「家族の幸せ、夢のマイホーム」は、産みの苦しみを伴います。
「家族の夢」に向かっての過程なのですが、金額の大きさや選択・決断の多さから、精神的な不調をきたす人がいます。
マリッチブルー、マタニティーブルー等と並べられるようになった、マイホームブルーです。
今回はマイホームブルーを避けるため、不安材料の1つである資金計画について考えます。
「もしもの時」を想定した資金計画があれば、安心感からマイホームブルーを避けられるのではないか。
考察します。

目次
マイホームブルーとは
さまざまな定義がありますが、一般的にマイホーム購入計画時や購入後(入居後)に起きる、精神的に不安定な状態をいいます。
うつ病に近い状況もあるとの事です。
マイホームブルーの状況が深刻だと体調不良だけでなく、マイホーム購入計画の破綻、離婚の事例も報告されています。
マイホームブルーになる理由
マイホームブルーになる理由は、大きく4つ挙げられます。
1. 住宅ローン
・ 何十年と返済し続け、完済できるのか。
・ 月の返済額が多くないか。借りすぎではないか。
・ もし滞納すれば、抵当権実行されてマイホームを取られてしまう。
将来の不安と責任感から、マイホームブルーになるようです。
2. 建物
建物の仕様や間取りの後悔から、マイホームブルーになるようです。
・ 理想がかなわなかった。
・ 実際に暮らしてみて、想像していたものと違う。
また最近はインターネットの普及により、施主が信憑性の低い情報に固執してしまい、適切な判断ができない場合があります。
「一生に1度」とのプレッシャーから完ぺきなマイホームを望んでしまい、現実とのギャップを生じるようです。
3. 立地
1度建てた家は、他の場所へ移すことができません。
「移築」の方法もありますが、費用面で不可能でしょう。
・ マイホームを新しい場所に建てた場合、近隣住民と人間関係を築けるか(なじめるかどうか)。
・ 近隣に険悪施設や、トラブルが発生しないか。
このような点から、マイホームブルーになる方が多いようです。
また最近は自然災害や地盤を過剰に心配される方がいます。

4. 担当者との相性
マイホーム入手に関しては、営業担当者が関わることが多いです。
・ 建売、分譲マンションの場合は、購入の手続き。
・ 注文住宅は、設計・施工者との打ち合わせ。
これら担当者との相性でマイホームブルーになる方がいます。
・ 知識が足りず頼りにならない。
・ 経験に固執して融通が利かない。
元来、営業担当者とマイホーム購入者では、住宅・不動産について持っている情報量や知識が違います。
そのギャップも、担当者とのコンフリクトになります。
マイホームブルーを避ける資金計画
それは、「プランB」を想定し用意することです。
毎月の返済ができない状態を想定して、対策を講ずることです。
もしもの時の対策があることが、精神的な安定につながります。
1. もしもの時に、マイホームを売却して住宅ローンを完済できるか
売却したら住宅ローンが完済できる(逆さやを防ぐ)状態にしておけば、もしも収入が途絶えても対応できます。
・ 立地や間取りに市場性、汎用性があるかを確認する。
・ 購入後にマイホームの売却可能額を確認し、その額まで住宅ローン
返済額を減らす(繰り上げ返済)。
2. もしもの時に、返済を減らせるか
もしもの時に返済を減らせるかがカギとなります。
(1) 二段階返済プラン
実際の返済計画と住宅ローンの契約を二段階で設定し、もしもの時は住宅ローンの返済のみにするプランです。
事例を確認します。
現在40歳、月返済可能額10万、借入額2,200万円、金利1%とします。
住宅ローンの返済額は、定年までの返済計画を作ります(60歳定年まで20年。毎月返済約10万)。
実際の住宅ローンは、35年返済で契約します(75歳まで35年。毎月返済約6万)。
通常時(プランA)は毎月10万円が返済可能ですが、実際は毎月6万を返済し、残りの4万は繰り上げ返済の原資とします。
プランAは、毎月返済の6万と繰り上げ返済4万を合わせて10万円を返済しています。
もしもの時(プランB)時は、毎月6万のみを返済します。
通常時(プランA)は10万円の返済を想定しています。
もしもの時は(プランB)6万円の返済でも「滞納」にならないので、返済金額を下げることができます。
(2) 金融機関と信頼関係
もしもの時は、金融機関へ返済金額の減額を要請することができます。
コロナ禍の現在、金融機関は返済計画の変更(リスケジュール → リスケ)に積極的に対応しています。
しかしリスケを金融機関に相談するためには、信頼関係が必要です。
ざっくり言えば、滞納がないことと契約違反がないことです。
よって滞納後に相談するのではなく、滞納せざるを得ない状況の時点で、金融機関に相談することが肝要です。
契約違反に問われる事案としては、契約者がマイホーム(住宅ローンの対象物件)に住んでいないことが挙げられます(転勤等の一時的な退去は除外)。
・ 金融機関に事前相談なく、離婚等により契約者が退去している。
・ 金融機関に事前相談なく、マイホームを売却している(手続きしている)。
これらが発覚すると、リスケどころか、住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。
3. もしもの時に、一定期間の返済を継続できるか
コロナ禍のパンデミックや経済活動の変化、また個人の病気などにより、一時的に収入が途絶えてしまうことが想定されます。
契約者の死亡時(最近は三大疾病にも対応)は、住宅ローンが団体信用生命保険により完済されますが、一時的な収入減については対象外です。
対応としては、数年分の返済資金を用意してください。
上記の事例で考えれば、1年分は72万円となります。
1年間、時間を稼ぐことができます。
資金が確保できないのであれば、所得補償保険等も有効です。
サラリーマンは、雇用保険・傷病手当金・労災を活用し、それで足りない分を補充します。

売却しやすさを考慮しよう
マイホームブルーの根源は、人生で最も高価な買い物で「後悔したくない・逃げられない」と自身にとらわれていることと思います。
少なくとも、住宅ローンを完済しマイホームを売却できれば、出直すことができます。
住宅業界の格言です。
マイホームを購入するまでは「マイホームは一生に1度の高価な買い物」と言われますが、購入後は「マイホームは3回建てて、初めて納得がいく」と言われます。
手に入れたマイホームは「家族の終の棲家」ではありません。
ライフプランの変化に合わせて間取りや設備の変更が必要で、住みかの変更も想定しないといけません。
マイホームは住みかであると同時に、家族の財産・資産です。
資産として大切なのは換金性です。
マイホーム計画時に、適切な資金計画と換金性(売りやすさ)を、頭の片隅に置いておいてください。
マイホームは家族の夢であるので、家族の希望(要望)で購入します。
しかし購入時に、市場性(売却しやすさ)を考慮してください。
・ 汎用性のある間取り
・ 住宅ローンを利用できる仕様(適合証明)です。
マイホームブルーに陥る可能性は、低くなると思います。(執筆者:金 弘碩)