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インフレによって付加年金、国民年金基金、iDeCoの欠点が明らかになる

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インフレによって付加年金、国民年金基金、iDeCoの欠点が明らかになる

原則65歳から支給される公的年金としては、全国民に対して国民年金から支給される、1階部分の老齢基礎年金があります。

また会社員や公務員だった期間がある方に対して、厚生年金保険から支給される、2階部分の老齢厚生年金があります。

1階部分の老齢基礎年金を受給するには、公的年金の保険料の納付済期間や、国民年金の保険料の免除期間(学生納付特例、納付猶予の期間も含む)などの合計が、原則10年以上必要になります。

付加年金、国民年金基金、iDeCoの欠点が明らかに

一方で2階部分の老齢厚生年金については、原則10年以上という老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていれば、厚生年金保険の加入期間が1月しかなくても受給できるのです。

いずれの老齢年金も実質的な価値を維持するため、新年度が始まる4月(実際に金額が変わるのは6月の支給日)に、原則的には次のようなルールで金額を改定するのです。

(A) 67歳以下の「新規裁定者」

過去3年度平均の賃金の変動率(2023年度は+2.8%)の分だけ、前年度より老齢年金を増額(減額)させます。

(B) 68歳以上の「既裁定者」

前年の物価の変動率(2023年度は+2.5%)の分だけ、前年度より老齢年金を増額(減額)させます。

以上のようになりますが、2023年度のように変動率がプラスになった場合には、平均余命の伸びや現役人口の減少で算出したスライド調整率を、賃金や物価の変動率から差し引くのです。

その理由としては2004年の年金改正の際に、マクロ経済スライドという仕組みが導入されたため、公的年金の財政を安定化する目的で、少しずつ年金を減らすようになったからです。

また2023年度のスライド調整率は-0.6%だったので、これを差し引いた後の最終的な変動率は、新規裁定者が+2.2%(+2.8%-0.6%)、既裁定者が+1.9%(+2.5%-0.6%)になりました。

このようにスライド調整率の分だけ、老齢年金の金額は少なくなりますが、それでもインフレ(持続的に物価が上昇する経済現象)が続けば、老齢年金の金額は増えていくのです。

なお2019年に実施された年金財政検証によると、2046年度~2058年度辺りには年金財政が安定化するため、スライド調整率による年金の減額を終了できるようです。

付加年金は賃金や物価の変動率で金額を改定しない

自営業者、農林漁業者、フリーランスなどを職業にしている方は、2023年額で月1万6,520円となる国民年金の保険料を、自分で納付する必要があります。

こういった方が手軽に1~2階部分の上乗せを準備できる、付加年金という制度があります。

なぜ手軽なのかというと、付加年金を受給するために必要となる付加保険料は、月400円(国民年金の保険料と合わせると月1万6,920円)という安さだからです。

この付加保険料を1月でも納付すると、「200円×付加保険料の納付月数」で計算される付加年金が、老齢基礎年金の支給開始と同じ時期から支給されます。

国民年金の保険料を納付するのは20歳から60歳になるため、すべての期間で付加保険料を納付した場合には、年間で9万6,000円(200円×480月)の付加年金を受給できます。

また9万6,000円の付加年金を受給するのに必要な付加保険料は、「400円×480月=19万2,000円」になるため、受給開始から2年が経過すれば元がとれるのです。

このように付加年金は手軽でお得な制度なのですが、賃金や物価の変動率で金額を改定する仕組みがないため、ずっと金額が変わらないのです。

そのためインフレによって商品などの値段が上がると、付加年金の実質的な価値が目減りするため、ずっと金額が変わらないというのは、付加年金の欠点ではないかと思います。

終身年金と確定年金を組み合わせる国民年金基金

付加年金よりも多くの上乗せを準備したい、自営業者、農林漁業者、フリーランスなどを対象にした、国民年金基金という制度があります。

この国民年金基金に加入する場合、1口目の終身年金(生涯に渡って老齢年金が支給されるタイプで、A型とB型に分かれている)は、必ず選択しなければなりません。

また更に上乗せが欲しいという方は2口目以降も選択しますが、こちらは終身年金だけでなく、確定年金(支給期間が決まっているタイプ)もあります。

例えば60歳から支給が始まり、5~15年に渡って老齢年金が支給される確定年金があるのです。

国民年金基金に拠出する掛金は、終身年金か確定年金かを問わず、加入する時の年齢や性別で金額が決まります

また将来に受給できる老齢年金は、自分が何口加入するのかによって金額が決まり、その金額は賃金や物価の変動率がプラスになっても変わりません。

そのためインフレによって商品などの値段が上がると、老齢年金の実質的な価値が目減りするというのは、国民年金基金の欠点のひとつではないかと思います。

iDeCoの掛金と運用益は60歳になるまで引き出せない

自営業者、農林漁業者、フリーランスだけでなく、会社員や公務員、専業主婦(専業主夫)などが共通して1~2階部分の上乗せを準備できる、iDeCo(個人型の確定拠出年金)という制度があります。

このiDeCoに加入した後は、自分が拠出した掛金(最低で月5,000円、上限は職業や企業年金の有無などで変わる)を、自分が選んだ金融商品で運用します。

そのため付加年金や国民年金基金と違って、将来に受給できる年金(一時金での受給も可能)の金額は、選択した金融商品の種類によって大きく変わるのです。

また選択できる金融商品は、元本確保型(定期預金や保険など)と、元本確保型以外(投資信託など)に分かれています。

iDeCoがインフレに弱くなってしまうのは、例えば拠出した掛金を運用する金融商品の中に、定期預金が含まれているケースになります。

その理由としてインフレの際には、定期預金の金利は上昇していきますが、それよりも物価の上昇率の方が高い場合が多いからです。

またiDeCoに拠出した掛金と、これの運用による運用益は、iDeCoの加入者が一定の障害状態になったり、死亡したりしない限り、原則として60歳になるまで引き出せないのです。

そのためインフレによる金利上昇で、例えば住宅ローンの返済額が増え、その返済が大変になったとしても、iDeCoの掛金と運用益を返済に充てるのは難しいのです。

こういった点はインフレによって明らかになった、iDeCoの欠点のひとつだと思います。

iDeCoの掛金はインフレに強い金融商品で運用する

インフレによってコストが上昇した分の価格転嫁が進むと、企業の売上や利益などは増加するため、株価は上昇しやすくなります。

そのため株式はインフレに強い金融商品になるため、今後もインフレが続くと予想するのなら、iDeCoに加入して拠出した掛金を、株式(特に全世界株式)が組み入れられた投資信託で運用するのです。

ただ株式が組み入れられた投資信託だけで運用すると、株価が下落する局面では、資産の減額が大きくなるため、定期預金などの元本確保型と組み合わせた方が良いと思います。

目安としては「100-年齢」を株式が組み入れられた投資信託で運用し、残りを元本確保型で運用するのです。

なお付加年金と国民年金基金は併用できませんが、付加年金とiDeCoは併用できるため、「付加年金+iDeCo」という組み合わせで、1~2階部分の上乗せを準備しても良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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