先日新聞を読んでいたら、「年金を毎月支給にして欲しい」という年金受給者の意見が、読者投稿欄に掲載されておりました。
公的年金は原則65歳から支給される老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)だけでなく、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)や、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)もあります。
これらの年金は支給事由(年金の支給が始まる原因)が異なっておりますが、いずれの年金も支給日は原則として、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日です。
この日に前2か月分が支給されるため、例えば8月に振り込まれるのは、6月分と7月分の年金になります。
読者投稿欄に文章を送った年金受給者の方は、こういった仕組みに不満があるため、毎月支給に変えて欲しいのだと思います。
ただ毎月支給に変えると事務手数料などのコストが、以前より増えてしまうのです。
政府は2022年4月から年金手帳を、廃止すると発表しておりますが、コスト削減が理由のひとつのようです。
こういった状況から考えると、コストの増加につながる毎月支給は、今後も実施されないと推測します。
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目次
人気を取り戻している毎月分配型の投資信託
1か月ごとに決算を実施し、分配金を毎月支払うという運用方針の、毎月分配型の投資信託があります。
この商品は分配金を支払う時に税金がかかったり、販売手数料や信託報酬などの手数料が高かったりするため、金融関係の専門家や金融庁などから批判を受けてきました。
そのため一時は人気ランキングなどから姿を消したのですが、ここ数年は人気を取り戻しております。
また年金が支給されない奇数月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)に分配金を支払う投資信託を、販売している金融機関もあります。
こういったことが起きているのは、冒頭で紹介した年金受給者と同じように、毎月の受け取りを望んでいる方が、意外に多いからではないかと思うのです。
そこで偶数月支給という公的年金の欠点を補う、奇数月に受け取れる制度について考えてみると、次のような3つがあると思います。
なお自営業者やフリーランスなどが加入できる、国民年金基金の年金は原則として、公的年金と同じように偶数月支給になるため、奇数月の受け取りは選択できません。
【制度1】iDeCo(個人型の確定拠出年金)
公的年金の上乗せを準備するための制度として、iDeCo(個人型の確定拠出年金)があります。
この制度に拠出した掛金と運用益は、60歳になるまで引き出すのが難しいのですが、さまざまな税制優遇を受けられるため、多くの方に利用されているのです。
また拠出した掛金と運用益を60歳以降に、「老齢給付金」として受け取る時には、次の3つの中から選択できる場合が多いのです。
・ 年金として「5年以上20年以下の期間」で受け取る
・ 両者を併用して受け取る(一部を一時金、残りを年金にする)
この中の年金で受け取る時は、年1回~12回の中から選択できる場合が多いのですが、毎月年金を受け取りたいなら、公的年金の支給がない奇数月(年6回)を選択するのです。
年金が支給される際には手数料が徴収されるため、老齢給付金を年金で受け取るなら、年1回が良いという意見があります。
しかし奇数月に老齢給付金を受け取って、「前月に支給された公的年金の残り+老齢給付金」の範囲内に支出を抑えると、年1回より無駄遣いが減る可能性があるため、手数料だけで判断しない方が良いと思うのです。
【制度2】自動的に実施される金融機関のサービス
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60歳以降に老齢給付金を受け取る時は、上記の3つの中から選択できる場合が多いのです。
ただ現状は一時金を選択する方が約9割、年金を選択する方が約1割、両者の併用はわずかのようです。
そうなると奇数月に年金のように受け取りたい場合には、こういった仕組みを自分で作る必要があります。
その時に活用したいのは、銀行などの金融機関が提供している、スイング(自動振替)サービスではないかと思います。
このスイングサービスとは指定した期日に、普通預金から貯蓄預金へ、または貯蓄預金から普通預金へ、お金を自動的に振り替えるサービスです。
これを利用して貯蓄預金口座の中に入れた一時金を、奇数月に普通預金口座に振り替えると、年金のように受け取ることができます。
結局のところ貯蓄預金から普通預金に、お金が移動するだけなのですが、定期的に一定額だけが普通預金口座に移動するため、貯蓄預金口座の中にあるお金を、計画的に利用できるのです。
ここ数年はスイングサービスのような、自動的に実施される金融機関のサービスが、投資の世界でも広まりつつあります。
それは保有している投資信託を定期的に、指定した金額・口数・比率だけ売却する、定期売却サービスになります。
このサービスを提供している金融機関は、まだ多くはないのですが、奇数月だけ売却するサービスを選択できれば、偶数月支給という公的年金の欠点を補えるのです。
【制度3】生活保護
iDeCoや預金で老後資金を準備しておけば、奇数月に受け取って公的年金の代わりにできます。
ただ想定よりも長生きしたり、医療や介護の費用がかかったりすると、iDeCoや預金で準備した老後資金を、使い切ってしまうのです。
こういった事態が生じる前に、生活保護について本やインターネットなどで学んでおき、老後資金が枯渇しそうになったら、すぐに相談や手続きをするのです。
年金受給者の方が生活保護を受けられた場合、地域、年齢、世帯人数などを元にして算出した最低生活費と公的年金の差額が、生活保護費として支給されます。
また生活保護費は原則として毎月支給されるため、公的年金が支給されない奇数月の生活費などとして活用できるのです。
なお生活保護の手続きをしてから、生活保護費を実際に受け取るまでの生活費が、準備できていないというケースでは、社会福祉協議会が実施している「臨時特例つなぎ資金貸付」を、利用できる場合があります。
こういった公的な貸付制度を利用すれば、無利子または低金利でお金を借りられるため、生活保護に加えて公的な貸付制度についても、学んでおいた方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)