介護保険制度は2000年から開始されましたが、世の中の現状に合わせて定期的にその内容は見直され、改正されています。
2021年(令和3年)に行われた介護報酬の改定においてもさまざまな加算が創設されましたが、その中の1つとして「科学的介護推進連携加算」というものがあります。
今回は、科学的介護推進連携加算の内容と、それを算定している事業所を選ぶメリットについて紹介していきます。
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目次
科学的介護推進連携加算とはどんな加算か
科学的介護推進連携加算は、根拠を持った介護を行う事で介護の質を上げる事を目的に創設された加算となっています。
医療の現場ではすでに「根拠のある医療」を提供する事が基本となっています。
国はそれと同様、介護に関しても、実際に接している介護現場から状況を収集し分析する事で「根拠のあるケア」を確立していく事を目指しています。
それに必要な情報を介護事業所から集めるために、情報を提出した事業所には加算という形でインセンティブを与える事としました。
科学的介護推進連携加算の対象であるサービスは、通所サービスや施設サービス、多機能系サービスなどです。
通所サービスを例にみてみますと、必要な情報を科学的介護情報システムに送り、送った情報を基に支援計画を策定、それに基づいて支援を実施している場合には月に40単位の加算となります。
そのため、この加算を算定した場合には、利用者の負担は月40円程度(負担割合1割の場合)負担が生じます。
そこで、科学的介護推進連携加算を算定している事業所を選ぶメリットはあるのかについてみていきましょう。
【メリット1】質の高い介護を受ける事ができる
科学的介護推進連携加算を取得するためには、指定されている内容のデータを利用者分すべて提出する事が求められています。
提出を求められている情報は、利用者の身体状態や心身状況、認知機能や栄養・口腔機能など多岐にわたるため、利用者の状況を詳細に観察・記録する事が不可欠になります。
また、提出した情報を基に支援計画を随時見直す事も求められているため、利用者に適した支援が提供される事にもつながっていきます。
科学的介護推進連携加算を取得している事業所は、日々の観察や分析された情報を基に支援を行っているため、根拠のあるケアを提供している事業所であると捉えることができます。
【メリット2】在宅介護の負担軽減につなげられる可能性がある
自宅で介護を行う中で、家族等の支援者が思う通りに相手が動いてくれない事にイライラしてしまったり、負担の少ない支援方法を知らないがために、支援者自身が体調を崩してしまう事もあります。
情報が豊かである現代では、介護方法についてのマニュアルや対処法などもインターネットや書籍から収集する事は比較的容易です。
しかしその情報が支援している高齢者の方に適しているかどうか判断する事は困難です。
科学的介護推進連携加算を算定している事業所では、利用者の情報を細かく取得・分析を行い、その方に合わせた支援を実践しています。
そのため、一般的なマニュアルとは異なる支援方法を用いている可能性もあり、さらに、その内容が自宅でも実践できる場合もあります。
適した介護を受けるということは、自身とそれを支える家族等支援者の負担軽減につなげられる可能性があるのです。
科学的介護推進連携加算を取得している場合は、月々40単位多く支払う必要はありますが、書籍の購入代やインターネットの利用料金と比較すれば、決して高額という訳ではありません。
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必要な支援方法を身につけよう
介護生活が始まるとその期間がいつまで続くかは人によって異なり、支援者には多かれ少なかれ負担がかかります。
しかし、必要な支援方法を家族等の介護者も身につける事によって、その負担が軽減されることは大いにあります。
科学的介護推進連携加算を取得している事業所のスタッフと連携を図り、自宅での介護負担を軽減する事に積極的に努める事は、長い介護生活を乗り越えるために役立つ方法の1つになります。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)