例えば会社員や公務員の方は、厚生年金保険の被保険者であると同時に、国民年金の「第2号被保険者」になるため、国民年金にも加入しているのです。
また第2号被保険者には年齢要件がないため、20歳以上60歳未満の方だけでなく、20歳未満や60歳以降の方も、第2号被保険者になります。
ただ公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間などが10年以上あるため、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている場合には、65歳以降は第2号被保険者から外れるのです。
このように会社員や公務員の多くは、厚生年金保険と国民年金に同時加入しているため、給与から控除された厚生年金保険の保険料の一部は、「基礎年金拠出金」という形で、厚生年金保険から国民年金に渡るのです。
そのため会社員や公務員の方は65歳になった時に、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金だけでなく、国民年金から支給される老齢基礎年金も受給できるのです。
第2号被保険者に扶養されている、年収130万円未満の20歳以上60歳未満の配偶者は、所定の届出をすると、「第3号被保険者」として国民年金に加入します。
この第3号被保険者は国民年金の保険料を自分で納付しなくても、65歳になった時に老齢基礎年金を受給できます。
その理由として基礎年金拠出金の中には、第3号被保険者に支給する老齢基礎年金の財源も、含まれているからです。
つまり給与から控除された厚生年金保険の保険料の一部は、第2号被保険者と第3号被保険者に支給する老齢基礎年金の、財源になっているのです。
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目次
国民年金の納付率は9年連続で上昇へ
日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のうち、第2号被保険者や第3号被保険者に該当しない方は、第1号被保険者になります。
具体的には自営業者、農林漁業者、フリーランス、学生、無職の方などが第1号被保険者として、国民年金に加入するのです。
第2号被保険者や第3号被保険者の国民年金の保険料は、上記のように給与から控除されます。
一方で第1号被保険者の国民年金の保険料は、納付書を使って自分で納付する場合が多いため、第2号被保険者や第3号被保険者よりも、未納期間が生じやすくなるのです。
ただ先日新聞を読んでいたら、第1号被保険者に関する2020年度の国民年金の納付率が71.5%になり、9年連続で上昇したというニュースが掲載されておりました。
上昇の起点になった2012年度の納付率が59.0%だったので、10%くらい改善しているとわかります。
国民年金の保険料を納付しなくても納付率は上昇する
国民年金の納付率が9年連続で上昇したのは、次のような理由があると推測されます。
(1) アベノミクスによる景気回復
上昇の起点になった2012年度を振り返ってみると、同年の後半に民主党政権が終わりを迎え、自民党と公明党が与党に復帰しました。
また内閣総理大臣に就任した安倍首相は、「アベノミクス」という経済政策を打ち出したのです。
これによる景気回復で、失業率が改善したことや、賃金が引き上げされたことにより、保険料の納付資金を確保しやすくなったので、国民年金の納付率が上昇したのです。
(2) 強制徴収の強化
日本年金機構は国民年金の保険料をずっと納付しなかった方に対し、保険料の納付期限を指定して「督促状」を送付します。
また督促状を送付された方が、期限内に保険料を納付しなかった場合、日本年金機構は財産(自宅などの不動産、車、預金など)を差し押さえて強制徴収します。
こういった強制徴収の取り組みを、2014年度から強化したため、国民年金の納付率が上昇したのです。
(3) 厚生年金保険の適用拡大
2016年10月から社会保険(健康保険、厚生年金保険)の適用が拡大されたため、第1号被保険者や第3号被保険者だった方が、第2号被保険者に移行するケースが増えました。
また国民年金の保険料を未納にしていた第1号被保険者が、厚生年金保険に加入して、第2号被保険者に移行すると、その分だけ第1号被保険者の未納が減るので、国民年金の納付率が上昇するのです。
(4) 全額免除などを受けた方の増加
第1号被保険者に関する国民年金の納付率は、
で算出します。
また所定の申請手続きを行って、全額免除、一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)、納付猶予、学生納付特例などを受けた月数は、納付対象月数から除かれます。
そのため保険料を納付した方が増えなくても、これらを受けた方が増えれば、納付率は上昇するのです。
2020年度は新型コロナウイルス感染症により、収入が減った方などを対象にして、臨時特例措置が実施されました。
こういった政策の影響などにより、各種の免除、納付猶予、学生納付特例などを受けた方は、過去最多の609万人に達したため、連続上昇の記録が2020年度に途切れなかった主な理由は、(4) だと推測されます。
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厚生年金保険は国民年金より保険料が安い場合がある
20歳から60歳までの40年(480月)に渡って、一度も欠かさずに国民年金の保険料を納付すると、満額の老齢基礎年金(2021年度額は78万900円)が支給されます。
このように40年(480月)の納付で満額になるため、保険料の未納期間が1か月増えるごとに、1,626円くらい老齢基礎年金が減ってしまうのです。
(1) ~(3) によって納付率が上昇すると、保険料の未納期間が減るため、老齢基礎年金の金額が増えます。
また(3) の場合は厚生年金保険にも加入するため、老齢厚生年金を新たに受給できたり、この金額が増えたりします。
こういった年金の増額は、国民年金の納付率の上昇で、良くなった点と評価できると思います。
なお月給から控除される厚生年金保険の保険料は、月給の金額に比例して増えていきますが、月給が9万3,000円未満の場合、保険料は月8,052円になります。
また月給が17万5,000円以上18万5,000円未満の場合、保険料は月1万6,470円になるため、ここまで月給が上がっても、国民年金の月1万6,610円(2021年度額)より安いのです。
国庫負担がない納付猶予と学生納付特例
所定の申請手続きを行って、全額免除を受けた期間は、月1万6,610円の国民年金の保険料を納付した場合の「2分の1」として、老齢基礎年金が計算されます。
また4分の3免除は「8分の5」、半額免除は「8分の6」、4分の1免除は「8分の7」として、老齢基礎年金が計算されるため、後で保険料を追納しなくても、年金額に反映されるのです。
一方で納付猶予や学生納付特例を受けた期間は、後で保険料を追納しないと、まったく年金額に反映されません。
その理由として全額免除や一部免除には国庫負担がありますが、納付猶予や学生納付特例には国庫負担がないからです。
ですから納付猶予や学生納付特例を受けた月数が増えると、老齢基礎年金の金額が減ってしまうのです。
もちろん全額免除や一部免除を受けた場合でも、ある程度は老齢基礎年金の金額が減ってしまうので、(4) によって国民年金の納付率が上昇するのは、良くなった点ではなく、悪くなった点になるのかもしれません。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)