この記事の最新更新日:2022年7月4日
寝たきりによって同じ体勢で寝ていたり、車いすで座っている事が多くなると、褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれができやすくなります。
褥瘡になってしまうと、医療費や薬代がかかってしまうので、できる前に予防策をとることで、治療費の出費を抑えられます。
今回は治療費用がかさむ前にできる、褥瘡予防のコツにスポットをあててご紹介します。
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目次
褥瘡予防はまず原因を知ること
褥瘡の原因は、オムツをする際のムレや入浴する機会が減り肌が不衛生になるためです。
また、栄養状態の悪化や寝たきりにより皮膚がこすれたり、圧迫による血流の低下が原因となります。
また褥瘡は「できやすい場所」があります。
身体の状態 | 褥瘡のできやすい場所 |
仰向けに寝ているとき | かかと、仙骨部、肩甲骨部、後頭部 |
横向きに寝ているとき | くるぶし、ひざ、大転子部、腸骨部、ひじ、肩、耳 |
椅子に座っているとき | 背部、ひじ、座骨部、尾骨部 |
≪画像元:山陽新聞(5)褥瘡 岡山済生会総合病院皮膚科医長 吉富惠美≫
もし、その場所に赤みがあり、痛みを訴えることがあれば、褥瘡である可能性が高いと予想されます。
褥瘡は発見が早ければ、治療も簡単で治療費用も安くすみます。
褥瘡予防の第一は肌を清潔にして、ワセリンや市販の保湿クリームを塗るなど、肌が乾燥しないように衛生的に保つことです。
肌を清潔に保つことで、褥瘡になる可能性は減ります。
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栄養バランスを整えて、褥瘡を予防
褥瘡の予防として、日ごろの栄養バランスを整えるのが効果的です。
褥瘡予防に必要な栄養素・食材は、
・ タンパク質 → 肉・魚・卵
・ 鉄 → レバー・小松菜・ひじき
・ 亜鉛 → ごま・牛肉・牡蠣・牛乳・ココア・鶏モモ肉
・ 銅 → 牛レバー・牡蠣・サツマイモ・ココア
・ カルシウム → チーズ・牛乳・大豆製品
・ ビタミンA・C → 人参・かぼちゃ・ほうれん草などの緑黄色野菜・いちご・レモン
献立例
栄養素や食材だけを言われても、どんなものを作っていいか見当がつかないと思われますので、実際に病院で作られている献立を紹介します。
・ 梅風味牛時雨丼
・ 温泉卵
・ アボカドとエビのワサビマヨ和え
・ ごま味噌汁
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牛肉には亜鉛が含まれています。
牛肉を細かく刻み、柔らかく煮込み牛丼にすることで食べやすくなります。
アボカドには、ビタミンC・ミネラルが豊富に含まれています。
もし、アボカドが食べ慣れていなければ、かぼちゃやひじきの煮つけに変更しても、褥瘡予防に効果的な献立ができ上がります。
食事量が少ない場合は「栄養機能食品」を取り入れる方法もある
また、食事量が少ない場合は、栄養機能食品を取り入れる方法もあります。
褥瘡予防として、肌を強くする栄養素にコラーゲンが入っている栄養機能食品は効果的です。
森永乳業コラーゲンゼリーは、1個189円で販売されています。
食事量が低下した時に、褥瘡予防に必要な栄養素だけは、摂ってほしいという家族には、おすすめの1品です。
栄養バランスのとれた食事は褥瘡予防になります。
褥瘡予防のためにも1度、食事の献立を見直して見ましょう。
介護保険でお安く利用可能!マットレスで褥瘡予防
褥瘡は、寝たきりにより、同じ部分や骨が出ている場所(お尻・頭・かかと・くびれ部分)に、長時間同じ場所が圧迫されて、皮膚の血流が悪くなり褥瘡ができてしまいます。
褥瘡予防のためのマットレスが、介護保険を使えば安い金額でレンタルできます。
ウレタンマットレス
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寝たきりになると多くの方が介護ベッドを使用されます。
介護ベッドのマットレスは、自力で寝返りを打てる方であれば、ウレタンを使ったマットレスを使っています。
ウレタンといった特殊な素材のマットは、体にかかる圧力の面積を広げてくれます。
この床ずれ防止マットレスは、介護負担が1割のレンタルで1番安いものであれば、月々510円からレンタルが可能です。
自動で体位交換してくれるマットレス
完全な寝たきりになると自力で寝返りができなくなるので、体位交換と言って、2~3時間おきに体を左右に傾けることで体位を変える必要があります。
そこで、介護用品には体位交換を自動でしてくれるマットレスがあります。
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自力で寝返りをうつことができない方は、エアマットを使用すると効果的です。
体の圧力を分散させる効果もあり自動で体位交換してくれるマットレスなので便利です。
自動で体位交換してくれるマットレスは、介護負担1割の場合、安いものであれば月々1,020円でレンタルが可能です。
褥瘡予防の介護用品はすべてレンタルとなっており、月々の負担も500円~1,050円と無理のない金額でレンタルが可能です。
ただし、介護保険で福祉用具をレンタルする場合は、都道府県指定の福祉用具店でなければ介護保険が使えません。
利用する場合は、ケアマネージャーに相談し、都道府県指定の福祉用具店を紹介してもらいましょう。
褥瘡ができ始めたら早めに訪問看護を利用しよう
褥瘡のでき始めは、皮膚の赤み・水ぶくれ・肌がめくれているなどの状態になります。
褥瘡の治療で訪問看護に依頼する場合は、医師から「訪問看護指示書」が必要です。
医師から「訪問看護指示書」をもらえたら、ケアマネージャーに連絡し、訪問看護に依頼します。
訪問看護は、介護保険での使用の場合には利用時間は決まっていますが、利用回数に制限はありません。
ただし、訪問看護の回数を増やすと介護保険の支給限度基準額を超えてしまうため、多くの方は、週に1回~2回利用しています。
その時に、看護師から褥瘡の予防や軽度の褥瘡であれば処置してもらう事が可能です。
褥瘡が『真皮を超えた褥瘡』であれば重症度が高く、毎日治療が必要となります。
その際に、介護保険で毎日訪問看護を利用すると限度額オーバーの恐れがあり、超えた分は自費になります。
そこで、利用したいのが医療保険です。重症度の高い褥瘡であれば「特別訪問看護指示書」を医師から発行してもらう事で、医療保険で治療が可能になります。
医療保険での訪問看護を利用した場合、毎日褥瘡の治療を受けても、介護保険での介護サービスとは別なので、介護保険は限度額を超えることはなく、経済的負担も少なく、安心して治療を受けられます。
「特別訪問看護指示書」は、厚生労働省の定める疾病や状態につき発行されます。真皮を超える褥瘡は厚生労働大臣が定める状態等に該当します。
補足
「特別訪問看護指示書」において、真皮を超える褥瘡は月に2回発行することが可能です。通常であれば、月に1回の利用期間の上限は14日ですが、月に2回であれば、連続28日の訪問が可能ということになります。
褥瘡の発見は、早ければ治療が簡単で本人の体の負担も小さく、治療費の出費も安く抑えられます。
皮膚の赤み・水ぶくれ・肌がめくれている状態があれば、速やかにかかりつけ医に相談しましょう。
早めの褥瘡予防で介護費用を軽減しよう
褥瘡予防は、肌の清潔・栄養バランスのとれた食事・こまめな体位交換によって、防ぐことができます。
褥瘡ができるとあっという間に傷が広がっていきます。
褥瘡ができてしまったら、早めに医師に診断してもらい訪問看護を利用しましょう。
介護はお金がかかります。
褥瘡になるとさらに治療費もかさむことになりますので、褥瘡予防も介護費用を抑えるコツになります。
予防を心掛けることで治療費用だけでなく、本人の身心の負担を減らすことができますよ。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)