新たにマイホームを手に入れると、いろいろなリスクから家を守るためには火災保険が有効です。
住宅会社(住宅を建てる建設会社・工務店と、分譲住宅を販売する不動産会社)は、マイホーム購入の際に必ず火災保険を勧めてくれます。
住宅ローンを契約する際は、火災保険加入が必須となります。
また住宅ローンを借りないとしても、至極当然に火災保険を勧めてきます。
目次
「火災保険」はなぜ高い

・ 余分かもしれない特約が付いている
保険会社は、入る人のライフプランから保険商品をカスタマイズするのではありません。
加入する人が住宅会社に要求するかもしれないクレームに、対応する保険を提案します。
だから高いのです。
火災保険は、住宅に住む限り入るのが望ましいので、コストパフォーマンスも重要です。
自分に必要な保障だけを選び「適切」な火災保険に加入してください。
保険代を安く抑えるためには、自身の必要条件を確認して、それにあった保険商品を見つけることです。
・ 住宅会社はなぜ「高い」火災保険を勧めるのか
・ 最適な火災保険を見つけるためには、どのタイミングから保険を探すか
これらについて解説します。
火災保険の現状
内閣府の調査によると、持ち家世帯の火災保険加入率は全世帯数の約82%です。
同じく持ち家世代の火災保険加入率の中で、水災補償付き火災保険加入率は66%、地震保証付き火災保険加入率は49%となります。
火災保険加入者の振り分けを見ると、
・ 保険会社の火災保険に加入している世帯は約61%
・ 共済組合の火災保険に加入している世帯は33%
です。
参照:内閣府
高い保険をすすめる理由1:クレーム回避
住宅産業はクレーム産業と言われています。
買い手と売り手に情報量や知識に差があり、昨今の消費者保護の流れもあって、住宅会社にはさまざまなクレームが入ります。
無責任で対応の悪い住宅会社もありますが、住宅会社の責任でないクレームも多々あります。
特に火災、天災等は住宅会社に何ら関係ありませんが、買主にトラブルが起こると、
というクレームに発展することがあります。
住宅会社は買主のクレームに対応するため、リスクに対応した火災保険を勧めることになります。
高い保険をすすめる理由1:火災保険加入が融資条件
金融機関は、住宅ローン融資の条件として火災保険の加入を義務付けています。
もしマイホームを焼失しても、住宅ローンを払い続けなければならないからです。
同時に家が焼失すれば、新たに住まいが必要です。
焼失した住宅ローンを払いながら、家の住宅ローンを払う「ダブルローン」は家計破たんの可能性が高くなります。
以前は住宅ローン返済年数分の、火災保険の加入が義務でした。
火災保険の契約期間は現在、最長10年で10年後に再度契約することになります。
高い保険をすすめる理由3:火災は他者に過失があっても、保証されない場合がある
日本には失火責任法という法律があります。
もらい火は、失火先から弁償、保障してもらえません。
隣家が火事になり風や爆発で火が移り、自宅が全焼したとしても、隣家からの補償はありません。
見舞金等の支払はありますが、住宅再建費用と比較すると、とても足りません。

高い保険をすすめる理由4:天災、過失に備える
日本において、天災がいつ起こるかわかりません。台風の被害は、以前より大きくなっております。
・地震、噴火、水害、台風、風災、落雷、破裂、爆発
・盗難、集団行動等に伴う暴力行為
これらのリスクに対応するには、総合住宅保険などの火災保険に入らなくてはなりません。
また、生活再建の際は住まいだけでなく、家財(家具・家電・衣服等)も被害を受けます。
これらをカバーする家財保険があります。
加害者になったときの「個人賠償責任保障特約」
アパートマンションは、住居が上部に重なって建てられています。
最下層でない以上、自身が溢れさせてしまった水で、下層の住民に被害を与える可能性があります。
下層階だけでなく、その下の階にも被害を与える場合もあります。
個人賠償責任保障特約は、自動車保険等にも付加できます。
高い保険をすすめる理由5:建設会社等がすすめる保険は提携が1社のみ
マイホームを手にいれるとき、住宅会社は火災保険を勧めます。
住宅会社が提供する「提携代理店の火災保険」です。
住宅会社営業マンは火災保険の専門家ではないので、火災保険の選定は、住宅会社の提携している保険代理店に、一任されることになります。
共済組合が提供する火災保険もありますが、提携の火災保険は基本的に保険代理店の火災保険を提供します。
保険会社の保険の方がカスタイマイズしやすく、代理店に業務を行うので、住宅会社にとってもメリットがあります。
住宅会社の営業マンにとっては、手離れがいいのです。
通常、提携の保険代理店は1社です。
保険代理店は複数の保険会社商品を扱えますが、担当者等の手間を考え、提案されるのは通常一商品のみです。
オプションや特約等の選択はあっても、複数の保険商品の比較はありません。
保険商品の比較をしないので、結果的に高い保険に加入することになります。
火災保険の支払者は「住宅会社」
提携の火災保険は、マイホーを購入時の諸費用として支払われることになります。
住宅会社が提携する住宅ローンを使う場合は、特にその傾向が強いです。
保険代理店から見れば、支払元は住宅会社なので、真のクライアンは「住宅会社」です。
また住宅会社はリピーターとなりうる存在です。
住宅会社に信用されれば、竣工毎に火災保険の依頼が来るので、住宅会社を向いて営業をするようになります。
住宅会社が望むのは、買主が万が一の場合に対応がよい火災保険です。
売主である住宅会社に、責任の転嫁の可能性が少ない保険です。
万が一に広く対応する保険は安心ですが、その分費用も高くなるのが、提携火災保険が割高になる原因です。
火災保険をいつから探すのか
私は工務店に13年勤めました。
実務の場において実感したのは、火災保険・住宅ローン・引越会社の選定が蔑ろにされていることです。
買主が「提携の火災保険」や営業マンの「お勧め」を鵜呑みにする実情を見てきました。
住宅は決めなければいけないことが多く、火災保険は場当たり的な選択をせざるを得ません。
しかも住宅会社の営業マンは住宅の専門家であって、火災保険のプロではありません。
もしあなたが火災保険を自分のペースでしっかり選びたいのであれば、早めに情報収集をしてください。
・ 注文住宅は着工時点
この時点から火災保険について情報収集をしてください。
図面が作成され、設備等の仕様がある程度決定している段階ならば、火災保険の申し込みができます。
内容とコスパで自身にあった保険に加入

マイホームには、備えなければならないリスクがあります。
でもコストパフォーマンスも重要です。
それに合わせた火災保険を選ばなければなりません。
少なくとも住宅会社が提示する保険と、あなた自身が探した保険を比較してください。
そうすればあなたの条件に近い火災保険があるはずです。
また火災保険の費用の算出は、住宅ローンの予算を考える上でも大切です。
住宅ローンを決める前に、少なくても火災保険の予算は決めた方が賢明です。(執筆者:金 弘碩)