除額」を差し引けます。
年金を選択した場合には、受給した金額から、「公的年金等控除額」を差し引けます。
こういった仕組みにより、所得税や住民税などの税金が、かかりにくくなっています。
また税金がかからなければ、手元に残せる金額が多くなるため、iDeCoは老後資金を減らさないために活用できます。
なお現状においては、ほとんどの方が一時金で、老齢給付金を受給しているようです。
しかし受給方法や受給時期により、税金の負担は大きく変わってくるので、老後資金をできるだけ減らしたくないという方は、受給方法や受給時期について、よく検討した方が良いと思います。
リスク許容度や年齢で分散割合を決める
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特に投資経験がない方は、iDeCoに拠出した掛金の全額を、定期預金などの元本確保型商品で、運用している場合が多いようです。
これだと安全ですが、現在は金利がほとんど付かないため、老後資金が増えていきません。
そこで掛金の一部を、日本の株式が組み入れられた投資信託に振り向け、いわゆる「分散投資」を実施してみます。
日本よりも海外の国の方が、経済成長している場合が多いので、日本以外の先進国や、新興国の株式が組み入れられた投資信託にも、掛金の一部を振り向けてみます。
株式の割合が大きくなると、年金資産の増減も大きくなるため、不安になる方が出てきますが、まったく動揺しないで、運用を続けられる方もおります。
この違いは人によって、「リスク許容度」(どれくらいの損失なら受け入れられるか)に、大きな違いがあるからだと考えられます。
そのため掛金の配分を決める際には、自分のリスク許容度を、参考にした方が良いです。
最近はリスク許容度を調べる診断テストを、用意している金融機関がありますが、資産運用を続けていると体感的に、自分のリスク許容度がわかってくると思います。
また「100-自分の年齢」という、各人の年齢を基準にした、リスク資産を保有する割合の目安を、参考にするのも良いと思います。
例えば20歳の方は掛金の80%(100-20)くらいを、50歳の方は掛金の50%(100-50)くらいを、株式が組み入れられた投資信託に振り向けてみます。
被害が大きくなる一点集中の資産運用
新聞の記事を読んでいたら、定期預金や生命保険を解約して、資産のほとんどをジャパンライフにつぎ込んだという、80歳くらいの方が登場していたため、とても気の毒な気持ちになりました。
この方は定期預金や生命保険などの、元本割れしない金融商品で資産運用してきたので、おそらくリスク許容度は高くないと推測されます。
また年齢的にリスク資産は、あまり保有すべきではないので、資産のほとんどをジャパンライフにつぎ込んだのは、これが詐欺集団でなかったとしても、適切とは思えない行為です。
iDeCoでの資産運用を通じて、分散投資の必要性を理解するとともに、この具体的な実施方法を身に付けた方は、新聞の記事に掲載されていたような一点集中の資産運用を、やらない可能性が高いと思います。
そうなると詐欺にだまされて、資産を失ったとしても、一部だけにとどまるため、老後資金の減少を抑えられます。
こういった意味でもiDeCoは、老後資産を減らさないために活用できると思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)