所得税や贈与税は、確定申告期間が設けられていますので、申告書の提出時期はどなたも同じです。
それに対し相続税の申告期限は、相続の開始があつたことを知った日の翌日から10か月以内と定められているため、相続税の申告書を提出する人ごとに申告すべき時期が異なります。
本記事では相続税の申告書を提出すべき対象者と、相続税の申告期限の注意点について解説します。
目次
相続税は相続人全員が申告すべきものではない
相続税は、相続財産を取得した人(相続人)が申告する税金ですが、相続人全員に申告義務が課されているわけではありません。
相続税の申告義務があるのは、相続税の納付税額が発生する人だけであり、相続財産が相続税の基礎控除額以内に収まる場合には、相続税の申告義務はないです。
また相続税の総額が算出されるケースであっても、相続財産を取得せず、納付税額がゼロとなる相続人については、申告書を提出しなくても問題ありません。
ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例制度は、申告書を提出することが適用要件となっているため、特例を適用して納付税額がゼロとなる場合には、相続税の申告書は提出してください。
「相続の開始があったことを知った日」の意味
「相続の開始があったことを知った日」は、相続人ごとに判断します。
相続税は相続人全員で一つの申告書を作成するのが原則ですが、相続人によって相続の開始があったことを知った日が違う場合、相続税の申告書を提出した相続人ごとに申告期限が異なることもあります。
ただ昔と違い、現在は電話やメール等の通信手段が発達していますので、基本的には亡くなった日が「相続の開始があったことを知った日」です。
相続開始日と相続の開始があったことを知った日が違う場合には、税務署に経緯を説明する必要がありますので注意してください。
相続開始日と「知った日」が異なるケースとは
基本的に「相続開始日」と「相続の開始があったことを知った日」は同じですが、次のケースに該当する場合、双方の日にちは相違します。
<主な「相続開始日」と「相続の開始があったことを知った日」が異なるケース>
ケース | 相続の開始があったことを知った日 |
失踪の宣告を受け死亡したものとみなされた者の相続人・受遺者 | 該当者が失踪の宣告に関する審判の確定のあったことを知った日 |
認知に関する裁判または、相続人の廃除の取消しに関する裁判の確定により、相続開始後において相続人となった者 | 該当者が裁判の確定を知った日 |
相続人の廃除に関する裁判の確定により、相続開始後において相続人になった者 | 該当者が裁判の確定を知った日 |
相続について既に生まれたものとみなされる胎児 | 法定代理人がその胎児の生まれたことを知った日 |
相続開始の事実を知ることのできる弁識能力がない幼児等 | 法定代理人が相続の開始があったことを知った日 (相続開始の時に法定代理人がないときは、後見人の選任された日) |
相続が発生したら亡くなった人の全財産を確認すること
相続税の申告書を作成する際は、最初に亡くなった人の保有していた全財産を確認してください。
相続財産の総額が相続税の基礎控除額以内であれば申告義務はないため、相続税の申告書を作成する手間を省略できます。
相続税が発生する場合は期限までに申告書を作成することになりますが、申告期限が延長するケースは稀ですので、基本的には相続開始日の翌日から10か月以内に申告書を提出できるよう準備してください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)