老後資金として2,000万円が必要といわれています。
2,000万円という金額が本当に必要かどうかは別としても、快適な老後を送るためにはある程度の資金が必要です。
そのような老後の生活資金をねん出する方法として「リバースモーゲージ」という方法があることはご存じでしょうか。
今回は、老後資金確保に役立つリバースモーゲージ制度について解説します。

目次
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージ制度とは、高齢者向けの老後生活資金を融資する制度です。
具体的には、
各大手銀行や地方銀行、信託銀行等の金融機関のほか、各都道府県にある社会福祉協議会などがこの制度を採用していますが、各金融機関によって貸付条件などに違いがありますので注意が必要です。
なお、日本で最初にこの制度を採用したのは昭和56年に採用した東京都武蔵野市ですが、武蔵野市では平成27年3月31日にこの制度を終了しました。
以下では、東京都社会福祉会の制度を例に具体的な内容を説明します。
東京都社会福祉協議会の場合
東京都社会福祉協議会で採用するリバースモーゲージ(不動産担保型生活資金)の概要は、以下のようなものです。
対象世帯
・ 借入申込者が単独で所有している不動産に居住している世帯
・ 世帯の構成員が原則として65歳以上
・ 世帯の構成が次のいずれかであること
(1) 単身
(2) 夫婦のみ
(3) (1)または(2)と借入申込者もしくは配偶者の親が同居
・ 世帯員の収入が区市町村民税非課税または均等割課税程度の低所得世帯
対象不動産
・ 賃借権等の利用権及び抵当権等の担保権が設定されていない
・ 土地の評価額が概ね1,500万円以上の一戸建て住宅
貸付内容
・ 貸付月額:30万円以内
・ 資金交付:原則として3か月ごとに交付
・ 貸付限度額:担保となる土地評価額の概ね70%
・ 貸付期間:貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間
・ 貸付金の利率:年3%または当該年度における4月1日時点の長期プライムレートのいずれか低いほう
他の金融機関の場合
他の金融機関のリバースモーゲージの契約条件も、基本的な仕組みは社会福祉協議会と同様の場合が多いですが、以下のような違いがあります。
民間の金融機関:一定の定期収入(年金収入など)があることが条件となっていることが多い
リバースモーゲージ採用機関によって契約条件などに違いがありますので、利用を希望される場合には、直接金融機関に確認するとよいでしょう。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージのメリットとしては、制度を利用することによって老後の生活資金に余裕ができることが挙げられます。
年金をもらっていてもそれだけで生活することは難しく、通常は預金を取り崩しながら生活をしていると思います。
そのような場合にリバースモーゲージを利用すれば、老後資金に余裕ができ快適な生活を送ることが可能になります。
また、自宅ではなく老人ホームで生活をしたいと考える方にもメリットがあります。
リバースモーゲージを利用することでまとまった入居費用を調達できますし、月々の利用料についても賄えます。
リバースモーゲージのデメリット
他方、リバースモーゲージにはデメリットもあります。
リバースモーゲージは、契約者が死亡後に担保となった自宅を売却することで返済をする契約です。
そのため自宅の担保価値が下がった場合、売却時に完済できないリスクが生じます。
また契約時に推定相続人の同意を要求する場合が多いので、家族との話し合いも必要です。

リバースモーゲージに類似する危険な取引に注意
リバースモーゲージが高齢者を対象にした老後の資金確保の手段であることから、高齢者を狙った悪質な契約もときどき目にすることがあります。
具体的な例を挙げると、以下のような内容で契約を結んでいました。
・ 融資の相手が金融機関ではなく一般の会社
・ 契約者の自宅の所有権を相手の会社に移転
・ その上で、別の関連会社から資金の融資を受けるために、相手の会社が自宅に「根抵当権」を設定
・ 別の関連会社からの融資金を使って、相手の会社が契約者に対して毎月生活資金を融資
・ 契約者は死亡するまで自宅に居住できる
この事案では自宅の所有権が相手の会社に移転しているので、相手の会社が関連会社に返済を滞った場合には関連会社は競売を申し立て自宅を売却できてしまいます。
実際に、生活資金の融資は1年程度で止まってしまいました。
本来のリバースモーゲージは、自宅を担保にとることはあっても契約時に所有権を移転することはありません。
高齢者の無知に付け込んだ悪質な契約も存在していますので、リバースモーゲージを検討している場合は公的機関や信頼できる金融機関に相談するようにしてください。
リバースモーゲージには、さまざまなメリットとデメリットがあります。
ご自身の老後の生活プランをよく考えて利用するかどうかを決めるようにしましょう。(執筆者:弁護士 山本 静人)