介護保険サービスを利用する際に、低所得者とされる方達の費用負担を軽減するための制度はいくつか存在しています。
それらの制度は低所得者の方で介護サービスを利用する方にとって強い味方です。
その制度の1つである「介護保険負担限度額認定」の認定基準が2021年8月から変更される事になりました。
制度の変更によって費用負担が大きく変化する方も少なくないでしょう。
今回は、介護保険負担限度額認定の内容と2021年8月からの変更点について紹介していきます。
目次
「介護保険負担限度額認定証」とは
介護保険サービスを利用する際には、利用するサービス内容によって食費や居住費がかかります。
この食費や居住費については、過去には保険給付の対象となっていましたが、現在は保険給付の対象から外れており、基本的には自己負担となっています。
しかし、所得や預貯金等の資産が少ない方はその負担が大きいため、一定の条件を満たした方については食費・居住費などの減額が認められる事とされており、それを証明するために発行される介護保険負担限度額認定証となります。
低所得者の強い味方であった介護保険負担限度額認定証ですが、2021年8月から大きく制度内容が変わる事となりました。
今回は2021年8月に変更される予定の介護保険負担限度額認定証の認定条件と制度内容について説明していきます。
【変更点1】負担段階2および3の認定者の食費がアップ
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まず初めに挙げられる変更点は、負担段階2および3の認定者の食費がアップするという事です。
現在介護保険負担限度額認定証を持つ方は3段階に分けられており、負担段階2に認定されている方は1日当たり390円、負担段階3に認定されている方は1日当たり650円の食費を負担する事と定められています。
しかし、2021年8月からはその負担額が大幅に上昇することが見込まれます。
2021年8月からは、負担段階2に認定された方は1日当たり600円の食費を負担する事となるため、1日あたり210円の負担増となります。
負担段階3は現行より細分化され、さらに2区分に分けられます。
その区分によって、1日当たり1,000円または1,300円の食費負担をする事となるため、1日当たり350円から650円の負担増です。
特に施設入居者の負担は大きくなり、最大で約2万円程度の負担増となる事が決定しています。
介護保険負担限度額認定証を所持している方の多くが食費負担額が増加するという事を踏まえ、その後の介護サービス利用について考えていく必要があると言えるでしょう。
【変更点2】認定条件の1つである預貯金額の引き下げ
現行では介護保険負担限度額認定証が発行される条件の1つとして、預貯金の金額が一定以下である事が定められています。
その基準となる金額は本人の預貯金等が1,000万円以下である事、配偶者がいる方は配偶者と本人の預貯金等が合わせて2,000万円以下である事とされています。
これまでは負担段階の違いに関わらず、認定条件となる預貯金等の金額は一定金額とされていましたが、2021年8月からは負担段階によって異なる事が決まりました。
2021年8月から負担段階2に認定されるためには預貯金等が650万円以下である事が条件です。
前項でも述べた通り、負担段階3は2021年8月より2区分に細分化されます。
負担段階3の(2) (収入に市県民税が課税されていない方)は預貯金等が500万円以下である事
が介護保険負担限度額認定を受ける条件に変更されました。
また、配偶者がいる場合は前に述べた条件に加え、配偶者の預貯金等が1,000万円以下である事は条件として残される事となっています。
介護保険負担限度額認定を受けるためには、収入額だけでなく預貯金等の金額の基準が下がるという事を覚えておくと良いでしょう。
参照:厚生労働省(pdf)
定期的に見直されていく介護保険制度
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食費は介護保険サービスの基本サービス料に含まれておらず、保険が適用とならないため高額に感じることがあります。
2021年8月からの介護保険負担限度額認定条件の変更や食費負担額の変更は既に予定されている事であり、その内容が変更される可能性は限りなく低いと言えるでしょう。
介護保険は定期的に見直されていく制度です。
正しく知識をつけておき、2021年8月からサービス利用について、現時点から検討しておく事が大切です。
既に介護保険を利用している方に対しては、利用している内容に変更が生じた場合には担当ケアマネージャーが必ず知らせてくれるので安心してください。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)