学校卒業後にある企業で働いていた期間があり、年金記録に反映されているか疑念を抱いて調べたところ、反映されていないことが分かりました。
その場合には、年金額も増えることから当然申し出をすべきでしょう。
しかし、場合によっては申し出をしない方が年金額は高いということが起こります。どのような場合なのでしょうか。
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目次
遺族厚生年金
現在の遺族厚生年金の計算式は次のとおりです。
注目すべきは「被保険者期間の月数」です。
遺族厚生年金は
・ 長期要件
と、2種類の計算方式があります(短期要件にも長期要件にも該当した場合には、原則として短期要件を採用)。
下記の(ア)~(ウ)が短期要件で、(エ)が長期要件です。
(ア)被保険者が、死亡したとき
(イ)被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日のある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき
(ウ)障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
(エ)老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
月数が300に満たない場合には「みなし300」で計算
そして、次の部分が重要で、短期要件の場合、年金額計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たない場合には300(いわゆるみなし300)として計算した額とします。
遺族厚生年金は原則65歳から受給開始となる老齢厚生年金とは異なり、ご主人が他界されて比較的若い時期であっても受給開始となる場合がありそのような措置がとられているものと考えられます。
たとえば、短期要件の遺族厚生年金として実際の被保険者期間の月数が100月である場合には、「みなし300」により被保険者期間の月数は300月とみなされます。
そこに、死亡した方の若年期の分として12月分の被保険者期間が発掘された場合、12月分を加算したとしても300月には達しないために、みなし300月の中に含まれてしまいます。
若年期の給与が低い場合にはその期間も含めて「平均」標準報酬額として計算します。
すると、「みなし300」により月数は変わらないにも拘らず「平均」標準報酬額は下がりますので、結果的に遺族厚生年金の額も下がってしまうということです。
その場合、高い遺族厚生年金を受給していたことから5年の時効を遡り5年分を返還しなければならないということになります。
しかし、現在では、
となっています。
ゆえに5年分の返還も発生しないということです。
障害厚生年金
詳細な計算式は割愛しますが、遺族厚生年金と同様に被保険者期間の月数が300月未満の場合は「みなし300」として計算がされます。
したがって、遺族厚生年金と同様に過去の記録が発掘されにも拘らず合算した結果300月未満の場合には被保険者期間は変わりません。
すなわち、場合によっては「平均」標準報酬額が下がってしまうということです。
参照:日本年金機構 (pdf)
年金記録不明問題
平成26年4月時点で年金記録の不明件数は約2,100万件もあるとのことです。
原則として老齢厚生年金で新たに被保険者期間が発掘された場合には「みなし300」のような措置はありませんので、年金額は増額することが多いと言えます。
しかし、前述の通り「みなし300」で計算する短期要件の遺族厚生年金や障害厚生年金の場合には、必ずしも増額するとは言えないという点を押さえていただければと考えます。
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どのような場合に注意が必要か
次のような場合には注意が必要です。
(1) 試用期間中に退職をした
試用期間中であっても要件を満たせば社会保険の対象です。当時の給与明細で保険料が控除されているにも拘らず月数が合わないという場合には確認すべきです。
(2) グループ企業内に出向があった
出向先で給与支給などがあった場合、社会保険加入の手続きがうまく連携していないことがあります。
漏れなどをどのように把握するのか
漏れなどがあるかどうかは、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認しましょう。
「ねんきん定期便」
「ねんきん定期便」には、毎年1回誕生月にはがきで送付されるものと、35・45・59歳時には詳細な記録が封書で送られてくるものがあります。
届いた際に確認して問題がある場合には、同封されている「年金加入記録回答票」にて必要事項を記載して返送します。
上記のタイミングではない時に気付いた際には「年金記録照会申出書」を提出します。
「年金記録照会申出書」とは、これまでの年金記録について年金事務所に照会を求めるための書類です。
年金記録に漏れや誤りなどの疑義が生じた場合には、必要事項を記入して年金事務所に提出します。
「ねんきんネット」
「ねんきんネット」とは、日本年金機構が提供するインターネットサービスです。
年金記録の照会や見込み額の試算、電子版「ねんきん定期便」の閲覧などが可能です。
利用するにはユーザーIDが必要で、かつ基礎年金番号の入力とパスワードの設定が必要です。
若年でも受給の機会があるので確認を早めにする
現在が大学卒業後の場合には、老齢を支給事由とする年金受給は40年以上も先の話になってしまいます。
しかし、老齢だけではなく、配偶者の死亡、障害を負った場合にも年金受給の対象となり得ることと、その際の重要な収入ですので記録の確認は時間を設けて行いましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)