令和3年3月14日に実施された競馬のWIN5で、過去最高額となる5億5,444万6,060円の払戻金が発生しました。
大卒の生涯賃金は2.5億円とも2.7億円ともいわれていますので、人生2回分の賃金相当を一瞬で手に入れたことになります。
ただ元税務署職員としてどうしても気になってしまうのが、払戻金5億円に対する税金です。
そこで今回は5億円に対する税金の金額と、控除できる経費について解説します。

目次
5億円の的中馬券の税金は1.25億以上
競馬を含めた公営競技(競輪やボートレースなど)の払戻金は、一時所得の対象です。
一時所得は、収入から経費を差し引き、50万円の特別控除を超える金額があった場合、その金額に1/2を乗じた額に所得税が課される仕組みです。
一時所得の計算式
一時所得の金額 × 1/2=所得税の対象となる一時所得
WIN5は1口100円で購入できるため、経費に該当する支出がほとんどありません。
そのため5億円の的中馬券で所得税の対象となる金額は、半分の2.5億円は一時所得として課税対象になります。
所得税の最高税率は45%であり、そこに住民税も加えると、2.5億円の半分の1.25億円以上は税金として納めなければなりません。
また所得税は給料や年金なども一緒に計算するため、もし5億円的中された方が給料をもらっている場合、給料に対しても最高税率が適用されます。

外れ馬券は一時所得の経費には該当しない
一時所得の場合、所得を得るのに支払った費用を経費として算入できます。
競馬で考えると、経費に該当するのは馬券の購入費用です。
1,000円で1万円の払戻金を得た場合、差額の9,000円が利益(所得)です。
そうなると気になるのが、的中しなかった外れ馬券の購入金額が経費に該当するか否かです。
一時所得に該当する払戻金に対する経費は、払戻金を得るために支払った費用しか認められませんので、的中馬券の購入金額のみが経費となります。
99回予想が外れ、1回馬券が的中した際は、1回分の購入金額しか経費になりません。
したがって競馬の収支は赤字でも、一時所得が発生するなんてケースも考えられます。
外れ馬券が経費に含まれるケースとは
競馬に関する税金に詳しい人なら、「外れ馬券の裁判で国は敗訴しなかったか?」と思うかもしれません。
競馬の払戻金に関しての平成29年12月15日に最高裁の判決が下りました。
参照:国税庁
判決の内容としては、馬券購入の態様や利益発生の状況などから雑所得に該当するケースにおいては、外れ馬券の購入費用も必要経費に該当するという内容です。
つまり馬券購入を営利で目的で行っている人の外れ馬券は、経費計上可能という考え方です。
ただ注意点として、娯楽目的で毎週競馬場に行って馬券を購入するような場合は、雑所得でなく一時所得の対象です。
そのため普通に競馬を楽しんでいる人の外れ馬券は、経費として認められませんので、外れ馬券を系計上する際は、雑所得に該当する根拠を示す必要があります。
今後は当たり馬券への税務調査が増えるかもしれない
WIN5などの超高額払戻金の申告がされていなければ、税務署は税務調査を実施することは想像に難くないです。
しかし今後は超高額払戻金だけでなく、何度も万馬券を的中した人に対しても税務調査が行われる可能性もあります。
2020年は新型コロナウイルスで無観客レースを実施する期間が長かったにもかかわらず、JRAの売上は2兆9,834億5,587万2,000円と、前年比103,5%と売上を伸ばしています。
売上が伸びたのは、インターネットで馬券を購入する人が急増したからです。
インターネットで馬券を購入すれば、購入履歴はデータとして残りますので税務署は申告漏れの指摘をしやすいですし、「馬券は購入していない」などと言い逃れできません。
コロナ渦で国の税収が減少するとなれば無申告者への税務調査はより厳しさを増します。
確定申告が必要になるくらい払戻金を得た人は、忘れずに申告手続きをしてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)