日本は高齢化社会に突入していて、日常生活に介護が必要となっている方も増加しています。
介護が必要になった方を自宅で介護することが困難になった際に施設入居を選択する方も少なくありません。
しかし、せっかく施設に入居したとしても体調の低下や疾病の発生に伴い、入居した施設を退居して転居しなければならない事態が発生することもあるのです。
住み慣れた施設で最期まで生活をしたいと希望される場合には「看取り介護」を実施している施設を選ぶことが重要です。
今回は、施設で実施している看取り介護の内容や事前に踏まえておくべき注意点についてご紹介します。
目次
施設の看取り介護とは
看取り介護とは、現代の医療で回復不可能な状態に陥っていると医師から診断された方(老衰等)に対して積極的な延命治療などを行わず、それまでの本人の価値観などを踏まえたうえで最期までその人らしく生活できるように支援することを言います。
看取り介護を行うためには、原則として本人の意思が必要ですが、意思表示が困難な場合もあります。
その時は本人に代わって本人の意思を表明していただけるよう、その家族の方にアプローチすることもあります。
看取り介護を実践するにあたっては、施設スタッフのみならずその本人を取り巻く人たちにも関わりを持ってもらい、本人にとって過ごしやすい環境を整えることが必要です。
続いて、施設での看取り介護における2つの注意点を解決策と合わせてみていきましょう。
看取り介護の「2つの注意点」と「解決策」
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注意1. 医療行為の実施が困難な場合がある
施設の種別によっては医師や看護師が24時間常駐しているわけではなく、病院ほど医療体制が充実している施設は少ないと言えます。
看取り介護の対象となった方が持つ疾病によっては、痛みを伴い麻薬などの痛み止めを使用しなければ苦痛緩和に努められない場合もあります。
しかし、それは医師や看護師などしか実施できません。
医療施設ほどの物理的な苦痛緩和に努められないため、看取り介護の実施が困難と言わざるを得ない状態の方もいます。
また、水分や食事が摂取できなくなった時に点滴などをしてほしいといった際にも必要最低限の点滴のみの実施しかできず、家族によっては「何もしてあげられないのがつらい」と考える方も多いものです。
解決策
その施設で実施できる医療行為について事前に説明を受け、分からない内容を確認したうえで看取り介護を行ってもらうかどうかを決めることが大切であると考えられます。
施設での看取り介護においては医療行為の実施が困難であるということを踏まえたうえで、看取り介護を受けるかどうかを判断することが重要です。
注意2. 施設の利用料金が高くなる
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一定の条件を満たして施設で看取り介護を実施した場合には、介護報酬に「看取り介護加算」という形で上乗せされます。
2021年4月から実施される介護報酬改定において、国は施設での看取り介護実施を推進するため、それまでよりも看取り介護加算を算定できる範囲を広げました。
看取り介護を受けた本人が亡くなった日から起算して45日間まで看取り介護加算を算定することが可能になり、1日あたり約80円~1,600円程度が上乗せされることが新たに定められました。
解決策
看取り介護を実施した期間によって請求される料金は異なります。
看取り介護加算は施設を利用した最終月にまとめて請求されるため、施設に最後に支払う利用料金が上がってしまうということを覚えておきましょう。
参照:厚生労働省「地域包括ケアシステムの推進 (pdf)」
「看取り介護加算」は入居前に確認
住み慣れた環境を亡くなる直前に変えられることは、その方によっては強いストレスとなります。
人生の最期を住み慣れた施設で送れるかどうかについては、施設に入居する前に確認しておくことが重要です。
入居を希望する施設に説明を聞きに行った際には、「看取り介護加算」が設定されているかどうかを担当の相談員に聞いてみることをおすすめします。
その時が来てからでは「自分自身の最期をどのように過ごしたいか」という希望の確認をするのが困難な場合もあります。
話しにくい内容かもしれませんが、事前に話し合うことでより希望に即した支援ができるため、一度話し合いをしておくとより良い看取り介護の実施につなげられますよ。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)