晩婚化の時代であると同時に熟年離婚というキーワードも珍しくなくなってきました。
一定期間以上の婚姻期間を経て離婚する場合にはその家計の働き方によっては格差が生まれてしまうことがあります。
例えば夫のみが厚生年金の適用事業所で働いている場合、
ということでした。
この点が問題となり、婚姻期間中の夫を支えた妻の功績を年金額にも反映させるべく導入された制度があります。
それはどのような制度なのでしょうか?
目次
合意分割と3号分割
合意分割:夫婦が合意によって分割割合を決定
双方の主張の隔たりが大きく、夫婦間で合意に至らない場合、家庭裁判所に調停や審判を申し立て、年金を分割できる制度です。
しかし、合意分割する場合は年金の分割割合は、最大で1/2となります。
3号分割:専業主婦(夫)に適用される制度で相手の合意なしに年金の分割を請求できる制度
しかし、相手の合意が不要であることから、最大で1/2と決められています。
以下の比較表も参考にご確認ください。
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対象となる年金
年金制度は1階部分とされる国民年金の上に2階部分とされる厚生年金があります。
分割の対象となるのは2階部分の厚生年金であり、1階部分の国民年金は対象となっていません。
また、国民年金基金やiDeCoも対象となる年金に含まれていません。
よくある誤り
例えば夫が200万円の老齢厚生年金を受給できる場合に案分割合を1/2として合意した場合、夫が100万円、妻が100万円と分割できるわけではありません。
あくまで分割されるのは年金算出の基礎である標準報酬であり、年金額をそのまま1/2とするわけではありません。
現役世代は全期間自営業であった夫と離婚した場合、1度も厚生年金に加入していないのであれば、全く分割できないというケースがあります。
また、夫が自営業、妻が会社勤めの場合、夫は1階部分である老齢基礎年金だけしか支給されない場合は、夫の方へ妻が分割するというケースもあります。
そして、3号分割は2008年4月1日以後の期間が分割の対象です。
よって、2008年4月1日前の期間分については3号分割ではなく、合意分割によって年金分割することとなります。
まずはご自身の受給権の確認
例えば妻が夫から年金分割を受けたとしても、妻が年金の受給権を得ていなかった場合は、妻は年金自体を受け取れないということです。
3号分割できない事例
特定被保険者である夫が障害厚生年金を受けている場合です。
障害厚生年金の基礎となっている期間の分割を行うと特定被保険者である夫の障害厚生年金が減額してしまいます。
また、3号分割は合意分割とは異なり、合意が不要である点も考慮すると、
・ 被扶養者配偶者の請求1つで決定されてしまう
・ 障害厚生年金の支給趣旨を総合的に鑑みるとその期間を分割対象とするのは適切ではない
とのことから、分割の請求はできないということです。
夫が他界した場合
遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の3/4(再婚した場合は失権)に対して、離婚時の年金分割は最大で1/2です。
単純に年金額だけで比較する問題ではありませんが、老後は労働収入などの固定的な収入が少なくなることから、よく考えて損をしないよう受け取ってください。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)